縄文再考;人骨一覧 縄文人だけではない!? |
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2021年10月15日
【縄文再考】縄文時代の外圧を動的につかむ①~縄文時代が世界に先駆けた理由とは?
この間、【縄文再考】シリーズでは、縄文の土器・土偶・集落などを追求しています。
生活技術や集団規模の変化をつかむことで、縄文人の技術・精神性を深くつかむことができると考えていますが、その変化を生み出した要因は何でしょうか。縄文時代を考える上で何よりも大事なことが、外圧をつかむことです。
当ブログでもこれまで、縄文の外圧を追求してきました。気候や海水レベルなど、それぞれで切り口が出されていますが、それらを包括した分析がまだまだ十分ではありません。
というのも、縄文時代といっても、各時代時代の外圧は異なること。大陸の影響を受けていること。そして、東日本と西日本でも状況が変わってきます。
現実は教科書と違い、刻一刻と変わる外圧が複層的に絡み合います。そこで、当ブログの過去の蓄積を活かしながら、最新の研究成果も織り交ぜて、縄文時代の外圧を「動的」に追求していきます!
(過去の記事)
外圧と一言にいっても、様々な視点があります。
①気候/②海水レベル/③植生/④大陸の動き
①~③は自然外圧であり、④は集団外圧(同類圧力)です。これらの外圧の変化が、生産様式の変化、生活技術・精神性の変化、社会構造・人口動態の変化につながっています。
本日は、①の気候変動から、なぜ縄文時代が世界で先駆けたのかを追求していきます。
1.なぜ縄文時代が世界に先駆けたのか
縄文時代を特徴づける縄文土器は、世界最古といわれています。これ自体は誇らしいことですが、最新の研究では世界最古の土器は中国湖南省の玉蟾岩(ユチャンヤン)洞穴から出土した土器といわれ、約1.8万年前と言われています。縄文土器で最古のものは青森県大平山元I遺跡の土器で約1.6万年前と言われています。
土器は大陸由来のものか気になる所ですが、北方ルート・朝鮮ルートで伝播した痕跡が現時点ではないため、世界に先駆けて、中国と日本が別々で土器を発明した説が有力です。
このことを世界史レベルでみると、どうとらえれば良いのでしょうか。
そこに気候変動が大きく影響しています。
気候変動の推計は誤差があります。放射性同位体C14の半減期(5730年)による分析は精度として±100年(約200年)の誤差がありました。しかし、近年は年縞(湖底堆積物)を使った調査により、1年レベルで気候の変化を把握することが可能です。
その分析を踏まえてわかったことが、世界とアジアの気候変動の時差です。
約1.5万年前、地球は最終氷期を終え、間氷期を迎えます。世界レベルで大きな気候変動が起きましたが、年縞を使って日本と世界各地のものを比較すると、日本列島から長江流域にかけてのモンスーンアジアが世界の中で、最も早く温暖化の影響を受けるところだということがわかってきました。ヨーロッパなどは14500年位前、つまり日本よりも500年くらい遅れて温暖化の影響が出たのです。
図の引用元 旧石器時代の教科書 (palaeolithic.jp)
つまり、長江流域から日本列島を含めた地域が、世界に先駆けて地球温暖化の影響を受けたのです(注1)。地球温暖化の影響をもっとも激しく受けたため、生態系に変化が起き、その新たな生態系に適応するために土器などの生活技術が進化したのです。
地球温暖化のさきがけとなった、中国長江地域と日本列島。いち早く大きな生態系の変化を受け、先端可能性を追い求めたのが縄文人なのです。
次回も気候変動と縄文を追求していきます。
(注1)近年の気候学の調査では、気候変動の引き金は、海、とりわけ太平洋にあるということが判ってきました。海水温が変わることで、地球の気候が変わっていくという説です。
参考文献:
「縄文時代の歴史」(山田康弘著)
「文明の環境史観」(安田喜憲著)
環境考古学からみた北海道の未来(安田喜憲)
投稿者 ando-tai : 2021年10月15日 TweetList
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