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2015年04月02日

再考「扇」~第5回 正常位の素晴らしさ

第3回第4回で本シリーズの基本的展開がなされました。扇とは力強い性意識を背景にした豊穣、生命を示す呪物であったという仮説です。
第5回以降はさらにこれらを背景に扇の(女性発の)視線にも繋がった正常位という視点もってきます。ここから先は本当に白井さん独特の世界が展開されるのですが、その発想の鋭さ、豊かさにうなってしまいました。
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ここからが本シリーズの核心部分です。それではさっそく紹介させていただきます。

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【正常位の素晴らしさ】
ここまでは、見立てを行った「視線」を人間の男女関係、そして人類史から読み解きましたが、更に動物にまで広げます。するとこの「視線」は他の動物ではありえません。なぜなら人間にとっては一般的な体位とされている正常位(対面交尾ですが他の動物は、あのような体位で交接しません。動物はお互いの顔が向きあわない後背位(背面交尾)です

ビロウが神木になるには女性の視線と正常位での交接を前提にしなければなりません。そのため、正常位について考えてみます。
正常位にはどのような役割があるのでしょうか?
動物との比較から考えてみます。正常位のメリットは相手の顔が見えるため「共感」をすることができます。デメリットは敵から即座に逃げることができないことです。一般的に動物は群れのメンバーが見ている前で交尾を行います。危険を察知した場合はすぐに戦うか逃げなければなりません。

正常位は人間しか行わないと思われていましたが、この常識を覆す霊長類の行動が発見されています
それはボノボです
ボノボとはチンパンジーよりもヒトに近い類人猿だと言われています。彼らは人間だけが行うと考えられていた正常位での性行動を行います。
ボノボの性行動から正常位の持つ役割を考えてみます。

霊長類学(サル学)から始めます。ヒトに近いサルを類人猿と呼びます。
系統ではオラウータン・ゴリラ・チンパンジー・ボノボ・ヒトが同じ類人猿の括りになります。更に遺伝子で分類するとゴリラはヒトと2~3%の違いがあり、チンパンジーとボノボはヒトと1.2%の違いになります。

つまりヒトは98.8%チンパンジーとボノボと同じ仲間ということです。私たちと近縁なチンパンジーとボノボの生態の違いがヒトの社会性を読み解くカギになります。
テレビなどで見るチンパンジーは愛嬌があり親しみを感じますが、野生のチンパンジーは恐ろしいほどの暴力があります。同種間の集団闘争では相手を死に至らしめます。オスの序列変化によっては子殺しも行います。小型のサルを捕まえ、肉食の嗜好が強いです。共食いもします。オス同士の仲間意識が強く、オスの政治力が強い父系社会を形成しています。
チンパンジーは群れ社会の問題解決に「力」を多用します。

ボノボは「セックスと平和を愛する」ユニークな生態で有名です。ボノボとチンパンジーの大きな違いは性行動にあります。飼育下でも野生でも、ボノボは驚くほど多様な性行動を行います。チンパンジーの性行為はあまり変わりばえしませんが、ボノボは多様な体位で交尾を行いますメスからの誘いでよく行われるのが正常位です。

チンパンジーではこの体位はほとんど観察されたことがありません。ボノボはヒトと同じく出産を目的としない楽しむための性交を行いますボノボ1

チンパンジーは発情した雌しか性交しないので、一匹の雌が性交できるのは、月に3~5日しかありません。そのため群れ全体で見ると発情した雌は限られるため、雄同士の戦いは激しくなります。一方ボノボはおおらかです。性交が可能な期間はチンパンジーのおよそ5倍、受精可能な日はチンパンジーと同じ3~5日なので他の20日ほどは、受精以外の目的で性行為をしていることになります。そしてヒトも同様に受精期間以外でも性行為ができます。ボノボはその他にも多様な性行動があります。雄同士がペニスをぶつけ合うペニスフェンシングや雌同士が性器をこすり付けあうホカホカなどの行動が観察されています。

こうした行動は通常オーガズムには至らず、コミュニケーションが主眼のようです敵意がないことを伝える、興奮を静める、挨拶する、緊張を和らげる、絆を深める、食べ物を分けてもらう、仲直りをするといった目的で行うこともあれば、単に快感を求めて行う場合や、こどもの遊びが性交の練習になっている場合もあります。多様な性行動は、さまざまな場面で社会の潤滑油の役割を果たします

