【縄文2021】~縄文に立つ東京。東京の島嶼部で見つかる縄文の痕跡 |
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2021年11月12日
【縄文再考】命への感謝と再生への願いが込められた縄文土器文様
皆さん、こんにちわ!
先日掲載した縄文土器シリーズでは、中期縄文土器を照準を絞って分析し「自然の注視・一体化が収束軸であり、それが美しさを形作っているのではないか」という仮説を以下のような特色から考察しました。
①自然にある曲線を多用した立体的な造形が目立つ
②単調な文様の繰り返しではなく渦巻やS字や逆U字などの組み合わせた複雑文様であること
③全く同じ組み合わせはない
そうしたなか、先日、江戸東京博物館の特別展「縄文2021ー東京に生きた縄文人ー」で縄文土器を眺めていると…どの面も文様が微妙に異なりつつも、集合体としての一体感、そこから生命観(生きているような力強さ)が感じられたのです。←実際に土器を目の当たりにしてはじめて掴める感覚であるとも思います
そこで、今回は、縄文土器文様の放つ生命観は何なのか?を追求してみたいと思います。
■生命原理から導いた記号を用いて自然界を表現
縄文土器の複雑文様を解読するうえで、非常に参考になるのが武居幸重氏の文様解読。
「縄文土器の文様には意味がある」と唱え、日本で最初に系統的に文様解読を行った結果を「先土器時代の崩壊における諸問題」「縄文デザイン」「縄文心象」にまとめています。http://www.joumon.jp/wp-content/uploads/zokusinsyou.pdf
数多くの土器をデッサンすることで見えてきたのは「雌雄の有微性による対構造」。豆粒文も勾玉文も重ね、並べることで、常に対であることを主張している。
また、土器はある面でも上から下にかけてデザインが変化していることから、対構造に則りつつも複合的な記号配置で、陸界や水界などの空間を表現しているとも主張している。
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- 基本的に大地・畑の文様が記号のベースとして選択され、大地・畑の記号に対して種子文などの作物が抽象化された記号として表現されている。
- 縄文人は、表現しようとする対象が原則的に対関係(対構造)で存在するという基本的な考え方を持っており、記号もそれにしたがって基本的に対関係(対構造)で配置される。
- 対構造の基本的な関係は雌雄という性に関する関係である。
- 記号単独についてではなく、複合的に配置された記号全体が、陸界や水界などの空間を表現する。
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つまり、自然・人の注視から対構造という生命原理を導き、それ原理・法則を用いて、自然界を表現していたことになる。
また、限られた大きさしかない土器に目の前の壮大な自然界を落とし込むためにも、写実的な文様ではなく、抽象的な文様を用いたというのも整合感がある。(一部写実的な文様・形状の土器も出土しているため、そうした技術がなかったわけではなく、「あえて」抽象文様を用いていたと思われる)
部分ではなく、あらゆるものが一体となって構成される自然界そのものを表現することに意味・意図があったようだ。
■命を喰らう器に、生命への感謝と再生への祈りを込めた
では、なぜ、生命原理に基づいた記号を用いて自然界を表現したのか。
そのうえで、参考になるのは縄文野焼き技法の第一人者であり、現代縄文アーティストの猪風来氏の考察。
大自然の中で自給自足で暮らしながら竪穴式のアトリエで20年以上も創作を続けるなかで得た認識を語っている。http://waccamedia.com/local/73
「縄文土器は野草や木の実、猪やシカなどの獣の肉を煮たり焼いたりするもの。命を喰らうためのもの。だからこそ土器は尊厳ある生命と等しく、最も尊厳のある形でなければならなかった」と。
そして「思えば自然とは一定しないもの。風が吹き、雲や潮や水は流れ、植物は揺れ、火は踊り、太陽は東から西へと回る。縄文人はそうやって動き続ける自然を生命として見た」
「季節の動きも含めて、そのような動き、循環が自然の摂理に従って行われることで、自分たちが生きていけることを縄文人は知っていた。だから命の満ちる様子を文様で表し、祈った」と考察している。
命を喰らう器「縄文土器」だからこそ、生命への感謝と再生への祈りを込めた縄文人。
より、ありのままの自然界を土器の限られた面に落とし込むために、自然・人の注視から見出した生命原理「対構造」による記号を用いて陸界・水界を表現していた。
そうだとすると、空間を記号化して、2次元的に再構成し、それを3次元の土器に再統合しなおすという非常に高度な空間把握技術をもっていたことにもなる。
こうした能力も、自然への感謝、そして注視(一体化)があったからこそ身に付いたものなのかもしれません。
投稿者 matudai : 2021年11月12日 TweetList
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