2022年2月17日
2022年02月17日
―縄文再考― 縄文土偶の謎に迫る~土偶の使い道~
過去いくつかの記事を書いてきましたが、最終的には「祈りの道具」という結論に至りました。
が、縄文土偶は弥生時代に入りほとんど製作されなくなりました。
つまり、創る必要がなくなったと言えます。
では、縄文時代に土偶が創られたのはなぜか?本当に「祈りの道具」(だけ)のためなのか?
「祈りの道具」であることは可能性として高い(―縄文再考- 土偶は祈りの道具であり、精神性そのもの。注視し感謝し、そして「種を残す」第一義の集団課題へ立ち向かっているのです。 – 縄文と古代文明を探求しよう! 、)。ですが、おそらく別の用途があったと思われる。
今回は縄文土偶の使い道について追求していきます。
■縄文土偶の謎
土偶の本当の使い道を追求するにあたり、今考えられる土偶の謎を列挙します。
- 用途が不鮮明(考古学者、作家などのあらゆる仮説からも使い方が分からない)
- 中期、後期、晩期で盛んに作られている。それもすべての時期において立派なものが出土している。
- 技術力の必要な中空化、華美な装飾を行っている。→中空化は軽量化になるがなぜか?華美(施しの工夫)にするのは祈りを強めるため?
- 人口に関係なく大小様々な土偶が数多く存在すること→なぜそんなに作る必要があったのか?
これほどまでに追求されている土偶が「祈りの道具」(だけ)というのは素直に”なるほど”とは言えない。
■縄文時代から弥生時代で何が変化した?
弥生時代に入り、土偶がほとんど創られなくなりましたが、時代が移ろいでいく中での変化によるものの可能性が高いです。
縄文時代から弥生時代に入り大きく変化したのは、
- 母系社会から父系社会への転換
- 狩猟採集(一部栽培)→稲作への転換
- 稲作によって、自然の所有化が始まる
この三つに大きな要因があると推測します。
■母系社会から父系社会に転換したのはなぜか?
縄文時代は女優位と言われています。母系で集落を支えていました。
採取・子育て・土器を用いた煮炊きなど、集落に纏わる安定部分のほとんどを女が担っていました。これが女優位の理由です。
※女優位なのは明確で、男は狩猟が主。獲物を捕獲できないことも多かったです。ゆえに不安定で、女に生活を”支えてもらっていた”。
上記から、女が他集落に嫁入りすることは考えにくい。つまり基本は他集落の男が婿入り(外婚)する形式となります(血縁間での出産リスクの知恵もあった)。
弥生時代は渡来人からの技術の伝承で稲作が始まります。力仕事もあるので男女で行います(男女一対の土偶はこれが表現されている)。
稲作に顕著ですが、土地を集落の所有物として位置づけます。ですが、水は川などから引いてきます。つまり他集落と共有することになり、水を巡った争いや、土地の所有権を巡った争いが起きます。
所有物がなくなれば集落の食料は確保できないため、これを守ることが重要な課題になります。女よりも男の方が力が強いこともあり、闘争圧力は男に集中します。集落の安定は男の課題になり、男優位つまり父系社会(男が集落に残る)になります。
■母系社会である縄文時代の男はいつでも外に出れた(他集落へ)のか?
【縄文再考】縄文人は「女の家」「男の家」「若者の家」とすみ分け、社会的分業を高度化し自生力を高めた – 縄文と古代文明を探求しよう! でも論じたように、男は集落のために闘い(狩猟)、武器づくりや罠作りなどに励み、若者は男(成人)に学び、自生力を身に着けていきます。
そんな男ですが、いつでも自由に集落を出ていくというのは限りなく考えにくいと私は思います。”女”に認めらた男が他集落へ行きます。
■女は男の何を認めるのか?
男は若者時に自生力を身に着けて行きますが、決して自分が生き抜くためではありません。共同体を生かす力です。自生力を磨く中で集落を生かす意識(共同体肉体度)を高めていきます。
ただ、男と女は自然を所有化せず、自然に生かされています。そして男は女に生かされています。だからこそ男は、自然への注視・一体化、感謝、女への畏敬の念、安産を祈りとして土偶に込めたのです。外圧が変化するにつれて、祈りの対象を変えているのも共同体肉体度があるが故です(好きなものを作っているわけではない)。集落に対して強い思いがあるほど、祈りの度合いも強い。それが土偶が華美な理由です。
―縄文再考- 土偶は祈りの道具であり、精神性そのもの。注視し感謝し、そして「種を残す」第一義の集団課題へ立ち向かっているのです。 – 縄文と古代文明を探求しよう!
そして、女は男の共同体肉体度と集団を生かす力を評価したと考えられる。
その一要素として共同体肉体度が現れる土偶があったのではないでしょうか?
結果としてそれが一人前の証として扱われていったのです。
■一人前の証としての土偶
集落を後にした男は、他集落に着くや、土偶を見せ、自分が一人前として認めてもらったことを証明するのです。土偶の出来栄えで男の器を計るのです。そうして受入れてもらい、外婚が成立する。
(他集落も誰でも受け入れる訳にはいかない。共同体肉体度がない勝手な男は危ない。)
中期、後期、晩期で常に立派な土偶が出土している理由は、この一人前の証としての土偶にあります。数多くの土偶が創られたのも、持ち運ぶことも考慮して、中空化による軽量の工夫が施されたのも他集落への一人前の証として持ち運ぶ必要があったかと
考えられる(置くだけなら中空化する理由にはならない)。
■まとめ
・土偶は「自然に生かされている」「女に生かされている」感謝からくる「共同体肉体度が高さ」が表出した「祈りの道具」。
・女は「共同体肉体度」と「自生力(集落を生かす力」を評価し、「一人前の証」として土偶を位置づけた。
※男は一人前になりたいがために土偶を創るわけではない
・他集落へ移る際に、「一人前の証となる土偶」があることで認められ、新しい集落の一員になれる。
投稿者 matudai : 2022年02月17日 Tweet
2022年02月17日
【縄文再考】縄文文明の原理を探求する①~縄文の8つの文明原理
この間、【縄文再考】シリーズを追求してきました。
「これまでの縄文観を覆す、新たな事実が見つかってきた」にある通り、最新の調査・研究により、これまでの縄文観を覆す、新たな事実も見つかってきました。
その上で、当ブログの過去の蓄積と新事実を重ねながら、1万年以上続いた縄文文明の興隆と弥生への移行を通じて、縄文とはどのような時代なのか。縄文文明を通じて、自然と文明との関わり、人類のあるべき姿などを模索していきたいと思います。
当ブログでは、過去に環境考古学の大家である安田喜憲さんの本「縄文文明の環境」をご紹介しました。
この本で記載されている、「縄文の8つの文明原理」を手がかかりに、追求を開始していきます。
投稿者 ando-tai : 2022年02月17日 Tweet