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2011年02月27日

人類の起源に迫るDNA解析ってどの程度あてになるの?

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九州大学総合研究博物館より(画像クリックで拡大します)
人類の起源や民族系統分析、進化系統を把握し史実を明らかにすることは、私たちの社会構造や意識構造を理解する上では重要な研究対象であると思っています。学者達は、かつては、考古学や形質人類学などに見られる物証を主に対象とし、年代測定法よりその史実を解析して来ましたが、現在は、DNA解析や血液型解析、HLA解析やタンパク質の分析などから、人類の起源を解析することが可能となり、物証とともに、その史実に迫る研究がなされています。その最先端のDNA解析(mt-DNA(ミトコンドリアDNA)やY染色体亜型分析)が、複雑に連携しあった人類の進化塗り重ね構造をどこまで分析できているのか?=どこまであてになるのか?という疑問が沸いてきます。
【生物史から、自然の摂理を読み解く】というサイトに「進化系統樹作成の根拠となっているDNA解析ってどの程度あてになるの?」という言う記事があり、現在、人類の起源を解明しようとしているDNA解析の課題と問題点が記載されているので、ご紹介したいと思います。

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Y染色体DNAマップの画像をクリックすると拡大します。
その記事で提起されている課題は、
・解析の前提になっている「分子変化率は一定」(100万年に2%~4%で突然変異が起こる、というのが定説)という仮説(=分子時計)の上での計算で成り立っているが、分子変化率が一定かどうか不明であり、年代推定の根拠が問われるということ。
・世代を超えて点突然変異の増減に影響を与えないわけが無いのでは?という疑問がある。
・mt-DNAやY染色体亜型分析が確実に単系遺伝(mt-DNAは母系のみ遺伝、Y染色体は父系のみ遺伝)とする仮説の上で成立してるために、娘や息子が生まれなかったらその遺伝子は途絶えれば、集団を構成する個体数が変化するはずで、また単系遺伝がどれだけ途絶えたかは計算式においては無視されているらしい。
・mt-DNAやY染色体亜型分析が確実に単系遺伝(mt-DNAは母系のみ遺伝、Y染色体は父系のみ遺伝)の仮説が正しいか?不明。ごくまれにmt-DNAの父系由来やY遺伝子自身でのDNAの入替えの示唆も懸念される。

などの疑問があるといわれている。仮説ゆえに、その正統性が必要であり、今後の情報により論理の塗り重ねが必要であると考えられるが、絶対的な指標には成りえないし、そこから得られた分析結果を参照するにあたり、まだ、複雑な人類の塗り重ね構造の解析が始まったばかりという認識に立つ必要があると思われます。
★【生物史から、自然の摂理を読み解く】というサイトに「進化系統樹作成の根拠となっているDNA解析ってどの程度あてになるの?」の紹介より。

