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2022年09月22日

【縄文再考】最新研究から、縄文と大陸文化、多様性

皆さん、こんにちは。縄文~弥生~古墳時代へとやや大ぐくりにして日本人の期限を追究してきましたが、今回は、今年の2月に中公新書より刊行された篠田謙一国立科学博物館館長の『人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』をご紹介しながらさらに追究したいと思います。

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篠田館長「ゲノムの違いの意味するもの」

以下「人類の起源」より引用します。

「ゲノムデータから集団同士の違いを見ていく際には、同じ集団の中に見られる遺伝子の変異の方が他の集団との間の違いより大きい、と言うことも知っておく必要があります。
本書では集団の期限や関係について調べる目的で、集団間の違いを見てきましたが、それはこのような研究には有効ですが、それ以上の意味はありません。図8-3は世界の各地域の集団から、同じ集団に属する人を二名ずつ選び、それぞれの個人で50万種類のSNPを調べて、系統樹を作成したものです。
枝の長さは遺伝的な差異、具体的には塩基配列の違いの程度に比例しています。どの集団でも同じ集団に属する二人が共通の祖先に至る枝は長く、それに比べて集団同士の間の違いは、中央の部分にとどまっていて、相対的に短いことが分かるでしょう。」

「人類の起源」P258より

要するに日本人二人と中国人二人のそれぞれは、各人ごとに同じくらい違うが、集団的には同じ。その日本人と中国人が所属する「集団」は、トンガ人とは少し違うし、ヨーロッパ人とはもっと違う、と言うことです。

今まで見た目になんとなくそう思っていたのと、結局大差ないことがDNA解析から分かった、と言う幾分拍子抜けの話です。良く分からないのは、個人差が大きいのに集団としては同じとみなすこと。解説がありませんが、集団的な違いの根拠とする遺伝子(DNA二重らせん)は、ごく一部に限られていると思います。なら「(個人差より)違いが少ない」との結果が出るのは当然です。

それよりむしろ重要なことは、日本人と中国人は人類集団としては「同じ」とされていることです。

縄文時代の集団的多様性

同書よりもう一か所引用します。

「双方のハプログループの分布を見ると、N9bの系統が東日本から北海道にかけての地域で多数を占めるのに対し、M7aの系統は西日本から琉球列島で多数になるという、東西の地域差が認められています。」
「同じM7aの系統でも西日本に分布するもののほうが成立年代が古く、東に行くほど新しくなることもわかったのです。そこから、この系統は中国大陸の南部沿岸地域から西日本に侵入して東へ向かったと推測されています。」
「縄文人が旧石器時代にさまざまな地域から入ってきた集団によって形成されたという事実です。縄文人のDNA分析によって、およそ一万三000年のあいだ続いたこの時代には、列島に均一の集団が居住していたのではなく、私たちが想像する以上に集団の多様性に富んでいたことが明らかになりつつあります。列島の内部では、地域によって遺伝的に異なる多数の集団が居住していたようです。地域間の人的交流は限られ、広範囲に及ぶものではなかったでしょう。」

先の日本人と中国人が「集団として同じ」ことと縄文時代前後の列島内に多様な集団がいたことをどう説明すればよいでしょうか。

一つ考えられるのは、縄文時代の前後、大陸と日本列島の間を往来する人々が居たということです。

大陸紅山文化と縄文~日本人の基層はどこ?

かつて古代中国の紅山文明との親近性に関し、以下の通り追求しました。

火焔式土器は、中国紅山文化が影響?

【縄文再考】大陸と縄文~縄文前期から列島と大陸は関わり合い、日本海を囲む文化圏があった

【縄文再考】大陸と縄文②~日本海の海流に乗って大陸から文化が届き、列島産・黒曜石は海を渡って大陸に広がった

【縄文再考】大陸と縄文③~縄文・長江文化の底流にある精神とは?

中国と同じ集団と言うゲノム解析の結果と合致します。しかし、これら大陸の影響を受けた人々以外にも縄文時代には他に多様な集団かあった、と言うのが先の引用です。

弥生時代の稲作も朝鮮半島の西に向かい合う中国山東半島。古墳時代では古墳を創り、その後記紀の史書を起こす所謂「統合階級」が国家を形成します。一方、琉球やアイヌには未だ縄文文化が残りゲノム解析の結果も列島中央部と異なるなど、中国寄りの文化に傾倒する人々と、先住民の棲み分けが見られます。

結局「日本人」が、どのようにして形成されたかは、一民族に限った出自の問題ではなく、その後の日本の歴史の分析に答えがあるように思います。

投稿者 sai-yu : 2022年09月22日 List  

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