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2012年11月27日
日本の源流を東北に見る(8)~芸術とは自然の表現そのもの
こんにちわちわわです
東北にはさまざまな伝統工芸が今でも息づいています。
これらの伝統工芸の起源は、朝廷に奉納するために地元の産物を巧みな技術で芸術のレベルまで昇華させたものがほとんどです。傑出した作家が作り出したのではなく、庶民の生活の中から素人が創りだしたものであることが特筆されます。
こうした技術の背後にあるものは何なのでしょうか?
今回は東北の工芸にスポットを当て、日本の伝統美の源流を探っていきたいと思います。
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【東北から生まれた漆文化】
これまで、中国に起源を持つ漆技術が、縄文晩期頃日本に伝えられたと考えられてきました。ところが、鳥浜貝塚で、赤色漆塗り櫛が発掘され、日本の漆文化の歴史を一気に「6千年前」の前期にまでさかのぼらせました。さらに「約9千年前」の縄文早期の垣ノ島遺跡で、世界最古とされる漆製品が出土し、漆の発祥は日本であることが明らかになったのです。
晩期の出土例は比較的多く、その中心でもあった青森県の亀ヶ岡、是川中居遺跡からは、赤・黒の漆塗り土器や漆で文様を描いた土器が出土。そのほかに飾太刀・弓・高杯・耳飾、櫛・腕輪などの木製や樹皮・蔓・骨角器などに赤や黒の漆を塗ったものが発掘されています。
なかでも藍胎漆器(らんたいしっき)は傑作で、竹をさいて0.2㍉の厚さに仕上げ、これを底部、胴部、口縁部それぞれ別な編み方をし、お椀形に編みあげ、竹や木の削り粉を漆にまぜ、目止めをし、黒・赤の漆を塗ったものです。
縄文の漆工芸は完成度が非常に高かったといえます。
漆工芸が東北地方の工芸として発達した要因は、漆液がでる天然の漆は東アジアにしか自生せず、さらに、良質な性能を持つ漆の産地が東北地方に限られていたからです。
漆は皮膜を形成し耐水性にすぐれ。一度接着すれば離れがたい粘着力があり、こわれた土器の接着剤としても利用されました。しかし、こうした機能性にもまして縄文人は芸術としての価値を見出したのです。
【精神世界を巧みに表現した彩漆】
彩漆(いろうるし)は漆に種々の鉱物性の絵具を混ぜて着色したもので、酸化鉄による黒漆、酸化第二鉄による赤漆、硫化第二水銀による朱漆があります。土器の他、腕輪、耳飾、櫛などの装身具、高杯、椀などの木製品、弓にも赤漆を塗りました。
黒漆が重ね塗りされ、仕上げの上塗りに赤漆が塗られ、黒と赤のコントラストが神秘性を醸し出しています。
赤い色は日本だけでなく他の地域でも共通して魔を払う、除魔僻邪のまじないとして用いられてきました。体内に流れる血の色は山が爆発した火の色であり、その大地から上る太陽の色と同じ色でもあります。
太陽が沈むとあたりは漆黒のような闇につつまれしばらくしてまっ赤な朝を迎えます。生と死、そして再生を赤漆と黒漆になぞらえで器物に塗りうつし、精神世界を造形の中に表現したのです。
縄文人は研究熱心で自然への同化度は非常に高かったと思われます。そうであればこそ、漆かぶれする毒性の高い漆をつかいこなし、完成された赤色を創り出すことができたのでしょう。
【素材に同化し、「物」に「心」を吹き込んだ縄文人】
土という粉体の素材を、水を加えることで可塑性をもたせ立体化し、乾燥させ、燃成を加えることで水にとけない物質に変えたのが土器です。
縄文土器の文様は、600度と火力の乏しかった時代に、表面に凸凹を付けて表面積を大きくし、土器を硬く焼き上げるために付けたものです。漆の耐水性、防虫性、接着性にしろ、縄文人は素材の持つ特性を最大限引き出した技術を生活の知恵の中から創造してきたのです。
さらに、四季の変化と地勢の醸し出す日本の絶妙な風土は、卓越した色彩感覚、繊細華麗な造形・絵画技術を醸成しました。
文字の無かった時代、自分の手を通じて形づくられる「物」に心を吹き込むことによって、素材の中に眠っている「本質=モノ」を目覚めさすことに専念してきたのです。
縄文末期から弥生期の最大の技術移転は水田稲作農耕と金属器文明に関する新技術の導入にあります。高温で焼く技術が発達し、土器から文様が消え、鉄製の農用具なども同様に装飾のない機能的なものに特化するようになります。縄文文化はあたかも一掃されたかのように見えますが、その一方で、日本の文化の基層には、漆や器や木工芸品に代表されるように、縄文時代以来の生活技術が重層的存在として分厚く堆積されています。
特に近年まで水田稲作を受け入れなかった東北地方においては、縄文文化を根強く伝承し、生活の中でその巧みな技術を磨き続けてきました。こうした東北人が創りだす「モノ」には、先人が積み重ねてきた自然との対話の蓄積が暗に挿入されているのです。
【芸術とは】
東北を代表する芸術家、棟方志功の版画作品は世界中の人々の心に衝撃を与えました。
彼の版画の作風は、あえて稚拙に簡素化された表現に徹し、人びとの深層にある情景をあぶり出し、幼な心にもどったような感覚を生起させてくれます。
このように、芸術とは言葉では表現できない、人々の心の奥にあるものを導きだすことができる共認ツールなのです。
何も語らない「モノ」から発せられる心には、日本人の縄文時代まで遡る先人の思いが込められており、その本質はあくまで自然への敬意と畏怖の念であります。芸術とは自然を表現することそのものなのです。
素材や色の持つ特質を最大限引き出せる巧みな技術は、現代人にも深層の部分で憧憬を生起させる不思議な力を持つのです。
投稿者 tiwawa : 2012年11月27日 TweetList
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