進化系統樹の根拠となっているDNA解析の基本概念を押さえなおしたが、よくよく考えてみると疑問も多々浮かんでくる。
ヒトと類人猿の分岐は、研究者の間でも世間でも関心が高かったので、様々な分子で研究され、そこで確認された値がほとんど一致したので、ほぼ正しいと言われている。
確かに、地質年代を測定する様々な手法(放射年代測定など)と化石や地層での分析により、何重にもチェックされている…と研究者は胸を張っているらしいのだが、全てはその解析の前提になっている「分子変化率は一定」(100万年に2%~4%で突然変異が起こる、というのが定説)という仮説の上での計算であって、本来ならその分子変化率が一定かどうかを別に立証しなくてはならない。
瀬戸口烈司氏の’96年の7~9月にNHK人間大学「人類のルーツを探る」という番組のテキストを見ると、 “分子時計の研究者は「複数の手法を用いてチェックされたのだから分子時計は正しい、と錯覚している」” 、と批判している。
瀬戸口氏はさらに、塩基置換が、統計学で言う「ポアソン分布」と一致しないことを指摘し、てこうも述べている。
“分子変化速度が一定していない分子変化に、「変化速度一定」の仮説をあてはめる分子時計は、そもそも科学的根拠に乏しいのである。”
たしかに、「分子変化率は一定」=「突然変異は100万年に2%~4%と一定の確率で起こる」、という前提は素人目に見ても「ホンマかいな…その前提自体?」とツッコミを入れたくなる。
点突然変異は、太陽の活動の変化で紫外線量が増えれば増加するだろうし、生物が極度のストレスに晒された場合も転写ミスは増加するだろう。しかも、そもそも点突然変異など日常的に起こっており、修復酵素が働いて正常を保っているのが生命の常態である。修復酵素の機能も外圧状況により大きく影響を受けるはずで、それが世代を超えて点突然変異の増減に影響を与えないわけが無いのでは?と思うのである。
さらに、生物集団としての問題もある。
ミトコンドリアが確実に母系遺伝すると仮定すると、娘が生まれなかったらその遺伝子は途絶える。分岐年代の特定などには集団遺伝学における定義や計算式が用いられるが、本来なら、集団を構成する個体数がどのように変化したか、どれだけの母系が途絶えたかを把握する必要がある。しかし実際、途絶えた母系は計算式においては無視されているらしい。
また、集団規模や集団の生活形態(たとえばオスの方が多く死ぬ…など)によって変異の蓄積速度が異なることもあるだろう。
これらの点からも、解析の前提になっている「時間当たりの突然変異蓄積が一定」には無理があると思われる。
さらに、ミトコンドリアDNAを分析に用いるときミトコンドリアは全て母方の卵細胞由来である(100%母性遺伝しかしない)、ということが大前提となってる(多くのサイトでは確かにそう書いてある)が、(極めて低い確率だが)父由来のミトコンドリアが受精卵内で増殖してしまう事例も報告されているらしい。
父方のミトコンドリアがわずかながらも混ざるということが過去の人類集団で起こっていたとすると、母系を辿っていく計算式の前提は成立しなくなる。
実際に、霊長類よりも豊富な化石や研究対象があるゲッ歯類では、分子時計から推測された分岐年代と、古生物学的な推定とは大きく食い違っているらしい。
逆に、短期間(数万年単位)である、ホモ・サピエンスが生まれてからの解析結果はもっと誤差が大きくなるのではないかという気がする。
これらを考えあわせると、ミトコンドリアDNA解析による進化系統樹は、絶対的な指標ではありえないだろう。もちろん全くあてにならないとは言わないが、解析結果を適用する範囲に注意すべきだというのが、今のところの私の結論である(少なくとも、前提を押さえ直さずに絶対視するのはタブーだろう)。
「多地域進化説」を唱える学者は、彼らの実験結果が自説に不利なので、論争の中でこの解析手法を全否定したりしているが、それはそれであまりに極端だと思う。ボロくそに書いたが、放射年代測定なども併用しながら、あくまで解析手法の一つとして慎重に参考にする…程度に抑えれば、それなりに有効に使用することも可能ではないだろうか。
…という前提で、以下は参考までに

mt-DNAを解析する段においてもこのような問題があり、遺伝子と実際の人類の起源や年代特定、さらには民族分析に使用する場合はよほど、注意しないと見間違える可能性があるので注意したい。
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◆人類の起源や民族の系統を把握するために使用されている分析手法は、いろいろ存在する。その主要なものを紹介し、特徴と問題を記載しておきます。
1】赤血球血液型分析(ABO)
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【特徴】
・赤血球の凝集という抗原抗体反応を用いた検出法により判定
・100種類の血液型が知られる。
・赤血球はアミノ酸の結合したタンパク質であり、このアミノ酸の配列は遺伝子DNAは指令しているという前提
・遺伝距離を推定することができる。→遺伝的近縁図が描ける
【問題】
・あくまで現在の集団間の関係であり過去の現象の塗り重ねの最先端部分の解析である
・用いられるデーター量が限られている。
・一般の人類学や考古学と分析の結果が大きく異なる。
2】血液型白血球HLA型分析
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【特徴】
・HLA(ヒト白血球抗原)は、正常な細胞と区別して変化した細胞を排除する免疫系を司るマーカー
・HLAは、排除すべき異物情報を免疫T細胞に伝達する働きあり。
・HLA遺伝子群は複雑で多様性に富み著しい個人差(多型)を示す。
・HLA-Aだけでも35種類、HLA-Bは60種類以上あり対立遺伝子は赤血球の血液型と桁違いに多い。
・HLAは組み合わせの種類が数千におよび、個人を同定するのに適している。
・法医学の親子鑑定や個人識別に使われている
・HLAのハプロタイプ(母由来と父由来の一組遺伝子セット)のは保存性がよい。また、個人差だけでなく集団差も著しい。
・毛髪や体液を用いた検査が可能であり、数十年から数百年前の検体からも検査できる場合もある。
・極小量(ミリグラム単位)で検査できる。
【問題】
・一般の人類学や考古学と分析の結果が大きく異なる。
・今後の研究・調査が期待される。
・多様性が非常に高いがゆえに分析が困難。かつ、サンプルのランダム性について疑問提起もあり。
3】血液型Gm遺伝子分析
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【特徴】
・Gm型遺伝子は血清に関わる血液型の一種で、免疫反応に重要な役割を果たしていると説明されている。抗体を形成する免疫グロブリンを決定する遺伝子頻度が民族ごとに固有の値となり、民族を示すマーカーとなるという仮定
・遺伝子が人種によって異なるという特性あり。
・骨などの形態的なものが環境の変化などに大きく左右されるのに対し、DNAやたんぱく質などの情報高分子は環境に左右されず、時間に比例してほぼ一定の速度で変化するという性質あり。
・Gm遺伝子はきわめて安定的人種の識別や混血の程度、また集団の移動の跡づけなどを判断するのに大変高い信頼度をもっている
【問題】 
・一種類の遺伝子で集団のルーツを云々することは大変危険
・解析結果より日本民族の起源は、シベリアのバイカル湖畔にあると結論に至っている
4】ミトコンドリアDNA多型解析
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【特徴】
・細胞内の小器官であるミトコンドリアに含まれる遺伝物質の解析
・母親のみから子どもに遺伝といわれている。
・核DNAに比べ突然変異によって塩基が置き換わるスピードが速い(塩基置換(突然変異)の起こる速度が、核DNAに比べて5倍から10倍も早い)
・よって個体間の塩基配列の違いを把握するのに有効
・集団内の遺伝的関係を推定可能
【問題】
・突然変異の確率は、一定という前提に立っていること。
・男系の集団は分析できない
・女系は把握できるので当然、先祖は女性となる。=ミトコンドリアイブ説へ
・全DNAを解析するわけではなくある特定の遺伝子座を解析しているに過ぎない。
・縄文人の母と中国人の父の間に子ができたとき、その子のDNAを分析しても中国人の父は発見できない。
・サンプルが大量に取れて、塩基数が少なく、母系遺伝しかしない、そして、個体差の大きいという特徴のあるミトコンドリアDNA(mtDNA)が、都合が良いので、利用。
・交雑の歴史は読めない。
5】Y染色体亜型パプロタイプ分析
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【特徴】

