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2015年03月03日

大共同体「東南アジア」を支えるシステム~BRICsに並ぶ安定成長有望株、唯一でない「唯一神」の国インドネシア

■中国、インドに続いて経済が安定、堅調なインドネシア

過去10年余りインドネシアは、暴動、紛争、自爆テロ、地震・津波など非常に混乱した社会状況にありました。しかし、近年安定を取り戻しつつあります。そして、中国、インドに次ぐアジアの第3の新興経済大国として頭角を現しつつあります。

2009年世界経済はアメリカ金融危機に発した同時不況で戦後最悪のマイナス成長に落ち込みました。その中で世界経済のけん引役となったのは中国とインドでした。そしてその2国に続く堅調ぶりを示したのがインドネシアでした。

市場関係者はいち早くインドネシアの有望性を発見し、モルガンスタンレーは「BRICsにもう一つIを加えるかと題したレポートを発表し、中国、インド、インドネシアがこれから成長が見込めるというメッセージを発信しました。これらのレポートに共通するのは、世界第4位の人口規模をインドネシアのアピールポイントと見ている点です。imagesJ8P4XD8A

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実際インドネシアの人口は2010年時点で、2億3000万で世界第4位の位置にあります。1950年代には中国、インド、アメリカ、ソヴィエト、日本に次ぐ第6位でしたが、1960年に日本を抜き、1990年ソ連崩壊でロシアを上回りました。そして1997年2億を超えました。世界が投資先としてのインドネシアを有望視するのも当然といえます。

しかし、パキスタン、ブラジルなど非常に人口が多いに関わらず、成長路線に乗っていない、あるいはもう一つ安定しないという国が少なくないわけですから、他にも世界がこれからの有望株と認識する理由があるはずです。

それはここしばらく秩序が不安定ではありましたが、国民性として寛容な気質をもち、秩序が安定しており、安定成長路線が見込めるという点が大きいのではないかと思われます。中国やインドでも、(少なくとも当初は)成長エンジンになって来たのは、南部地方、江南地方やドラヴィダ地方、民族性が穏やかで秩序の安定した地方でした。

 

■安定した大国としての基盤、寛容性をもつ国

●2億のイスラム教徒(82%)を抱えるが、唯一至高なる神は「唯一」ではない寛容性の国

インドネシアは総人口の82%近く、2億のイスラム教徒を抱えています。けれどもインドネシアは隣国マレーシアと違ってイスラム教を国教にしていません。それどころか、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神を背に乗せて飛ぶ神の鳥、ガルーダを国章にしています。

そのガルーダが胸に掲げる「建国5原則」の第一原則は「唯一至高なる神」。その「神」は何と「アッラー」ではなく、インドネシア語の「トゥハン」が当てられています。その意味するところはイスラム、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー、仏教、儒教のうち、自身の信仰に従って、それぞれの「神(トゥハン)」に祈りなさい、ということであります。建国の指導者たちが、喧々諤々の議論の末に「アッラー」でなく「トゥハン」とすることを決めたとのこと。

無題

 

民族性として、力で全て統合というのでなく、全て受け入れる寛容性をもって統合という方向にあり、また、イスラム教自体も、精霊信仰と並存しているようで、日本の葬式仏教のような存在に近い(そこまで極端でないと思うが)のかもしれない。

総じて、実態は一神教からはほど遠く、宗教には非常に寛容だといえる。これは、インドネシアがイスラム教の国といえども、多様な民族を統合すること、秩序の安定化を非常に重視していることに他なりません。

●北から、西からの民族移動と宗教を受け入れ続けた国

こうしたインドネシアの寛容性の背景には、大陸から南下してくる民族移動の波を、西から伝播してくる宗教の波を、次々に受容してきたこの地域の数千年の歴史があります。多民族集団、多宗教の共存が人々の懐の深さを培い、非常に安定した社会を作ってきた。

そして現在も多数派が他に優越するのでなく、多様性の共存を前提とすることで、インドネシアという国の統一を守っていこうとしています。これが、インドネシアに(経済)大国として世界が注目している理由、有望な安定した経済大国となって行くと世界が注目している理由と思われます。

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【参考】佐藤百合著 「経済大国インドネシア」

 

投稿者 tanog : 2015年03月03日 List  

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コメント

インドネシアの島の数は1万3千あると言われています。
これだけの島々が一つの国になっている事自体、世界でも稀で、争いとは全く無縁である事がわかります。あるいは争いを収める方法を国民も国家も知り尽くしている。そうとしか思えません。
世界が注目すべきは経済大国ではなく、インドネシアの先行したグローバリズムなのかもしれません。赤道直下にある事、豊かな自然と厳しい自然が並存すること、それらもインドネシアの国民を強かにしていったのでしょう。
このシリーズの行く末を注目しています。

徒然なる男より

投稿者 tanog : 2015年3月5日 19:47

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