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2022年05月19日
【縄文再考】火の使用は縄文人の自然に対する観念・追求の賜物、現代社会の可能性
火の使用の起源がいつかは、いまだ定まっていないところですが、縄文時代も土器を中心に煮炊きをしている等、火をコントロールできるようになっていたと考えられます。
今日は、日本での火おこしの文化や発火法などに焦点をあてて、追求してみたいと思います。
まず、日本ではどんな発火法で火を起こしていたのでしょうか。
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(前略)
摩擦法には、回転による方法と往復運動によるものとがあり、後者のやり方である発火鋸や発火藤および発火梨は、インドネシアからオセアニアにかけて広く見られる発火法だったが、日本にこれがあったとは確認されていない。
他方、発火錐と総称される回転摩擦による発火法は、さらに4つに分けられる。火きり板の上にのせた火きり杵を動かすその方法による分類である。単純にてのひらで火きり杵を動かす揉錐、紐で動かす紐錐、弓を使う弓錐、そして舞錐で、最後のものは、はずみ車つきの錐のほか、 1本の紐を両端に結びつけた1本の横棒を用意し、紐の中央を錐のと端に固定した発火具である。
日本では主にこの揉錐と舞錐が使われてきた。揉錐は世界的にみて最古の発火法ではないかとされるが、鳥居が指摘したように、日本列島よりも北方では弓錐が広く用いられていた。揉錐を南方式の、弓錐を北方式の発火法と考えた鳥居は、いわゆるパレオアジア諸民族がすべて弓錐を用いているのに対し、アイヌでは千島アイヌが弓錐を、北海道アイヌは揉錐を使用することを挙げ、北海道アイヌも昔は弓錐を使っていたはずと推定した
(以後略)
(発火法と火の起源神話)
http://hdl.handle.net/10097/48917
より引用
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以下の絵をみると、揉錐(もみきり)は誰もが知っていると思いますし、たぶん使っていただろうと想像できます。一方、舞錐(まいぎり)は揉錐から進化した方法だと思いますが、結構、構造的,機械的で、これをつくるには、知能や観念がないと方法として確立しなかったと考えられます。
では、日本では、いつ頃から火を使用していたのでしょうか。
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(前略)
日本列島では、ヒトの住んでいた痕跡が多く発見されるのは3万5千年前以降であり、宮崎でも、その最初期から火を使った痕跡、礫群が残されている。旧石器人が、火を使ったことは間違いないが、火をどうやって起こしたのか、確保したのかがあきらかでない。
(中略)
日本列島において、発掘品の中に明確な発火具が「安定して」登場するのは、各地で摩擦式発火具の出土例がみられる弥生時代である(略)。弥生時代に一般的であった摩擦式発火法は、縄文時代以前に遡るとみてよい。特に、いわゆる木の文化を発達させてきた日本列島の環境特性は、木製道具を使う発火法が古くより存在するという想定を後押しするように思われる。一方、火花式発火法のうち、黄鉄鉱やそれと打ち付けられた可能性のある石器の出土は、日本列島においては今のところ聞かれない。
(中略)
考古学・文献等にみられる各状況からは、遅くとも八世紀初めから前半ごろには火打石・火打金等に関する知識を十分に持つ人々が存在したとわかる。(以後略)
(発掘された火起こしの歴史と文化)
https://www.lib.pref.miyazaki.lg.jp/ct/other000003000/fujikisatoshi3.pdf
より引用
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縄文人以前の旧石器人から使用していたこと。豊かな森に囲まれ、火山も多い日本では火の使用以前から木が燃える様を注視したいただろうことから、木を使って摩擦法で火起こししていたと考えられます。(一方、鉱物資源が少ない日本では、打撃法,火打石のような発想は後であった可能性が高い)
厳しい自然外圧に対して、生活技術として「火を使用する」ことは不可欠。旧石器時代からすでに使用されていたことから考えると、ごく自然で、縄文人は旧石器時代の観念や認識を受け継ぎ、火の使用は生活の様々なことや祭祀に至るまで進化を遂げたのだと思います。
一方で、我々現代人が縄文時代に立ったとして、発火法が生み出せるか?と言われるときっとできないだろうと思います。利便性にあふれ、なんでも用意されている現代社会にこそ、旧石器人や縄文人の自然に対する観念・追求は非常に重要で、それが現代の科学技術信仰の限界を打破する可能性だと思います。
投稿者 sawane : 2022年05月19日 TweetList
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