縄文再考:縄文人のルーツ②~日本人のルーツをDNAの塩基配列から考える~ |
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2021年10月01日
縄文再考:縄文土器の変遷からみる、縄文時代の外圧と追求思考
皆さん、こんにちは。
先日、「縄文土器にみる、縄文人の外圧と生命観」という記事で、縄文土器について以下のように分析しました。
①縄文土器は、厳しい外圧を生き抜くために生まれた
②1万年間の自然の注視、自然との一体化が現代人をも魅了する美しさをつくった
③集団間の応合によって、さらなる表現(模様・形状)の高度化へと至った
今回は、1万年という長い縄文時代の中で、縄文土器の用途、形状、模様が、どのように変化していったのか、より生々しく抑えることで、前回の仮説を塗り重ねていきたいと思います。
※縄文土器の変化の大きさから、著しく技術力が向上していると過剰に評価されることがありますが、あくまで「1万年」という、長い長い期間の中での変化であることを踏まえる必要があります
知っての通り、縄文時代は大きく6つの期(草創期/早期/前期/中期/後期/晩期)に分かれます。
草創期 約12,000~9,500年前(2,500年)
早 期 約9,500~6,000年前(3,500年) 人口2万人
前 期 約6,000~5,000年前(1,000年) 人口11万人
中 期 約5,000~4,000年前(1,000年) 人口26万人
後 期 約4,000~3,000年前(1,000年) 人口16万人
晩 期 約3,000~2,300年前(700年) 人口8万人
時代の中で、模様・形状が変化しているが、単に技術力・表現力が向上していることによる変化ではなく、その背景が時代ごとに異なっているのが重要なポイント。
時代ごとの大まかな特徴をまとめてみます(全体図解も載せているのでぜひ確認してみてください!)。
<草創期>
・平底、丸底のものが主流
・模様は非常に単純なものがとなっている
・器形は深鉢のものがほとんどで、用途は煮炊き用
<早期>
・器形は大きく変わらず深鉢で、用途も煮炊き用
・底の尖り、火の回りが良いとされる尖底土器が主流に(煮炊き用としての品質向上)
・文様や形状(様式)に地域的な特色がみられはじめる
⇒定住化により、生活品としての高度化が最大の目的であったことが考えられる
⇒また、地域ごとの様式がみられることから、一定範囲内に生活する諸集団の関係が生まれ始めたと考えられる
<前期>
・器形に浅鉢が加わる
・底部は尖底から丸底・平底にもどる
・円や曲線が多用された文様がみられはじめる
・技法・形状として地域的特色がより強く現れはじめる
⇒東日本の繊維混入、関東の羽状縄文、東北の円筒など、より広く技法が広がっていること、人工が11万へ増加していることから、より広範囲での諸集団の関係が生まれていたことが考えられる
<中期>
・人体や自然にある曲線を多用した立体的な造形が目立つ
・様式の多様化が著しい(火焔、水煙、大木、阿玉大…他)
・食物の調理以外にも、埋葬道具、火鉢、甕などとしても使用され始める
⇒「実用性とは程遠い造形、様式が統一ではなく多様化に向かったこと」と「縄文時代最大の人口26万人」を考えると、やはり集団間の贈与品として高度化されたことが考えられる
⇒そのなかで、自然や人にみられる曲線、立体感を表現として取り入れたことが、縄文人の精神性を示していると思われる
<後期>
・器形が著しく多様化する(注口、台付き鉢、壺、香炉形など)
・器壁の厚さも薄く、より実用性を向上させるための技術高度化がみられる
・文様が研磨により磨り消された磨消縄文が流行、光沢による高い装飾性がみられる
⇒人口が減少しはじめるなか、贈与品よりも、実用品としての高度化が重視されるようになったと考えられる
<晩期>
・文様は規則的かつ流麗になり、丁寧な磨きによる光沢がみられる
・形状はさらに多様化し、大きさも小さいものが増え、精巧なものが多い
・後半では、直線的文様が増え、現代的な表現に近づいていく
⇒さらなる人口減少の中、大きな流れは後期と変わらず、より実用品としての高度化が進んだと考えられる
↓土器変遷のまとめ
こうしてみると、やはり特筆すべきは「中期」における土器の進化。
実用品としての合理的な形状・装飾性の追求ではなく、集団間の緊張感を和らげる(相手集団に喜んでもらう)ための追求が塗り重ねられている背景。
その切り口として、人や自然を注視し、まねることで、価値を高めていたこと。それが、現代人さえも惹きつける美しさに繋がっていること。
これらは、豊かさが実現し、消費者さえも、なにを求め、なにが付加価値になるのかわからない現代において、重要な視点になりえるのではないでしょうか。
今後は、この中期縄文土器に注目して、文様の意味、物語、そこに価値を見出す縄文の価値観の分析をさらに深めていきたいと思います。
投稿者 sibata-h : 2021年10月01日 TweetList
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