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2019年08月27日
言語の習得と脳の発達~9歳から11歳の3年間に人は追求脳を作り上げる
縄文ブログでは過去に黒川伊保子著の「日本語はなぜ美しいのか」という本からいくつも日本語の特徴、その効果、優位性を紹介してきた。久しぶりにこの本を読んでいるとさらにいくつもの紹介しておきたい話がある。
今回、少しミニシリーズで黒川氏の著書から“なるほど”を提示してみたい。
最初は言語の習得過程である。赤ちゃんが言語を習得し、3歳から爆発的に言葉を話すようになる。さらに7歳まではどんどん言語の習得と共に脳が発達していく。現在詰め込み教育の弊害が教育界で叫ばれているが、習得するとはこういう事ではないかというヒントがある。
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「ことばのたまご」
3歳の誕生日を迎えた頃から、子どもの語彙は格段に増え始める。
ここでいう語彙とは、記号として口に出せることばのこと。実際には脳の中に、記号化していない「ことばのたまご」は、その数百倍も何千倍も詰まっている。3歳になるまでに培った「ことばのたまご」を記号化するこの時期、新たな外国語の導入などは到底考えられない。せっかくの「ことばのたまご」をこわしてしまう事になりかねないからだ。
4歳から7歳まではことば、所作、意識の連携を学び取るときである。特に所作の基礎ができあがるときなので、さまざまな分野の洗練された所作を、子どもの目の前で見せてあげたい。音楽、アート、ダンス、スポーツなど、身体性を伴う稽古事の開始適齢期だ。
この時期、暗記型の外国語教育は、明らかに時間の無駄。英語の歌を歌って踊るような身体性の育成なら問題はないが、言語の身体性は日本語でも問題なく養える。言語系ではない、右脳系の稽古事のほうが明らかに得な時期である。
6歳から7歳までは母語の社会性を養うとき。家族との親密な関係で作り上げてきた母語を、学校という公の場で鍛え上げることによって自我を確立すると共に、社会性を獲得する。したがってこの時期に外国に居住しているわけでもないのに、親の母語でもなく、本人の母語でもない外国語の学校に通わせるのはリスクを伴うのである。内的世界と外的世界が異なる言語環境にあれば、この2つの兼ね合いに失敗してしまう。脳の立場からいえば、ここは外国語にうつつを抜かすよりも、母語の読書を重ねるときだ。母親の読み聞かせや、本人の音読も重要な時である。
「脳のゴールデンエイジ」
脳における母語習得の臨界期は8歳である。言い換えれば8歳になれば母語の構造は完成する。ならば8歳を超えたら外国語を学ばせてもいいかというと、そう単純なことではない。9歳から11歳までの3年間、完成と論理をつなげ、豊かな発想と戦略を生み出す脳に仕上ていく。いわば子どもの脳の完熟期だ。この3年間に脳が獲得する機能はコンピューターにたとえればOS(オペレーションシステム)のようなもの。これに比べたら12歳以降に手に入れる知識は単なるデータファイルにしかすぎない。つまり脳の性能を決める大事な3年間なのだ。このため、この3年間は脳のゴールデンエイジとも呼ばれている。
ここでは8歳までに完成させた母語を駆使し、直感と感性を総動員して発想力を養い、論理的思考力につなげる訓練を繰り返す。もちろん本人にその意識はなく、ただ一生懸命遊び、本を読み、学んだりゲームをしたり、友達とけんかしたり仲良くなりながら、その過程を踏んでいく。
そうして12歳になると完熟した子ども脳はオトナ脳へと変容を遂げるのである。
5感プラス直感でつかみとった情報をすべて知識に換えていく貪欲な子ども脳から、要領よく意味を格納していくおとなの脳へ。
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この文章を転機しながら思った事がある。
現在、類グループで小学年を交えての探究塾があるが、100人を超える大人も混じった劇場会議の中で10歳から12歳の子どもが大人顔負けの追求力、照準力を示した発言をする事がよくある。
彼ら子ども達はなべて優秀だとなるが、それは時代的な話だけでなくこういう生物学的な脳の成長過程にあるからだと腑に落ちる。そして彼らが小学校から中学に上がる中で無為な学校という空間に押し込められ何度も繰り返し記憶するだけの勉強をすることで、この重要なゴールデンエエイジを台無しにしていっている。そして本来12歳で完熟する創造や追求の為の脳が完熟しないまま大人になっていく、それが現在の教育界の本当の危機ではないか。
投稿者 tanog : 2019年08月27日 TweetList
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