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2012年03月21日

シリーズ「日本と中国は次代で共働できるか?」                                         13~中国の共産主義に可能性はあるのか

これまで、思想的な面から中国の可能性を見てきました。前回紹介した諸子百家の時代以降は儒教が定着し、それに大衆文化としての道教(≒老荘思想)が広がっていきます。しかし、ご存知のように、現在の中国は共産主義の国です。20世紀に入り、国家統合の思想を大きく転換しました。そして、共産主義世界をリードしてきたソ連が崩壊してもなお、共産主義を守っています。この共産主義思想とその行く末を考えずして、今後の中国との共働は語れません。今回は、中国の共産主義とその可能性について考えます。
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そもそも共産主義ってなに
 
一言で云えば、生産財は共有にすべきとする考えです。
逆に云うと、私的所有(権)を廃止することです。
(個人に分配された物の私有は認められます。)
  
共産主義思想の起点は1848年、マルクス、エンゲルスの共産党宣言です。(参照:リンク
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共産党宣言第1ページ(第一学習社「最新世界史図表」より)
  
そこでは、過去の歴史や現状の分析、共産主義の正当性を長々と綴っています。長いので、あえて主旨だけを取り出せば以下のようになります。「社会の歴史とは階級闘争の歴史である。今、労働者が団結すれば資本家階級に勝利できる。そうすれば、私的所有を廃止し(資本家から資産を剥奪し)労働者の共有とし、労働者本位の社会が実現できる。」
 
この思想は、明らかに資本主義(社会)の批判・否定を出発点としています。資本主義の何を問題にしているのでしょうか。
 
資本主義では“資本家が生産財(土地や機械など)を所有し、労働者の生み出した生産物に基づく利益を搾取(ピンハネ)する。その結果、労働者が不当に安い給料で働かされ、苦しい生活を強いられる。それは不平等であり、人権が守られていない。”と共産主義では考えているのです。
 
中国では上記の思想が憲法に謳われています。第6条には、「生産手段は国民や労働者の共有とし、搾取を根絶する」と書かれています。土地についても私有は認められていません(第11条)。認められているのは長期使用権のみです。
 

中華人民共和国憲法 第6条第1項
中華人民共和国の社会主義経済制度の基礎は、生産手段の社会主義公有制、すなわち全人民所有制及び労働大衆による集団所有制である。社会主義公有制は、人が人を搾取する制度を廃絶し、各人がその能力を尽くし、労働に応じて分配するという原則を実行する。

 
では、中国はなぜ、共産主義になったのでしょうか。
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中国が共産主義になったのはなぜか
 
共産思想が生まれた19世紀半ば、産業革命から約100年が経過し、産業革命を成し遂げた英国を中心に欧米各国が、世界各地に植民地や貿易相手国を拡大していった時代です。その波は中国にも及びます。
 
ただ、英国は中国との貿易で赤字が続き、流出した銀を取り戻すためアヘンを密輸します。中国(清)がこれを阻止すると、戦争を起こします(アヘン戦争)。
 
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       アヘン戦争
 
中国(清)は敗北し、多額の賠償金を支払った上、香港を割譲します。これを契機に列強から何度も戦争を仕掛けられ、その度に不平等な条約を締結させられます。いわゆる、武力を背景にした帝国主義です。中国は初めて四夷以外の脅威に晒されたのです。その横暴さ、理不尽さを思い知ったに違いありません。同時期、日本でも黒船が来航し明治維新を迎えますが、中国のショックはその比ではなかったでしょう。
 
知識層や若き思想家たちは、欧米列強の圧倒的な力の前に、過去の歴史を総括し、伝統文化や儒教を否定します。民主制や科学的な思考が必要だと考え、欧米主義に傾倒します。これを中華民国の建国に結実させたのが孫文です。
 
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      孫文
 
しかし、すでに欧米の帝国主義に蝕まれ、植民地化の危機に瀕していた中国で欧米主義は長続きしません。一次大戦後のパリ講和会議で中華民国の主権を蔑ろにした決定を契機に、それまでたまっていた欧米への反発が爆発します(五・四運動)。
 
欧米(主義)も信用できなくなったとき、列強の外圧に対抗するにはどうしたらいいのか。中華民国樹立後間もない中国は革命も道半ばで、浮き足立っていました。そのような機運にフィットしたのが共産主義です。この時期、ロシアでは共産主義革命によりロシア共産党が成立したばかりです。これを目の当たりにした学識や学生たちの中で、この思想が実現可能なものとして輝き始めていたのです。
 
中国における共産主義(革命)への道のりは、農村を基盤として展開されます。市場社会で最も虐げられるのは、農民です。工業品に比べ農産物は幻想価値を生みにくく、安いからです。ひとたび工業社会に巻き込まれれば、価格格差から底辺の生活を強いられることになります。
 
また、農業国であれば、共産思想との親和性は高くなります。なぜなら、多かれ少なかれ集団性を有しており、共有や平等が実態生活に当たり前に存在するからです。
 
さらに、中国では、革命の機運に対して激しい弾圧がありませんでした。伝統的王朝の滅亡から間が無く、弾圧の主体となる体制派はほとんど存在していなかったからです。逆に、列強の外圧に対して、国家統合の新たな支柱を欲していたのです。
 
