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2015年01月06日

大共同体「東南アジア」を支えるシステム~成熟した共認圧力の社会 インドネシア・ジャワ島 世界

半島部東南アジア(タイ、ミャンマー)、海洋部東南アジア(マレーシア、インドネシア)と紹介してきました。シリーズ5回目です。

今回は海洋部の東南アジアの中に会って際立った特質をもつ「ジャワ世界」について紹介します。ジャワ世界とは、インドネシアの中の「ジャワ島」「バリ島」「ロンボク島」を言います。

東南アジア全体が共同体的な社会でありますが、それは私権社会に侵される以前の共同体社会の性格を色濃く残しているという点にあります。

その中にあって、ジャワ世界は単に古くからの共同体的資質を残しているというだけでなく、独特の共認(圧力)社会を発達させてきたという点で周囲の海域インドネシア地域とは明らかに異なる社会を構築しています。

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●豊かな東南アジアの中でも飛びぬけて豊かなジャワ世界

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ジャワ、バリ、ロンボクの三島は赤道直下の火山島です。赤道直下の火山島は人間の利用にとって都合の良い3つの特徴を持っており、第一は良好な衛生環境であり、第2は肥沃な土壌、第3は豊富な水です。

まず、赤道の近くにありながら、ここが健康地とだという点です。この地も海岸付近の低地は海域東南アジア世界と同じようにやはりジメジメとし細菌が繁殖しやすく居住しにくい土地なのですが、数百メートルも火山山腹を登っていくと、風が吹き通り、湿潤地帯の蒸し暑くてジメジメとした環境の外に出てしまいます。これはこの火山島の衛生環境が良い理由です。

次に、火山灰は有機物を多く含み肥沃な土地を作ります。降灰は肥料が降ってくるのに似た効果があり、新鮮な火山灰の上だと、無肥料で何年も、時には何十年も続けて耕作できる、それだけの地力があるのです。

そして、水です。明瞭な乾季があり、乾燥の目立つ3島ですが、そのわりに水利に恵まれています。それは高峰のおかげであり、そびえたつ火山は2000メートルを越し、多くは3000メートルに達していて、これらの火山峰の頂上部は積雪など大貯水タンクとなっています。

ここちよいそよ風、肥沃な土壌、豊かな水を持ったジャワ世界の火山島はこうして、周囲の海洋東南アジアの中にあってキラリと光る宝石のような存在となっています。飛びぬけて豊かな農業社会を形成しているのです。

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●ジャワの成熟した農村文明

19世紀には海域東南アジアでは、まだ熱帯雨林が手付かずの自然な状態にありましたが、そのときにもジャワ世界だけは極めて豊かで成熟した農村風景を見せていました。植え付け直後に行くとどの田にも水が張られていて、まるで湖が広がるような風景となっています。その中に緑の屋敷林に囲まれた村々が点在している。収穫期に行くと、この稲田の前面が黄金色の絨毯に変わっており、その中の屋敷林の緑の島が散らばっています。この田園風景が山ろくから中腹までずっと広がっているのです。

すでにボロブドゥル壁画の中に落ち着いた農村風景画描かれているから、9~10世紀にはできていたのではないでしょうか。

田に多くの人が出て、ある人は犂おこし、別のところでは何人かが横に並んで田植えをしています。収穫期になって穂がたわわになると今度は女たちがグループになって穂摘みをやっている。澄み渡った空の下で楽しそうに穂づみする姿は豊かさそのものです。

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●発達した共認圧力の社会

このように豊かな自然環境を基盤に発達した農耕社会を発達させたジャワ世界ですが、ある意味必然の帰結として、社会構造も、周囲の世界とは明らかに異なる特質を持っていました。

ジャワ文明は内容が豊富で奥深い。サワン(影絵芝居)に代表されるような広い裾野を持った芸術群、極度に洗練された宮廷儀礼。

それ以前に上記の農村風景にも文明の重みがどしりと感じられる。

そしてなにより注目すべきは、彼らが形成している規範意識(≒共認圧力)の高さです。

ジャワ人は非常に礼儀正しくそれは言葉遣いに現れている。ジャワ島には非常に複雑な敬語体系が構築されているといいます。相手と対面したとき、まず何よりも大切なことは、その人と自分の関係を的確に捉えられることだといいます。相手は敬語を用いなければ生らない相手か、どの程度の敬語か、相手によって用いるべき敬語の種類が違うといいます。言葉だけでなく生活のあらゆる分野に渡って、上下関係の確認が厳密に行われています。

目上の人には決して露な反抗はしない。あるいは大勢が右に傾いているときは敢えて左とは主張しないといった一種の自己抑制である。敬語と表現と同様秩序の維持のために要求される大きな約束ごとです。(こういう話を聞いていると京都人の話を聞いているようですが、、)

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以上、やや私権的な色彩の規範群の側面を書きましたが、豊かな社会の上に、非常に高い規範意識≒共認圧力が形成されているという点(それと共に、それらを包摂する大きな観念体系も持っている)が、周囲の海洋部東南アジアに対して際立った特徴をなしています。

これは日本の文化にも通じるものが多分にあると思われます。また、豊かさを実現し私権圧力の低下した社会の次なる活力源という意味でも、大きな方向性を手繰る上で非常に参考になると思われます。(もちろん、現代もとめられる共認圧力は単なる秩序維持のためのための規範圧力というのとはまったく違いますが、、、)

以上、ジャワ世界は、周囲の東南アジア海洋地域とくれべても非常に豊かな世界(火山島ゆえ、衛生環境がいい、火山灰が肥料、水が豊富)であり、おそらく生存圧力の低下から、共認圧力を高める方向で可能性収束したことを見てきました。次回もう少し突っ込んで、日本との比較しながら、独自の圧力世界を構築した背景を追及します。

投稿者 tanog : 2015年01月06日 List  

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