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2014年11月29日

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?8~イスラムの社会統合

クルアーン  イスラム教シンボル画像
皆さん、こんにちは!
現在も続く、イスラムへのメディアによる悪評は相変わらずですが、このシリーズでは、賛同者が増え続けるイスラム社会の本質とその可能性について追求してきました。
最終回は、宗教(観念共認による統合)が国家(力の序列原理による統合)を上回った社会の例として、イスラム世界のイスラム社会の統合手法(=社会構造)をまとめてみたいと思います。

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◆まず、いままでのシリーズの記事より、判明した社会の統合に関する内容を振り返ってみたいと思います。

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【1】~プロローグ
・イスラムの大征服とは、布教目的ではなく、アラブの同胞を養うというカリフの族長的責任より発し、共同体を維持する規範を整備し、それに基づく国家風統合という手順を踏んだのです。この構造から、宗教(観念統合)が国家(武力統合)を上回ったのはなぜか?という課題を設定しました。

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【2】~同じ神を信じるキリスト教・ユダヤ教と何が違う?
・イスラム社会は、市場圧力より、個人的なエゴの肥大や利害関係の部族間対立で、急速にアラブの共同体社会の自己崩壊を招いてしまいました。その現実を直視し、食い止めるべく、成立したのがイスラム教でした。キリスト教と対比すれば、「現実捨象・政教分離・偶像崇拝・国家>宗教」に対して、イスラム社会では、「現実直視・政教一致・偶像崇拝禁止・国家=国家」であり、信じるだけで救われる他の宗教とは、構造が違うことがわかりました。

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【3】~イスラム教の中心:六信五行とは?
・イスラム社会の根底を規定する六信五行共同体維持に反するもの(私利・私欲の禁止、自我制御)を抑止し、子供の頃から一生にわたり修養することを徹底しました。力の原理ではない観念で、集団を統合していることがわかりました。みなが収束できる、共認しやすい唯一絶対神をトップにすえ、その元の平等という位置でエリート層が先導し、観念固定度、集団結束度の高い集団を形成したのでした。
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宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【4】~イスラム法とその集団規範
・拡大するイスラム社会は、大帝国=肥大集団となっていきます。異民族を含めた社会を統合するためのルールが必要となりました。それがイスラム法であったのです。経典に規定のない物事をイスラム法学者により判断していきました。それらは、必ず、コーラン等を基準とし解釈⇒法制化され、集団>個人を優先とする価値観により観念統合する方法をとりました。

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【5】~イスラムはなぜ商業を重視するのか?
・当時、西洋社会では、商業は、下賎な職業でしたが、イスラム社会では、性も富も商業も集団統合の最重要課題として位置づけられていました。彼らは、実態と対比できる価値であればトコトン肯定しました。逆に、商取引上で共同体を崩壊に導く要素を排除していきました。具体的には、①幻想価値(性市場・架空経済)を全否定 ②私利私欲を排し、利益は集団へ還元 ③規範厳守のための違反者への厳しい罰則 ④騙しの排除です。この商業から広範囲に一般大衆が求める日用品を主流とした交易ネットワーク化を実現し、征服した国の力の序列原理を破壊させ、被征服民が取引相手となるようにネットワークに組み込み、同時に規範群を流布し、拡大する基礎を築いていきました。

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【6】~イスラムの性
・ヒジャーブは、自らの共同体とそれに属する女性を西欧の市場圧力と力の序列圧力(略奪)から守るための手法とわかりました。イスラムの性の本質は、性を肯定視し、結婚も信仰の重要な一部で、一夫多妻制も、女性を経済的に援助し、集団・社会を維持するための制度として社会に組み込まれていました。日常の性行為も、単なる生殖のみではなく、夫婦の間で楽しむべきものとしてアッラーから与えられたものでした。イスラム社会では、性闘争を封鎖(ヒジャーブ・婚前交渉の禁止・婚姻規範)→家族→部族→性そのものが統合され、社会秩序を維持していることが理解されました。

