| メイン |

2015年04月14日

再考「扇」~第6回  ヒトとボノボが行う「正常位」にはどんな役割があるのか

前回http://web.joumon.jp.net/blog/2015/04/2879.html から、人類など一部の霊長類にしか見られない「正常位」による交接についての考察に入っています。驚くべきことに、霊長類の中でもボノボは正常位による交接を行います。

ボノボはチンパンジーに比べると、比較的食料の豊かの地域に暮らしているためか、オス同士の争いも少なく、メスも自らオスを交接誘うなど、平和を愛する霊長類といわれます。そして、チンパンジーは性の問題を力で解決するが、ボノボは力に関わる問題をセックスで解決するといわれています。

さて、今回はさらに、ボノボと人類に特有の「正常位」について、その機能を構造的に解明していきます。かぎは「共感」にあるようです。

=================

それでは最初の命題に戻します。
ヒトとボノボが好んで行う「正常位」にはどんな役割があるのでしょうか。興味深い記事を見つけました。筑波大生さんのサイトに書かれている「正常位の素晴らしさについて心理学的観点から語ってみた」です。

https://alstroemeriasm.wordpress.com/2014/06/17/

この記事と黒田末寿著「人類進化再考 社会生成の考古学」から「正常位」の役割を解き明かしていきます。正常位の特徴はお互いの顔が向き合う「対面」にあります。通常、動物では「対面」は目と目を合わせる事なので関係性が緊張状態になります。睨み合いの状態です。そのため基本的には「対面」をしないように「視線」をそらします。

しかし、類人猿(ゴリラ・チンパンジー・ボノボ・ヒト)は「対面」による“のぞき込み”や“見つめ合い”を行い、慰めやケンカの仲直りをします。相手の意図を推し量るように、相手を見つめ、それから親和的な行動をしめします。

見つめ合いの行動は「食事」にも表れます。“対面での食事”は通常、動物では争いのもとになります。ニホンザルでは劣位なサルは優位なサルの前で食物に手を出さないので、複数のサルが「対面」して一緒に食事をすることはありません。体をくっつけ合って食べることはありますが、こういう場合でもニホンザルたちは近くにいるサルの目を見ないようにします。注視することは威嚇になるからです。

しかし類人猿のゴリラは顔を向け合い、視線を交わしながら食事をします。更にチンパンジーやボノボになると相手に食料を譲るための食物分配もみられます。食べ物を分配するということは相手の気持ちを推し量り、汲み取って食べ物を分け合うことになります。これは食べ物が少ないから起こることではなく、食べ物が潤沢にあっても起こります。

同じのものを同じ場所で視線を交わしあいながら食べるという行為は食欲を満たす以上の意味をもっています。「大好きなあなたの食べているものを私も食べたい。」「わたしが好きなものをあなたにも食べてもらいたい。」という関係性です。それは社会性を形成するための同調と共存への願望であり「共感」を育んでいると思われます。

それでは性行為における「対面」を考えます。正常位はヒトとボノボのみに見られる行動ですがヒトとボノボの共通項は「生殖を伴わない性行為」です。生殖を伴わない性行為である以上、コミュニケーションに比重が偏った性行為だといえそうです。正常位は「相手の表情が確認できること」「相手のことを正面から抱きしめること」などの特徴があります。

これらは「表情の認識」「抱擁」になります。この二つは人間の赤ちゃんが生後すぐに獲得する機能になります。赤ちゃんは,母親から向けられる慈しみの表情から,母親に対する愛着を獲得し,安心して母親以外の顔にまで目を向ける事が出来るようになります。抱擁も同じです。母親から抱擁されることの無かったアカゲザルは,正常な愛着を形成できず,成長後に不適応な行動を繰り返すようになったという研究があります。                                                                             

「愛着」とは、愛し愛されているという感覚になります。「愛着」が形成されるとそれは「自己肯定」になります。正常な愛着を形成できないと「自己否定」に悩むことになります。

正常位の役割は赤ちゃんの愛着形成に必要な「表情の認識」と「抱擁」と同じであり、パートナーへの「愛着」「共感」を形成しているのかもしれません。もちろん,ただ抱きしめ,見つめ合うだけでも同様の効果は生まれます。しかしセックスの場合は性器からの刺激が同時に発生するため,      より強い「愛着」と「共感」が期待できます。

競争の激しいチンパンジーの群れ社会では「正常位」はデメリットの多い体位になります。調和を大切にし、セックスにより社会的競合の問題を解決したボノボたちには正常位は,社会性を育む「愛着」と「共感」を形成する重要な体位になります。ヒトの社会にとって「愛着」は自己肯定を育み、自己の存在意義を確信することにつながり、「共感」は安定した社会を創り出すのに必要な、他者に対する思いやりを育んでいるのかもしれません。

「扇」の意味することは豊穣を願う「力強い性意識」でした。「扇」を生み出した正常位の交接を調べると「愛着」と「共感」にたどり着きます。

投稿者 tanog : 2015年04月14日 List  

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://web.joumon.jp.net/blog/2015/04/2889.html/trackback

コメントしてください

*