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2010年06月08日

『イスラムを探る』 第5回 イスラムの経済原理

イスラムを探るも 第5回 となりました。
今回は「イスラムの経済原理」を探ります。
国家(絶対王政)とイスラム文明の社会統合システムには差があります。
 <国家(絶対王政)>
・主な生産方式が農業社会では、農地などの私有権がどれだけあるかが重要となります。また一人の人間が、全てを所有することが可能となります。だから最終的には全ての所有権をもつ王様が登場することになります。
・また支配の方式は武力闘争で決まります。
・市場は、「共生(取引)適応」の存在で、共生(取引)適応は、あくまでも闘争圧力からの抜け道に過ぎませんでした。
一方で
<イスラム社会>
・ イスラム社会では砂漠間の交易(アジアとヨーロッパを結ぶという地理的要素もある)が発達し、市場(商業)が主な生産様式となりました。商業では様々な利益の上げ方が登場(例えば職業選択の自由)するので、一人の人間が利益を独占できません。利益を上げる人間が容易に入れ替わります。また砂漠の中のオアシスで生存するという環境で培われた歴史があり、共同体を第一としています。急激な市場化の中でも私権原理をイスラム法=ルール(喜捨など)などの観念で封鎖しました。
・ 支配の方式は、経済競争とイスラム法=ルール(喜捨など)などの観念で決まります。共同体を第一として、経済競争をイスラム法でルール化するというシステムです。
イスラム文明の経済を分析し、イスラム社会の統合方法を解説したいと思います。共同体を第1として、経済競争をイスラム法でルール化し発展していくというシステムが見えてきます。このシステムによって、力の序列原理(武力統合国家)の存在しない本源性の残る部族社会(共同体社会)が急激な市場化・私権化・自我肥大化に晒され、かつての共同体規範が急速に崩壊してゆく社会を超越観念(アッラー)を駆使して止揚できたことがわかります。
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【イスラム共同体と経済発展】
イスラム社会は,帳簿や秤が発明される等,商業活動が盛んな地域でした。但し,それも法の許す範疇に収まるものでなければならず,商業活動を行うことも信仰の一形態としてイスラム法を体現するものでなければならないと考えられました。経済発展は共同体維持の必須要件であり,貧困の撲滅,完全雇用の達成,最適成長の維持,共同体の維持のための微視的作動原理としての機能を表すとされています。公共の目的のためには,個人の所有権は移転・縮小されることもあります。所有権と同様,相続権も,配分優先の原則に従って,社会秩序の維持に重要であると見做されています。イスラム教は生活法です。その所以は,イスラム教は,宗教・政治・経済・文化・生活を包含する全体構造物であるイスラム共同体として実現しており,信仰が種々の社会事象に統一的様相を獲得させているからです。
【イスラム共同体の構造】
イスラム共同体の構造は,諸事象の解釈権と共同体に閉方を与えるイスラム法学者の合議,その解釈を執行する国家や行政という構成になっています。各個人は,個々の権利・自由意志に関して,神の代理人としての実行者であるが,その下位に位置します。従って,種々の権利は認められていますが,自ずからそれは制約的であり,信仰を核とした生活と共同体や地域社会との調和・社会正義への寄与・義務が求められます。そのようなイスラム法学者の機能は,混沌-秩序変換装置であり,その解釈権は執行機関である国家や行政さらに下位社会を包摂しています。但し,その解釈は柔軟で,また時に議論となることもあるそうです。
【経済活動(職業選択)の自由】
職業選択の自由、経済活動も奨励されています。すなわち自由な業種の商売ができるのです。基本的権利が認められており,生存権,法の下での平等,思想・信教並びに結社の自由,プライバシーの保護,所有権,相続権,職業選択の自由,教育の権利や経済的保障等々があります。
【配分優先の原則】
