| メイン |

2012年11月30日

アンデス・マヤ2大文明の“伝え”6~労働を充足源とすることで秩序を生み出した~

突然ですがみなさん、”労働”と聞くとどんなイメージですか?
「私は会社に行くのが楽しみ 」なんて人から、「”労働”だなんて聞くだけでもイヤ 」なんて人まで、いろいろでしょうか?
今回はアンデス文明に興った、インカ帝国の人々の労働観に迫ってみたいと思います!
  %E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%B9%EF%BD%A5%E3%83%AA%E3%83%A3%E3%83%9E.jpg

 にほんブログ村 歴史ブログへ


<西洋の労働とインカの労働>
西洋における労働観が、『古代メソアメリカ・アンデス文明への誘い』(杉山三郎、嘉幡茂、渡部森哉著)に書かれています。

「ヨーロッパは、道具の機能を特化させ、どんどん効率化して、動物や風などの自然の力を使用してできるだけ人間の力を使用せずおこなおうとする。」

上記のように、西洋における労働とは、「やっかいなもの=できるだけ少ない時間と労力で済ませるもの」と捉えられていました。
それに対してインカの労働観は全く違うものでした。
カッターの刃も入らないほど、精密に測り、削り、積み上げられた石造りの神殿。
色とりどりで、複雑な柄が織り交ざった、とても手の込んだ民族衣装。
 %E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%81%AE%E7%9F%B3%E7%A9%8D%E2%91%A1.jpg
   %E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%81%AE%E7%B9%94%E7%89%A9%E2%91%A0.jpg
献上物などではなく、自分たちの生活のための物資に、ここまで精密で手の込んだものつくりをするインカの人々。労力を惜しまず、時間と手間隙かけて働くことが、何よりの充足源になっていたことの表れです。
<皆に等しく役割充足を与えるのが王の務め>
人間にとって、役割がないということは一番の不全です。
それを良く理解し、皆に役割を与えることで秩序を作り出し、統合したのがインカ王でした。
そもそも“インカ帝国”という名称はスペインが後から名づけたもので、実態は80以上の民族集団から成る共同体でした。
言うまでもなく、これだけ多くの集団をまとめるのは至難の業です。
にもかかわらず、大きな戦争もなく統合できたのはなぜでしょうか?
その秘訣は『労働税』のシステムにありました。
同じく、『古代メソアメリカ・アンデス文明への誘い』には、インカの『労働税』の様子を以下のように書いています。

インカ帝国における納税は物納ではなく労働税であった。臣民はインカ王に対して何らかの労働を奉仕した。そして、身体障害者や老人のように、なにもできない人であっても、何らかの労働をすることが義務づけられた。

わざわざ建築用の石材をクスコからエクアドルまで1000km以上運んだ例がある。効率を考えればエクアドルの石を使用した方がいいに決まっている。労働に価値が置かれていたアンデスでは、人々を働かせること自体が重要だった。

道路建設は労働力を投下する格好の対象であった。また、前のインカ王がつくった道路のすぐ隣に新たに道路をつくることもあった。これもまさに我々の目には無駄なことと思われるが、労働力を投下するという意味があった。

つまり、全ての人に役割をいきわたらせる(そのために役割を創出する)のが、インカの『労働税』のシステムでした。
そうすることで皆が役割を全うし、充足することで秩序を維持できたのです。
一方、西洋では、民衆の不満に対して力で押さえつける統合方法(警察や法律)をとるため、国家はより強力な軍事力を必要としてきました。
それに対しインカは、(リンク)にもあるように、弓矢など武器になるものの使用は禁止され、皆が充足し、戦争が起こらないような社会を作り上げてきたのです。
(だからこそ、鉄器どころか弓矢さえ持たないインカは、後にスペインの侵略であっという間に滅ぼされてしまうのですが・・・)
『労働税』というシステムは、「人々の期待に一つ一つ丁寧に応えることが喜びであり、活力源である」という本源的なアンデスの人々の本源性を、国王がよく理解していたことで生み出されました。そして、このしくみが人々の生活に安定をもたらし、秩序を生み出したのです。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
%E3%81%9D%E3%81%B0%E6%89%93%E3%81%A1%E3%80%80%E3%81%B0%E3%81%82%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93.jpg%E6%BC%81%E5%B8%AB.jpg%E4%BA%BA%E5%BD%A2%E7%84%BC%E3%81%8D.jpg
「人々の期待に応えることが喜びであり、活力源である」
とても大切な仕事の本質を、アンデスの人達に学ばせて頂いた気がします。
日本でも、最近までは、仕事は「やっかいなもの=できるだけ少ない時間と労力で済ませるもの」という西洋的価値観が蔓延していた感じがします。
その典型が定年退職なるものではないでしょうか?
ところが今は少しずつみんなの意識変わってきているように感じます。
先日、私がよく通うお店の店員さんが定年を迎えられたとき、涙を浮かべながら言われた印象的な一言があります。
「まだまだやりたいんだけどな、年齢がきたら終わりというのはつらいな」
この言葉がずっと心の奥底でくすぶっていたのですが、お客さまに喜んでもらう事を生きがいにしていたその男性の背中を思い出し、役割がないということはこんなにも不全を生み出すものなのだとわかったように思います。
仕事とは本来、皆の期待に応えるもの=何よりの充足源。
インカの人々の労働観から、徹底的に効率を求めた西洋的労働観とは違う、これからの日本が目指すべき、次代のヒントが隠されているように感じました

投稿者 pingu : 2012年11月30日 List  

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://web.joumon.jp.net/blog/2012/11/1460.html/trackback

コメントしてください

 
Secured By miniOrange