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2021年10月07日

土偶のカタチ。そして、その意味とは?ー1

みなさんこんにちは。

 

前回、縄文人は土偶に精霊を宿し、豊穣・平安、子孫繁栄を家族のために祈ったと考察しました。

自分のためではなく、“家族のため”というのがポイントになりましたね。

 

今回は実際に土偶のカタチ、時期、出土場所を見ながら追求していきます。

 

まず土偶が出現し始めたのは、縄文になり温暖化が進み、定住化するようになってからです。

定住化するのは、生活に安定を求めるようになったからです。そこでは生殖一体の生活が営まれていたことでしょう。

縄文は長いです。時代も出土した土器の特徴によって細分化されています。

・草創期、早期、前期は定住化の始まり。人口は早期2万~前期11万。
・中期は、人口の数が増え、集団が大きくなっていきます。人口は26万。
・後期になり、人口が激減。集団にかかる外圧が変化します。人口は16万。
・晩期はさらに人口が減ります。もうどうしようもない状況になります。人口は8万。

各時期で土偶のカタチはどうなったのか?祈りの対象は?を実際に土偶のカタチを見て追求していきましょう。

縄文土偶の遍歴

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■縄文時代草創期・早期・前期

草創期、早期、前期の土偶

  • 女性の上半身のみ(顔、足はない)
  • 豊満な胸とくびれの再現

不思議なことに、この時期は全国的にほぼ同じようなカタチの土偶が制作されています。草創期、早期、前期の土偶の総数は全国で184体と全体の2%程度でかなり少ないですが、そもそも人口が2万にと少ないです。寒冷化から温暖な気候になり、定住を始めたため、そもそもの集団規模が小さかったと考えられます。

土偶の全てが女性を彷彿させています。女性は生命を自らの身に宿し、子孫を残します。集団において、女性は不可欠です。

推測するに、この頃の集団の課題は子孫繁栄、集団の継続、拡大だったのでしょう。それを実現するために絶対的に必要なのが女性だった。だからこそ、この時期の女性を性の対象、尚且つそれが美しいもの、尊いものの象徴として、土偶で”再現”しています。縄文時代の出産には母子ともに大きなリスクがあったことはほぼ確かでしょう。命がけで生命を育む(男性には絶対に出来ない)母子に対し、男性は祈ることしか出来なかった。それを差別化することなく、祈ること、支えることが男性の役割。そして、子孫繁栄の意味を込めて、単位竪穴式住居ごとに呪具として祈っていたとされています。

現代の医療は技術が進んでいますが、母子の命を尊く思い、土偶にその祈りを込めたと思われます。

 

■縄文時代中期

中期の土偶

  • 体だけでなく、顔、足も再現され、全身を制作
  • 女性を彷彿させる胸・くびれ・お尻を再現
  • 文様の出現

これは、カタチ、デザインへの追求に時間を充てるよりも、祈りを強めることへ注力したと考えるのが妥当ではないでしょうか?女性から子が生まれることへの感謝、素晴らしさに対しては草創期から継続かと思われます。そのため、やはりカタチは女性。胸もあり、くびれもあります。子を抱くなど仕草を再現したものが加わってはいますが、極論を言えば、カタチの変化はないです。

その裏付けとなるのが、(土器の記事)。

“実用品としての合理的な形状・装飾性の追求ではなく、集団間の緊張感を和らげる(相手集団に喜んでもらう)ための追求”

中期と言えば、土器のデザインがピークになった時期。土器が集団間の緊張を緩和するための贈与品としてデザインを追求していたとすれば、土偶は集団内の女性に対しての畏敬、その存在の平安の祈りを強めるためににカタチを追求。つまり集団を強くするための所作な訳です。

土器、土偶の役割を同じだ、と考察する方もいますが、それは全くの捉え違いではないでしょうか?

土器は集団間での贈与品(中期まで)、後期以降は集団人口減で実用的に。土偶は集団を強くするのが女性と捉え、それを実現することを祈るもの、と明確に異なった役割です。

 

唯一異なるものは人口の数です。前期までは人口が少ないため、身内に対しての祈りでしたが、中期になれば、人口が26万人に増え、集落となっていきます。人が多ければ働き手も増え、採取・狩猟においては有利になります。ここは上記にもつながる点ですね。

祈りを込めた土偶の対象範囲が単位竪穴式住居の枠を超え、集落または周辺も含めた共同体へと対象範囲が広がったと考えられます。完成度の高い土偶が現れたのも、より強い祈りをより広い対象へと広めるため。集団にとって一世一代の大仕事だった訳です。

 

■次回

中期までは、集団を強くするために土偶に祈りを込めてきました。

後期以降、全く異なるカタチの土偶に変化します。人口も16万人まで減少しています。集団にかかる外圧が変化し、祈りの対象が変化したと思われます。

次回は後期以降の土偶のカタチを追求していきます。

投稿者 matudai : 2021年10月07日 List  

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