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2022年02月17日

【縄文再考】縄文文明の原理を探求する①~縄文の8つの文明原理

この間、【縄文再考】シリーズを追求してきました。

「これまでの縄文観を覆す、新たな事実が見つかってきた」にある通り、最新の調査・研究により、これまでの縄文観を覆す、新たな事実も見つかってきました。

その上で、当ブログの過去の蓄積と新事実を重ねながら、1万年以上続いた縄文文明の興隆と弥生への移行を通じて、縄文とはどのような時代なのか。縄文文明を通じて、自然と文明との関わり、人類のあるべき姿などを模索していきたいと思います。

当ブログでは、過去に環境考古学の大家である安田喜憲さんの本「縄文文明の環境」をご紹介しました。

この本で記載されている、「縄文の8つの文明原理」を手がかかりに、追求を開始していきます。

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以下、「縄文文明の環境」より抜粋

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縄文時代の社会は文字や金属器、あるいは都市存在しなかったが、人々は森と海の資源を最大限に利用する技術を発展させ、穀物栽培の農耕を受容することを回避し、自然と共生し、永続的・循環的に生き、命あるものが全て平等の価値を持つという文明原理に立脚した社会を構築した。

こうした文明原理を永続的に維持する為に、縄文土器や土偶を大量に生産する、知的、芸術的行為やストーンサークルの構築、あるいは巨木の祭りなどの宗教的祭祀といった、日々の生産活動とは異質の直接生産に結びつかない文明の装置・制度系をきわだたせて発展させた。一方、特定の王の為に税を管理し、貯蔵するために必要な文字は発達しなかった。そしてこうした文明の装置と制度系を円滑に運営・維持する為には異質の文化と積極的に融合する交換のネットワークと、女性中心の社会制度を発展させていった。

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縄文の8つの文明原理 ※ブログ筆者にて一部のタイトルを追記

狩猟・漁・採集を生業の基本とした

狩猟・漁・採集を生業の基本とした、自然の資源を極限まで利用する技術を発展させ、自然=人間循環系の文明原理を有していた。縄文人は自然のリズム、季節のリズムに歩調をあわせながら永続的、循環的に生きる組織化された生活様式の装置と制度系を持っていたそれを自然=人間共生系の装置と制度系とよぶこともできる。

 

②平等主義に立脚した社会制度を有していた

エジプトやメソポタミアのような巨大な王やアテネのような市民階級が出現しなかった。墓においてもその副葬品に大差はなく階級社会の装置を文明原理に取り入れない、何らかの独自の平等主義に立脚した社会制度があったものとみなされる。

生産物が貯蓄しやすく、このために容易に貧富の差や階級差が生じやすい穀物農業を受容することを回避する文明の装置と制度系を有していた。

 

③文明の情報伝達手段としての文字を持たなかった

おそらく縄文語は存在したであろうが、それを文字としては残さなかった。中南米のインカの文明、あるいは中国の長江文明においても、これまで文字は発見されていない。しかしインカの巨大な石造建築を何年もかけて構築したり、長江文明のおどろくばかりの精密な玉器を大量に製作する為には、文字に代わるなんらかの情報伝達手段が必要である。インカではリャマの毛をよりあわせたキープとよばれる紐が数字の役目を果たしていたように、縄文時代においても、文字にかわる何らかの情報伝達手段・情報交換のネットワークの形成があったに違いない。

 

④土器つくりに異常なほど執着した文明である

1万年以上にわたって作り続けられた土器を一括して縄文土器とよぶことができる背景には、縄文時代を通して、組織化され制度化された美的伝統、知的伝統が存在していた事を示している。縄文人は海と森の資源を土器という調理道具を使用して豊かなバラィティーに富む食材として食したのみでなく、土器を呪術性をもったきわめて宗教色のつよい知的、精神的に組織化されたものとして造形した。縄文人の土器作りはたんに生産の為だけでなく、祈りをこめた宗教的、精神的な行為でもあった。こうした土器の製作の中に宗教的行為をみとめる文明は西アジアの麦作農耕地帯の諸文明ではまれである。縄文文明は土器文明であったとういってもよい。

その土器の製作行程を通して、あるいは出来上がった土器の完成品を通して、社会の維持と運営を行うという、きわめて特色ある文明の装置と制度系を有していた。

 

⑤土偶に示されるように、女性中心の文明原理に立脚していた

古代文明の多くは多かれ少なかれ、母権性的であるが、とりわけ縄文時代においては、女性中心の文明原理が大きな役割りを果たしていたとみなされる。

 

⑥人間の力を超える自然との共生

生きとし、生けるものの中に人間の力を超えた存在をひそやかに感じるアニミズムあるいはトーテミズムの世界観を一貫して持ち続け、宗教や呪術の活動を重視し、欲望を抑制し、自然と共生する文明の装置と制度系を有していた。

 

⑦融合とネットワーク

縄文人は大陸の北方と南方から日本に伝播する文化や文明の要素を、日本列島の中でうまく融合させる事によって、先進性の高い技術を発展させた。交換のネットワークによって他文化・異文化を容易にする文明原理を有していた。

 

⑧木造技術

三内丸山遺跡や真脇遺跡の巨大建造物にみられるように、大規模な木造建築の文明装置を作り出す技術が存在した。

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いかがでしょうか。非常に気づきのある視点ばかりです。

①⑥より、自然への畏敬の念、共生の自然観をもちながら、1万年以上も狩猟・漁・採集を生業の基本とした営みを築いてきたのが縄文人。

その哲学から導かれる、②の階級を極力もたない社会制度。あるいは、④⑧の土器や木造の技術力。

さらには⑦の融合とネットワークを通じて、列島内だけでなく、日本海を囲む東アジア全般の文化的ネットワークを形成し、異なる文化を受け入れ、新たな技術を発展させていった。

 

その中で③文字をもたない、④土器に執着、⑤女性中心の原理というのは、縄文文明の本質に迫る特徴のように感じます。

このあたりを次回以降追求していきます!

投稿者 ando-tai : 2022年02月17日 List  

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