宗教が国家を上回った国:イスラムとは?【7】~金貸しにとって何がやっかいなのか?
・金貸しにとってイスラム社会は、 ①集団の在り様他、全ての存在原理が対極に位置し、②彼らのイスラム金融の拡大は、金貸しの常套手段である“騙し”を否定し、“市場拡大=搾取”を阻む危険性をもった脅威である点から、欧米の異端視・厄介視に繋がっていることがわかりました。
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宗教共認力(観念共認国家)が力の共認(武力統合国家)を上回ったイスラム社会はこういった現実直視の視点が社会秩序を規定しているとわかりました。では、上記から、特徴をまとめてみましょう。

◆イスラム社会の構造と特徴
★イスラム社会は国家を持たない状態で宗教が生まれた!
・ローマやギリシャでは、武力統合国家成立→搾取→本源集団破壊⇒大衆の救い欠乏⇒宗教が成立しています。イスラム社会では、市場圧力の襲来→本源集団の自己崩壊⇒大衆の救い欠乏⇒宗教成立⇒国家建設へと進みます。大きな違いは、アラビア半島は不毛の地であり、他民族からの略奪をあまり経験していないため、遊牧を業としていても、本源集団たる共同体(=本源意識)を残していたところです。極端にいえば、武力統合国家を必要としなかったとも言えます。社会や集団の秩序形成のために、全てをそこに収束させていったのです。その結果としての国家形成でした。

★現実を直視した規範群から構成されている観念内容!
・コーランを代表とし、イスラム法、六信五行、イスラム商業、イスラム銀行・その取引、イスラムの性文化などから見られる思考方法は、全て、人類本来の生き様を規定する規範群で、コーランの教えの法を超えなければ、全て肯定的に受け入れています。こうした現実直視の規範群が彼らの観念共認の全てで、国家からの収奪に苦しむ武力統合国家の住人である人々にとっては、受け入れやすく、かつ、イスラム側も受け入れる受容体制がとられていたことが大きなポイントです。
しかし、事実観念から程遠いものがひとつあります。それは、唯一絶対神のアッラーです。これは、私権社会の産物で架空観念でしかなく、現実に存在しないものです。当時は、社会統合上、観念的に使わざるをえなかったとしても、ここは、大きな弱点になるだろうと推測されます。
一方で、当時は、最も観念共認しやすい唯一神を教義の根幹に据えたことで、徹頭徹尾アラブ民族の共認を重視したようです。また、商業の論理やアラブ民族の多くを否定せず、肯定的に観念内容に盛り込んだのは、自我肥大→暴走・唯我独尊を防止するための措置からだろうと思います。

★日常、修養過程―追求過程が、万民に期待され組み込まれている!
・一過性で、祈れば救われるというキリスト教に代表される宗教観念と違い、常時、己の心底にある思念を経典とすり合わせ、その指標にそって己の言動を評価・追求してゆく思考を幼い頃から教えられ、それに照らして生きてゆくことを、一生、期待されているという修養・追求過程をもっていることです。これらは、万民を観念収束させるためにも必要であり、常に集団や仲間・社会を考え、人々の関係つけることに繋がり、かつ、集団の連帯性・紐帯を強化するにも役立っていたのでした。

★知識階級(=エリート層)が組織化され、かれらが観念を主に導く!
・イスラム法成立過程を見てもわかりますが、組織化された知識階級が観念を経典に基づき解釈し、民衆を導いていく体制がとられています。しかし、知識階級といえども、アッラーの元では全て平等で、特権を得ることはできない構造になっています。彼らの地位は、社会的に高くなく、その活動はあくまで集団・国家の秩序維持のためのもので、当然、行われてしかるべきものと理解されています。