配分優先の原則は,本来的には「喜捨」の精神に基づくものであり,共同体の求心性を高める効果を生んでいます。これは,貧困の撲滅・公益優先等社会的公正の原理のための装置であり,富の配分が生産・流通に優先するということです。但し,生産活動を否定することではありません。すなわち,富の生産は共同体内の個々人に対する配分に従属し実現されるべきもの,との考えに基づいているのです。
【労働利得権の原則】
これは限定的経済自由原理に基づき,個々の権利の執行者としての個人に対する自由度を規定と利得獲得の権利を保障する原則です.すなわち,全ての利得は事業の全過程を通じて費やされた雇用契約等による労働にのみ基づき,それが報酬の獲得を正当化する唯一の根拠であるということを意味しています。故に,労働の提供なく利得を得ることは正当化されることはなく,利子付きの貸付けや投機による利得,総利益配分式の協業は禁止されています。
【禁欲を徳目、所有の規制】
イスラム法では,富への執着は信仰の妨げであると戒め,禁欲を徳目としています。それは,所有概念と同様,来世への路であり同時に堕落の原因でもあると規定されてきました。すなわち,家族や共同体を維持発展させるための手段,そして善行により来世へ至るための手段であり,現世で財を成すということが目的とはならないという論理です。つまり,生存・扶養を含め信仰者としての役割を果たすための手段であり,精神的・物質的方法で人間性を喚起するための方法としての経済活動のみが許されるのです。イスラム法では,所有欲が人間の本質であると前述しました。しかし財産形成や隠匿は人の本能で、また浪費も性分です。このように所有者が神の代理人としての責務が果たせない場合,国家がその私有財産の管理に介入することを可能にしています。相続の遺留分を3 分の1 に制限することもその1 つです。さらに,社会的公平性の観点から限定的経済自由原理に則って,退蔵に対しては強制的喜捨の徴収による資産の段階的没収,浪費については所有権の移転等が行われるのです.利子,賭け,不義等違法行為に拘る所有権は認められていません
【複合的所有原理】
複合的所有原理とは,(ⅰ)公共財に関する国家的所有,(ⅱ)社会または人々の共同所有である公的所有,(ⅲ)戦争で獲得した土地等の財に関する社会的所有,(ⅳ)海や入会地等,人々の利益享受を目的とした人間的所有,(ⅴ)(ⅰ)の国家的所有と(ⅱ)の公的所有を総合化した公的所有,(ⅵ)私的所有,(ⅶ)私的権利つまり用益権,(ⅷ)狩猟等の公的許可,に分かれる所有形態を指しています)。
実際に幾つかのイスラム諸国では,所有権は憲法で規定されています。例えばエジプト・アラブ共和国憲法では,所有権は人民がこれを監視し国が保護するとして,公的所有,協同組合所有,私的所有に3 分類しています。シリア・アラブ共和国では,憲法で所有権を公的所有権,共同所有権,私的所有権に大別しています。シリアにおける共同所有権も具体的には協同組合等による所有を含んでいます。

投稿者 norio : 2010年06月08日 List  

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コメント

「本源的だが社会空間に対して閉鎖的な日本人の体質」
 確かに日本人の体質をよく捉えた言葉ですね。この体質にどういった可能性があるのか?興味が沸きますね。

投稿者 dai : 2010年8月26日 19:17

「本源的だが社会空間に対して閉鎖的な日本人の体質」、確かにこれは言えそうですね。
閉鎖的とは、見方を変えれば集団収束力の強さ、集団としての共認充足の強さと言えそうです。
そこさえキープできれば、表面上の社会統合様式はなるべく捨象しながら従っていたのでは、と言う見方もなるほどと思いました。

投稿者 sinkawa : 2010年8月26日 19:22

身分固定が役割分化であるというあたりは、新しい認識ではないかと思いました。最初に、身分や序列に目がいきがちですが、大衆が役割が与えられたという意識であれば、強制的な身分序列とは違うものであったと言えそうです。
日本の場合、他国とは違う「国家」の成立なのかもしれませんね。

投稿者 さーね : 2010年8月26日 19:23

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