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2021年11月19日

【縄文再考】定住化に向かった縄文人。自然サイクルから栽培等を見出し生産力増⇒人口増⇒集団内の役割と統合を強化

みなさんこんにちは!

前回は縄文の時代ごとに洞窟から竪穴住居への変化について辿ってきました。(→リンク

今週は定住化した縄文人の生業と集落の形成過程から、集団をどのように形成していったか、その背後の構造に迫っていきたいと思います!

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(1)定住化に舵を切った縄文人、自然のサイクルと共生する道を選んだ

 約1.5万年以上前の旧石器時代、日本列島で定住生活を始める前の縄文人の祖先達は、遊動生活を送っていたと考えられます。

 

富山市考古資料館の講師、藤田富士夫氏は当時遊動生活を送っていた理由を以下のように述べています。(https://www2.tkc.pref.toyama.jp/contents/furusato/tvkouza/98sumai/t98-1.html

>旧石器時代は造山運動による火山活動が盛んで、氷河期であった。このような厳しい環境に生きた旧石器時代人は、動物を追い求めるハンターで、遊動生活をおくっていた<

 

当時は氷河期で、食べ物(山菜や木の実、魚貝類etc…)がふんだんにとれる環境ではなく、食料を追い求めて、持ち運び可能な簡易的な住まい等で生活していました。

 

ところが、約1万年前に氷河期から間氷期に変わり、温暖化したことでドングリ等の植生が豊かになりました。陸の栄養が川から海に流れ、プランクトンが増殖。魚が集まる豊かな漁場が形成されました。

 

これまで食べ物を求めて狩猟・採集していた縄文人でしたが、変わりゆく森や海を注視する中で、豊かな自然とその背後の自然の摂理(サイクル)を見出し、自分たちの生業(生産)に活かしました。

 

 

縄文前期の彦崎貝塚(約6000年前)ではイネ・ヒエ等の栽培の痕跡が発見され、その他の地域でもクルミ・クリの栽培、魚を加工した形跡が残っています。

つまり、自然の営みに支えられながら、縄文人は自然のサイクルとともに共生して生きる定住生活へと次第に定着していったと考えられます。

 

生産力の上昇を基盤に定住化した縄文人は安定した生活を営み、人口増加。それに伴う集団のつくり方(秩序)が課題になっていったと推測できます。

 

集団規模が大きくなる(複層社会)中で、集団内の役割をつくる必要になり、個別の世帯単位だった旧石器時代から複数の世帯が統合され集団形成に向かったと考えられます。

 

(2) 環状集落から見る集団形態

縄文時代の前期の環状集落の配置から、集団形成へ向かう変遷を考察することができます。

 

縄文前期の環状集落は中心に広場や集団墓等の拠点となる場を配置し、そのまわりに住居を環状または弧状に配置しています。集団関係の結節点となる機能的な中心地が出現しました。

考古学者の谷口康浩氏は集団墓の造営について、

>前期中葉に見られる多様さは一面では分子(世帯単位)を一つの中心(環)に統合しようとする組織的な動きを示しているのである…集団墓の造営を核としてそれらを求心的に統合する組織が出現した<(https://www.teikyo-u.ac.jp/bunkazai/wp-content/uploads/2020/12/3Taniguchi2004.pdf )と述べています。

 

古代の集落論の研究者である和島誠一氏は環状集落が持つ中央広場を「大規模な集団統合の要」とし、縄文時代になぜ共同体として集団化したのかを以下のように考察しています。

 

>環濠集落の成立を海進期の環境の変化とそれに適応する社会組織の変化として位置づけ、生産力の増大を図るために共同体がその規模を拡大させたものと理解した<

 

自然の豊かさと共生しながら複数の集団(世帯)が統合され、生産性の増大や高度化のために集団の拡大と役割の高度化がされていったことが分かります。

 

(3) 生産性を超えて共同体として生きること

そこでひとつ疑問が…。

生産性や労働力のためだけに集団規模を拡大していったのでしょうか?

前段で述べたように環状集落の中心には広場だけでなく“集団墓”が存在し、集落の拠点=中心にあるということは、

 

死者を弔い、祖先を敬う精神は、時空を超えて“仲間”や“思い”を継承していきたいという、共同体の深いつながりがあるように思えます。定住化・集団形成の高度化は、生産だけでなく、生活も含めた共同体として生きていくことを確固たるものにしたのでしょう

 

次回は墓や埋葬方式から共同体として生きる縄文人の集団形態についてもっと深掘りしていきます!

投稿者 hanada : 2021年11月19日 List  

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