★交易ネットワークに乗せて観念内容を流布していった!
・社会を形成する上で、もっとも重要な要素は大衆的な観念共認のネットワーク形成にあります。もともと隊商貿易を担っていた彼らは、日常品や貴重品の売り買いする交易ネットワークの中で、観念の中身を流布していったのだろうと思います。現在のイスラム教の定着域とアッバース朝の版図が変わらず広範囲に継承されているということは、交易ネットワークを通して、観念がその地域に深く浸透したことを意味します。その地域は本源性の高い民族の住む地でもあり、彼らに受け入れられていることを示しています。このネットワークが存在しなければイスラム世界の拡大は成立しなかったのです。
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◆社会を統合するとはどういうことか?イスラム社会から何を学ぶべきか?
 人類500万年の歴史のうち、社会形成は、わずか弓矢発明以降、集団が急拡大し、接するようになった約1万年前からの歴史でしかありません。集団間の関係は、共同体(自然闘争集団)相互の定期的な友好関係を保つための贈与関係から始まりました。本源的な縄文時代の翡翠や黒曜石の贈与関係を見ればわかりますね。
その後、土地や所有物を蓄積できない遊牧集団とそれらを蓄積した農耕集団との間に取引関係が形成され、遊牧民族は、農耕民族の共生集団になっていきます。その後、温暖化による環境変化と人口の増大、乾燥化する地域での食料不足などから、同類間の緊張圧力が上昇し、イラン高原等の遊牧民族から略奪闘争が発生しました。その結果、(敗者が勝者に従う)力の原理⇒身分序列で統合された武力統合国家が成立。また、(友好関係の証としての贈与関係とは異なった)交易という取引関係が成立しました。
遊牧部族は、史上初めて立体的なヒエラルキー的な複層社会を形成し、高度な観念力と観念内容(ex.神話・伝承・口伝・教義)をもって、観念共認してゆく力が武装集団の力を強化したため、世界を制覇できたのでした。
さらに、国家を統合するために、力を背景とした観念共認である法制度を作り出しました。これらが武力に勝る最先端の制覇力となっています。
しかし、法制度だけでは収奪に苦しむ民心を掴み秩序化することができないため、大衆の社会期待に答えた、救いを与える宗教共認が不可欠になり、宗教を政治に取り込んでいきます。
この宗教の共認力は力(武力・腕力等)の共認に立脚していないので、中東や欧州等の生存条件が過酷で収奪の激しい世界では救い欠乏⇒宗教共認力へ収束し、その強く広い共認力が力の共認(国家)を上回り、イスラム社会が武力国家を上回る(王権を上回る)という力関係が形成されたのでした。

これらを見ると、略奪闘争の時代も武力支配の時代も、力そのものが観念共認力に規定されています。秩序崩壊に近い当時のイスラム社会では、力の共認よりも大衆的な宗教共認力が上回ったことがわかります。
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社会を統合するということは、社会を秩序化することです。特に、顔の見えない肥大集団を統合するのは、情報=観念以外になく、逆に言えば、人々を結びつけ、社会を成り立たせている本体は、観念の共認であると考えます。
イスラム社会では、宗教(観念共認)が国家(力の序列原理による共認)を上回る力をつけるようになったのは、

本源集団の残存⇒現実直視の規範⇒武力国家形成前の宗教成立⇒追求過程や場の形成⇒知識階級の導きと組織化⇒交易ネットワークに載せた観念共認

という統合の歴史です。全闘争・生殖課題を直視する観念内容が、国家を上回り、人々をひきつけた理由と考えます。

私たちが、イスラム社会から学ぶべきところは何か?日本人は本源性が高いが、属国意識が強く、闘争課題を捨象する傾向があるといわれます。この闘争課題そのものは社会課題であり、新しい社会を作っていくうえで観念共認の形成の仕方は、イスラム社会から学ぶべきところですね。

以上、このシリーズのご精読、ありがとうございました。
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投稿者 katsuragi : 2014年11月29日 List  

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コメント

宗教が国家を上回っているのは、イスラム諸国のどこの国も同じこと。
そして、どの国も宗教を統治の手段として利用している。
中国でさえ、共産党という政治的宗教を信奉しているというわけです。

投稿者 根保孝栄・石塚邦男 : 2015年4月9日 10:44

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