すなわち、中国は、貧困克服の願いを基盤としつつ、農業国帝国主義の侵入、国内の混乱という条件が相まって、共産主義が国家の統合理念に成り得たのです。
 
もちろん、市場主義(内実は資本主義の高じた帝国主義)に席捲されていた中国人民、とくに知識層に反資本主義思想がフィットしたのはいうまでもありません。
 
かくして、中国では、歴史上何度も登場する農民反乱の圧力が、近代思想(ex.民主主義)の後押しを得て、共産主義国家という理想郷(≒幻想国家)を成立させることになります。この変革期待を農民・農村のものとし、国家レベルまで昇華させたのが、農民上がりの指導者、毛沢東です。
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   若き日の毛沢東(リンク) 
 
  
共産主義運動の背後に渦巻いた様々な思惑
 
農民や知識層の思いだけで革命は成就しません。ヨーロッパでは共産党の国際組織が作られ、各国に工作員が派遣されます。何の後ろ盾も無い組織に相当な資金源が存在したはずです。工作員は中国にもやってきます。毛沢東、陳独秀(初代総書記)、李大釗(りたいしょう)などの反体制分子が結び付けられ、共産思想の研究会も組織されます。そこから、中国共産党初期の指導者が誕生します。
 
この一連の共産主義の広がりは、背後に様々な思惑があったようです。一説には、ユダヤ民族の主流派が世界政府に向け主導したと云われています。また、共産主義の思想家や指導者は欧米の金貸しの支援を受けていたといいます。
 
参照:ロスチャイルドメモ③:ロシア革命とソ連支援共産主義国は、ロックフェラーによって創り出された
 
新たな国家形成の動きに合わせ指導者を支援・育成することは、その後の国の支配へつながります。また、大国を共産化することは、資本主義勢力との対立構造を生み、戦争の火種=武器購入の動機を作ります。それら思惑が集結したのがロシアだったのです。
 
 
ソ連崩壊後も、中国が共産主義を続けるのは、なんで?
 
ソ連はその後、それらの勢力に翻弄されることになります。当然、ソ連崩壊も彼らの思惑です。それ以外に、共産主義を続けられないほどの契機が見当たりません。
 
思惑とは、アメリカの覇権に対抗し、欧州統合を目論んだ勢力が、ソ連を崩壊させ、東ヨーロッパ諸国を民主制と資本主義経済に転換させたのです。
 
これを契機に、各地の共産主義国の民主化がはじまります。中国にも民主化圧力がかかりました。1978年「北京の春」にはじまり、あの1989年の天安門事件に至ります。しかし、一連の動きは鎮圧されます。結果、中国は未だに共産主義を死守しています。
 
 
中国の共産主義はこのまま続くのか
 
ソ連は崩壊しましたが、中国は健在。その違いは、金貸し勢力の浸透度や力の入れ具合によるのではないでしょうか。
 
金貸し支配が及びにくい原因のひとつに、集団性があります。日本と違って、歴史的に戦乱に次ぐ戦乱で、自我を強力に付帯した集団性です。“人にだまされるな”と幼いときから言い聞かせて育てる伝統です。かといって、集団性を解体させるキリスト教布教はうまくいかず、商売においては人脈やに関わらないとうまくいきません。なんともやりにくい人たちなのです。
 
また、ソ連は、金貸したちの思惑から、革命が一気に進行し、農民たちは革命や思想を強制させられるかたちでした。一方、中国は共産主義を信奉する指導層のもと、40年をかけて農村を中心にその基盤を構築していったのです。
 
中国は、そう簡単に欧米に屈することはないでしょう。金貸したちにとっても、今のままで問題はないはずです。では、共働は難しいのでしょうか。
 
  
中国との共働の可能性
 
共産主義が崩壊し、民主化されたほうがいいのでしょうか。その方が親近性が高まりそうです。しかし、それは、中国の欧米化にほかなりません。中国が完全に欧米に屈したことを意味します。
 
一方、日本が中国と共働する意味は、根本的には脱欧米路線です。
 
したがって、中国は、欧米支配と一線を画する共産主義を守るべきです。そこにこそ(当面の)中国の可能性があります。
 
現在、共産主義でありながら市場経済を採り入れ、先進国に追いつこうとしています。したたかです。あとはこのまま、貧困を克服できるかどうか?です。
 
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近年、貧困水準を世界水準に近づける変更を実施。貧困人口水準では米国並み。参考:中国は日本の水準でいうと、一人当たりGDPでは1970年、一次産業人口比で1980年頃にあたります。
 
 
日本を手本とすれば、まずは高度工業国化が必要です。農業生産は途上国に任せます。技術力が高まれば、世界の工業生産を一手に引き受けることになるでしょう。そうなれば先進国は太刀打ちできません。物的生産(工場生産)は中国に任せ、人々の期待に応える=類的供給という創造活動に軸足を移していかなければなりません。
 
いち早く全国民が貧困を克服した日本が、世界を先導できる可能性がそこにあります。日本は中国の高度工業化を指導し、自らはその先の世界=共認社会を実現して見せる。そこに邁進すべきです。それはかつて、思想を現実のものとしたロシアのように(革命ではありませんが)。当時、中国共産主義を主導した指導者たちは、若き頃日本に留学し、新たな思想を学んだといいます。
 
否定発の共産思想を超え、新たな思想を構築できるのは、肯定発の縄文気質が残る日本人しかいません。今、資本主義が行き詰まりを見せる中、日本は世界を先導する新たな理論の構築とその実践の場になることが求められています。そのとき、初めて真の意味で中国との共働が可能になるのです。
 
 
新たな理論の萌芽 実現論

投稿者 kumana : 2012年03月21日 List  

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コメント

大変参考になりました。

投稿者 匿名 : 2013年1月10日 22:52

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投稿者 匿名 : 2013年1月10日 22:52

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