 【チンパンジーは性の問題を力で解決するが、ボノボは力に関わる問題をセックスで解決する】
ボノボの社会はオスとメスが対等な双系、もしくは母系や父系も見られる複雑な群れ社会です。ボノボたちは、縄張りが近接する他の集団に攻撃をしかけることはありません。ゴリラやチンパンジーに見られる子殺しもありません。食べるものはチンパンジーとほぼ同じで、果実や葉を主食とし、たまに狩に成功すると動物性たんぱく質も摂取します。チンパンジー程の肉食の嗜好はありません。
チンパンジーと明らかに異なるのは、ボノボは年間を通じて、林床の植物を多く食べることです。クズウコンなどのでんぷん質の地下茎やみずみずしい茎、栄養のある新芽や若葉。茎の内側の髄の部分も、たんぱく質や糖分たっぷりのごちそうです。
つまり、ボノボはいつでも豊富な食べ物にありつけるということです
ボノボ2
チンパンジーのように食料不足や飢えに苦しんだり、食料をめぐって争ったりすることは少ないのです。こうした食性が、ボノボの進化に大きな影響を与えてきたようです。

【 豊富な食料が、ボノボを平和を愛する種に進化させた】
言語能力にもチンパンジーとボノボでは違いがありました。記号文字を記したコンピューターのキーボードを使わせるとチンパンジーの場合、キーボードによる発語は一語か二語の繰り返しが主で、その内容は研究者への返答か食物や遊びでの要求が大部分でした。しかし「カンジ」という名前のボノボは自発的かつ叙述的で意味のある言葉の連鎖が多く、研究者が眼前にないものについて語っても、その意味を理解し語順の意味の理解も速く、しかも通常の音声による簡単な英会話もほとんどわかり、不完全ですがいくつかの英単語をしゃべります
驚くほど、ボノボには高いコミュニケーション能力があることがわかっています
ボノボ研究の成果は、生殖を伴わない性行為はヒトだけが行うとする今までの考えが否定されたことです。人類進化と性行動との関連がより具体的に考察できるようになりました。

性行動以外にもボノボの社会生活でよく見られる
・頻繁に行う食物分配、
・緊密な母子関係、
・重層構造化している社会、
・オスとメスの対等性
なども人類学者の注目をあつめています。

チンパンジー社会をモデルとした、これまでの人類進化論は、男による狩猟活動を中心にした社会進化論に傾きがちでした。ボノボ社会の特徴はそれを多面的角度から再検討し、より包括的に修正する材料になっています。

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著者はボノボの生態を人類に重ねて、人類特有の新和能力はボノボ由来である事を示唆しています。
一方で人類は手指が退行し、サル時代に得た樹上という最大の安全地帯を失い、非常に厳しい外圧に直面します。何度も絶滅の危機に遭遇し、ほんの2万年前までは個体数を増やす事も無く洞窟の中で辛うじて生き延びてきました。そういう意味では人類が生存し続けるために、チンパンジーとボノボの両方の特徴を外圧の種類や大きさに応じて使い分けてかろうじて適応してきたと言えるかもしれません。
生存域を拡げるために南方で適応した種、北方まで到達した種が同じ人類の中にもあり、その中で採集、漁労で食糧を得ていた南方種がボノボに似た性のあり様をトレースしたように思います。北方種の代表を現在の欧米人、南方種を日本人や東南アジア、アフリカ人と捉えると、現時点ではまだ北方種の優位さが勝っていますが、それは著者も言うように力で問題を解決するチンパンジー型社会なのだと思います。それらが限界を迎えている現在、人類が受け継いでいるボノボの社会の遺伝子が必要な時代が来ているのかもしれません。ただ、それは単に単純なサル社会のトレースではないもっと複雑で、チンパンジー型社会を包括する人類特有のオリジナルな領域、あり様が求められるのです。白井さんの新説はさらに続きますので、最後にまたこれらのテーマについて考えてみたいと思います。

投稿者 tanog : 2015年04月02日 List  

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コメント

tanoさん、チンパンジーとボノボを人間社会に当てはめると問題点がハッキリしてきますよね。バイキング・大航海・植民地・奴隷・資本主義などなどチカラで解決することばっかりです。

投稿者 しらい : 2015年4月4日 22:48

ボノボは、人類に近い類人猿ですね。
正常位のセックスのすばらしさ・・・人類だけ許されるセックス・・。
顔を合わせて愛を確かめ合う正常位は、こうして観ると、人間の崇高な愛の姿というべきか。

投稿者 根保孝栄・石塚邦男 : 2015年4月11日 15:49

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