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2011年07月12日
日本の支配階級の意識構造を解明する ~極東アジアの支配の歴史3 朝鮮儒教の特殊性
前回は、現代韓国事情を通して、日本とはまた違った朝鮮半島特有の意識構造があるのではないか。という切り口が見えてきました。
同じ極東アジアにありながら、日本と韓国では共通する部分と異なる部分が支配階級にも、一般の人の意識にもどこかあるようにおもいます。この違いは、小中華思想、儒教の影響の強さなど、韓国特有の意識構造があるのかもしれません。
日本の支配階級の意識構造を解明する ~極東アジアの支配の歴史2 現代韓国事情
今日は、朝鮮儒教を切り口に、朝鮮半島特有の意識構造に迫ってみたいと思います^^
◆1000ウォン札(約75円)
李滉(り こう) 1501年 – 1570年
李氏朝鮮の儒学者。
明朝で盛んになった陽明学を退け、あくまで朱子学を尊重した
写真はこのサイトよりお借りしました
応援よろしくです!
byさーね
現代韓国では、儒教とキリスト教が半々と言われていますが、元々は中国で生まれた儒教の国です。まず、儒教の特徴を挙げてみましょう。
儒教は、五常(仁、義、礼、智、信)という徳性を拡充することにより五倫(父子、君臣、夫婦、長幼、朋友)関係を維持することを教える。
1「無神教」
儒教は「神」を措定し、信仰する宗教ではない。(神の存在を肯定するわけでも、否定するわけでもないし、その存在に言及するわけでもないので、「無神教」と言うのも適切ではない。ただし「天意」と言う表現は出てくるので唯物論でもない)
2「祖霊信仰」
儒教は、孔子誕生以前の時代から存在している、死後の世界と交信する「巫女」(冠婚葬祭などの儀式を行う専門集団)を基に、そこから祖先信仰の要素だけを取り出して観念化した宗教である。
3「家観念(父系観念)=序列観念」儒教の教え(理想とする道徳)の基礎には、祖霊信仰に根ざした、「家観念」が存在している。「家観念」の中心軸を成すのは、父子関係であり、この「家観念」は父系観念・父系規範とも言える。
この家観念は、あらゆる序列関係に広げて適用され、五倫(父子、君臣、夫婦、長幼、朋友)関係における序列秩序の維持が重要視されている。
4「本源”風”規範」
本源”風”規範(本質は序列規範)に基づいた5常(徳性)を広げることを教える。・仁・義・礼・智・信古代宗教の特色比較4 儒教
序列原理に貫かれた観念と言って良いでしょう。一方、朝鮮半島で、儒教が国教となったのが李氏朝鮮時代です。宗教自体が国の様々な制度化に繋がっていることから、儒教の浸透度はかなり強固なものだったことがわかります。
□李氏朝鮮の家族制度
李氏朝鮮の社会の単位は個人ではなく家族であり、李氏朝鮮の社会は家族を中心に形成運営されて来た。李氏朝鮮時代の家父長的家族制度は、政教の根本理念に採択された儒教でさらに厳格に統制され、生活の規範と儀式は全て儒教の教えによることを強要された。
李氏朝鮮時代の家長の権利は、高麗の時よりももっと強化された。たとえば、子孫・妻妾・奴婢が、謀反・反逆以外の罪状で父母や家長を官庁に告訴すると、かえって告訴した者の方が極刑を受ける事になっていた。更に仁祖の時には、家長の反逆陰謀を告発しても、人倫を害する罪は反逆罪に劣らず重いと言って、先に死刑させた事まであった。李氏朝鮮時代には、綱常罪に対しても反逆罪と同等に厳重に扱った。これと反対に、尊長に対する絶対服従と犠牲精神から湧き出る孝行や貞烈は、国家で大きく奨励したのは当然の事だった。このようにその権威を国家から保証を受ける家長は、内では、先祖の祭祀を主宰し、家庭の管理、家族の扶養、分家や養子縁組、子女の婚姻・教育・懲戒・売買などに関する全権を持って家族成員を統率した。また、外では民間の契約は家長の署名なしには成立しなかったし、官庁でも家長を相手に全ての事を処理した。
ウィキペディア
□李氏朝鮮の身分制度
李氏朝鮮の社会の身分階級は、学者によって分類が違うこともあるが、一般的に両班・中人・常人・賎人の4つに大別されている。このような体制は、高麗の時から伝わる社会的な伝統の上に土台を置いたもので、李氏朝鮮の集権的な政治体制の確立及び制度の整備とともに次第に固まっていった。すなわち、李氏朝鮮の新興貴族たちは高麗の貴族の代わりに支配階級に成長しながら両班階級を形成したが、一方、それに属せなかった人々は中人階級に残るようになった。
被支配階級には相変らず常人・賎人がいたし、これらと両班の間に、一定の世襲的な職業を持つことで1つの階層に固定された中人という特殊な身分階級が生ずるようになった。しかし厳密に明らかにして見れば、同じ身分層にもさまざまな差等があっただけでなく、階級と階級の境界を定めるにも曖昧な場合が多かった。ウィキペディア
こうして、儒教と朝鮮半島への影響を見ていくと、元々序列観念に貫かれた儒教が、家族制度にまで強固に浸透したこと。一方で、身分制度は曖昧なところがあること。以上がポイントになりそうです。人々がどのような意識構造に至るか、図解にしてみました。
国教:儒教=序列観念
↓ ↓
↓ ↓
↓ ↓
強固な家長権力 身分制度(科挙)
∥ ∥
∨ ∨
家の利益獲得⇒⇒⇒身分をつくりだす
賄賂・汚職等々
強固な序列観念の上に、末端に至る家族制度まで固定されることによって、人々は抜け道をひたすら探索する意識に至ったのではないかと考えられます。それが、様々な身分制度(約40階級あるとも言われている)をつくりだし、現代韓国事情で紹介されている賄賂や汚職等々、常に利益を獲得する意識に繋がっていったのではないでしょうか。
このような意識構造は、大きく李氏朝鮮時代に形成されたと考えられますが、ではそれ以前の古朝鮮や三韓の時代はどうだったのでしょうか。次回は、さらに歴史の奥深く…探究していきたいと思います♪
<参考投稿>
古代宗教の特色比較4 儒教
日本の儒教 韓国の儒教
超国家・超市場論9 私権闘争の抜け道が、交換取引の場=市場である
投稿者 sawatan : 2011年07月12日 TweetList
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コメント
投稿者 tano : 2012年2月20日 12:46
ちょうど大河ドラマで宗船が登場していました。清盛が貿易に興味を持っているシーンがありましたが、庶民の文化が開花した元気な風を感じたのでしょうね。戦争にエネルギーを使わない時代は、豊かな時代を作るチャンス!
投稿者 風雅こまち : 2012年3月4日 18:34
宋の解明を見事にされていると思います。
なるほど、中国には華北の歴史と華南の歴史がある。
それを一つの中国としてつないだのは遊牧民かもしれませんが、華南の文化は宋以降、中国の中心に躍り出たのだと思います。
宋は戦争を経済的なやりとりで避けたというのもいかにもこの長江由来の南の文化が農耕民的であることを示しています。
この記事には書かれていませんが、後の明はまさにこの南の中華文明が開化し、貿易、文化とも宋を引き継いだ時代になっていきます。