続縄文時代 フゴッペ洞窟に描かれた壁画の意味 |
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2022年12月12日
縄文土器~「縄」はいったい何を表しているのか?
火焔型土器に象徴される「縄文土器」。これら縄文土器の多くに表されている「縄」の文様は、いったい何を表しているのか。さまざまな説がありますが、ここに迫ってみたいと思います。
(大島直行氏『月と蛇と縄文人』を参考にさせていただいております)
画像はhttps://mag.japaaan.com/archives/164704/3からお借りしました。
民俗学者の吉野裕子氏は、神社の注連縄(しめなわ)が蛇の交尾している姿が象徴的に表されているとしています。
私は、これまでの人生で、実際に蛇が交尾している様子を見たことがありません。蛇は、ハブの場合、2匹(または3匹)がしっかりと絡み合って交尾するそうです。絵を見てみると、まさに注連縄とそっくりですね。(下絵は安田喜憲氏より)
吉野氏は、蛇の脱皮や冬眠が「不死」や「再生」を連想させること、さらに男性性器に似た形態に対して、縄文人が「生命の旺盛さ」を感じ取ったのだと考えています。そして、「蛇に対する思いは縄文時代に限ったことではなく、その後も表面から隠されながら命脈を保ちつづけ、地下水のように日本文化の諸相の底を縫って流れ、現代に及んでいる」と指摘しています。
そういえば、あの岡本太郎氏も、「縄文土器にふれて、わたしの血の中に力がふき起るのを覚えた。濶然と新しい伝統への視野がひらけ、我国の土壌の中にも掘り下げるべき文化の層が深みにひそんでいることを知ったのである。民族に対してのみではない。人間性への根源的な感動であり、信頼感であった」と述べています。
ルーマニアに生まれた20世紀最大の宗教学者であるミルチャ・エリアーデ氏も、吉野氏とほぼ同様の見解を持っています。加えて、蛇は女性が身ごもるための水、すなわち精液を「月」から運んでくるのだと考えました。
(「月」に対して縄文人はどのように捉えていたのかについては、とても興味があります。今後も追求していきたいと思っています)
これらのことから、縄文人は「不死」「再生」の象徴である蛇を崇めており、きつく絡み合う蛇の交尾の様子を「縄」で模倣し、土器の表面に「縄文」として表現したものと推測されます。
大島氏は、「縄文土器に長きにわたって『縄文』が描かれ続けたのは、縄文人にとって不死や再生が重要な観念として確立されていたからでしょう。それをシンボライズするものとして選ばれたのが蛇だったのです。そして、縄の撚り(より)によってレトリックされたのです」と結論づけられています。
現代の日本では、「蛇」と聞くと何か「怖いもの」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。縄文時代は、産まれて間もなく死んでしまうことも多かった時代。病魔との闘いの中で生命力を求める思いを、現代とは比べようもないぐらい強烈に感じていたのでしょうね。
投稿者 kita-kei : 2022年12月12日 TweetList
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