2015年3月24日

2015年03月24日

再考「扇」~第4回 農耕社会で、豊穣と多産を祈願する地母神信仰が始まる

ビロウがなぜ男根に見立てられたのか。ビロウの見立てには発想の転換が必要でした(第3回記事)。天に向かって立つ男根(男性的な発想)ではなく、大地に突き刺さる男根(大地を女性に見立てた発想)でした。

この交接により「大地の地母神から新しい生命が産まれる。」という発想になります。これは男性原理から母性原理への発想の転換になり、性交→妊娠→出産こそ、超越概念となり地母神信仰が重要視されていたと思われます。

今回は、その地母神信仰の発生を社会変化と共に読み解きます。

=========以降原文の転載です=========

それでは人類史において地母神信仰が発生する段階を先史時代からの社会変化と共に読み解きます。
そしてビロウが表す交接と結びつけます。

■狩猟採集時代
男は狩猟、女は植物性食物の採集、育児
食物は採集し、すぐに消費する。保存蓄積しない。移動生活のため財産の概念はなく所有欲もない。
父は家族の統率者、保護者であるが、親ではない。親は母親だけ。
出産の神秘、女性への畏敬・崇拝。女神信仰へ
狩猟採集社会は人口増加が飢餓につながる。多産祈願の母神信仰はなかった。

■原始農耕期
1万3千年前くらいから農耕が始まる。
女性により発見されたと考えられる。
男は狩猟のため活動範囲が広い
女は育児を行うため生活空間が限られる。
そのため日々、目にする植物の成長を定点観測することができる。
自らの出産・育児体験と植物の成長とが重なり農耕の発見につながったのではと考えられる。
農耕社会は人口増加を耕地拡張によって対応できる。また小人数よりも多人数の共同作業によって生産性が向上する。
よって農耕社会は多産を歓迎し、豊穣と多産を祈願する地母神信仰が始まる。
エジプト・・・イシス
トルコ・・・・アルテミス
ギリシア・・・ガイア
(上記の地母神が文献に残されている。)
すべての動植物を産み出すのは大地と海の恵みに由来する。
そのため超越概念のイメージは平坦・水平・起伏 になる。
これを図2(第2回記事)の女性のお尻だと考える。

■農耕拡大期
人為的に栽培する農耕は食べ物を大量に作り出すことを目的とする。
そのため余剰生産物が作られる。米・麦は保存蓄積が可能。
農耕社会は財産の概念、所有欲を持つようになる。土地の所有は諍いが起こる。
更に発展すると規模の大きな戦争となる。
大量に穀物を作り出すには「大地の豊穣」だけでなく「天候」が重要になる。
天候に左右されて収穫量が変わる。天候は人が作用できない。
よって天候神が産まれる。
狩猟採集は必要な分だけ消費するため労働時間が短いが農耕は計画的で手間がかかり長時間労働を必要とする。男たちは土地に留まるようになる。
狩猟採集時代は母権が強かった。(狩猟のため、男は家にいない)
農耕を始めると男は土地に留まり、土地を守るため戦争に行く。
そのため父権が強まった。
男性の性格を持ち、天候を司る男神・太陽神が登場する。
エジプト・・・太陽神ラー
シリア・・・・バアル
ギリシア・・・ゼウス
(上記の男神・太陽神が文献に残されている。)
図2(第2回記事)の男性器は天候を司る男神を表すと考える。

以上の読み解きからビロウの生育状況は男性器のみを表すのではなく、
豊穣の地母神と天候の男神の「結合」を表すと予想します。

この見立てをした「視線」は女性が人生の説目で感じる妊娠・出産と日々の
生活で目にする大地から植物が産み出される神秘があわさった感覚なのかもしれません。
「扇」は神聖性を備えた呪物です。
その意味するところは豊穣を願う「力強い性意識」が土台にあると思われます。

投稿者 tanog : 2015年03月24日  



 
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