・父方からしか由来しないY染色体DNAの遺伝子座を調査する。
・Y染色体は、減数分裂の際、交差しないので男系の系統を把握できる。塩基配列は一定、変化しない特性を持つため親子鑑定や人類の足取りを特定可能。
・mt-DNAた各種タンパク質多様性解析よりも大量な情報量がある(mt-DNAの3000倍)
・無駄な塩基配列はわずか7%しかなく、90~95%が無駄だと言われる核DNAとは、際立った違いを見せている。
【問題】
・母系遺伝は想定できない。
・突然変異の確率は、想定でしかない。
・遺伝子の数は他の染色体と比べて少ない。
・Y染色体解析から文化や言語の解析の整合性を求めるのは不足あり。
・男系の家系が守られていないグループではこの原理は成り立りたない。
・Y染色体DNAの伝達は、必ずしも絶対的なものではなく、その特徴あるDNAが伝わらないことがよく起こる。
・古代人の骨からY染色体を分析するのは極めて技術的に困難である。
・交雑の歴史は読めない。
6】Y染色体以外の核DNA分析
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【特徴】
・大量の情報がある。
・交雑の歴史が刻まれているがあまりにも複雑。
【問題】
・技術的課題があり解析が進んでいないが、染色体上の多数の遺伝子座の解析は進んでいる。
・核DNAの場合は母と父の複合体になるために、数世代を経ただけでその組み合わせはねずみ算で増え、10世代遡るだけで祖先は2の10乗=1024人も存在することになって分析不可能
7】その他、アルデヒド分解酵素解析、HTLV-I解析、血清タンパク質多型解析など。
こうしてみると、まだまだ、全体を判断するには、データー不足や研究分野ごとのその成果の突合せ解析、仮説となっている前提の検証が必要だと思われます。また、遺伝子解析から、民族分析・人類起源の年代特定を行うには、そのDNAの塗り重ね構造を明らかにしていく必要がありそうです。
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投稿者 2310 : 2011年02月27日 List  

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コメント

DNAを追求してさかのぼると人類の始原に到達する・・。
身近には、親子関係を特定できるというから、便利になったのか、人間関係が複雑になったのか・・はケース・バイ・ケースだろう。

投稿者 根保孝栄・石塚邦男 : 2014年11月10日 11:58

絶滅したネアンデルター人やクロマニヨン人は新人類と混血したのか。
あるいは、混血できない異種の人類だったのか。

たとえば、チンパンジーとゴリラが混血できないように・・・。
それとも、新人類である現在の人類は、ネアンデルター人やクロマニヨン人もとりこんで混血したのか・・・。

投稿者 根保孝栄・石塚邦男 : 2015年1月25日 19:03

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