2012.07.15

始原の言語・日本語の可能性~(6) 母音の感性が生む心開く会話

日本語は、実体(対象)と発音が一致した美しい言語。その音を発する時の口腔内感覚→発音体感が、それが指し示す対象(実態)の様子と密接に関わっている。
これまで、子音の発音体感について3回にわたり、そして前回は、母音(アイウエオ)の発音体感の分析を展開してきました。
実体と発音が一致している美しい日本語(カ行、サ行、タ行の分析)
2重母音が作り出すやわらぎの意識(ヤ行、ワ行の分析)
ラ行(R)は哲学の響き/ナ行(N)は抱擁の感覚/ハ行(H)は熱さをあらわす
母音が作り出す感性 (ア、イ、ウ、エ、オの分析)
今回も、前回に引き続き、日本語は母音言語と呼ばれる、その「母音」の発音体感について分析を展開します。
以下、囲み部分は、黒川伊保子氏「日本語はなぜ美しいのか」より引用。

(前回の続きです)
さて、渋谷で妻を見かけた夫の話である。夫婦関係が健全なら、夫は近づいて声をかけようとするだろう。このとき、「あっ」で吊られたようになっている身体の呪縛をほどくには、ほっと力を抜くオと、前に出るイの組合せ「おい」が一番効く。出だしの瞬発力が要求されるシーンなら「いけっ」もいい。しかしまあ、容疑者を見つけた刑事じゃないんだから、ふつうは「おい」だろう・「おい、きみ」でI音を追加するとさらに体が前に出て、歩くのが楽である。
しかし、、妻の隣に若い男がいたら、夫は「えっ」とのけぞって、再び立ち止るに違いない。エは、発音点が前方にありながら、舌を平たくして、下奥に引き込むようにして出す音だ。このため「広々と遠大な距離感」を感じさせ、前に出ようとしたのに、何かのトラブルでのけぞる感覚に最もよく似合う。(中略)
さて、渋谷の妻の話に戻る。妻の隣にいたのが、最近とみに背が伸びた自分の息子だったら、夫は再び「おいおい」と言いながら、ふたりに近づくはずだ。この場合の「おい」は、ほどけるオのほうにアクセントがある。妻を呼び止めようとした、最初の「おい(い にアクセント)」とはニュアンスが違う。
ほっとした思いも手伝って、「おまえたち、こんな時間にこんなところで、何、遊んでるんだ?」とちょっと偉そうに声をかけて、「あなたこそ、残業じゃなかったの?」と言い返されたら、出す声は「うっ」しかない。受身で痛みに耐えるときのウである。

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posted by fwz2 at : 2012年07月15日 | コメント (4件) | トラックバック (0) List  

2012.07.14

始原の言語・日本語の可能性~(5) 母音が作り出す感性

日本語は、実体(対象)と発音が一致した美しい言語。その音を発する時の口腔内感覚→発音体感が、それが指し示す対象(実態)の様子と密接に関わっている。
前回までK、S、T、、、子音の発音体感について、黒川氏の見事な分析を展開してきました。
実体と発音が一致している美しい日本語(カ行、サ行、タ行の分析)
2重母音が作り出すやわらぎの意識(ヤ行、ワ行の分析)
ラ行(R)は哲学の響き/ナ行(N)は抱擁の感覚/ハ行(H)は熱さをあらわす
いよいよ今回は、日本語は母音言語と呼ばれる、その「母音」の発音体感について分析が展開されます。
以下、囲み部分は、黒川伊保子氏「日本語はなぜ美しいのか」より引用。

ことばの発音体感は、潜在意識に、ある印象を作り出す。
その印象の質は、K、S、Tなどの音素単位の発音構造に依存していることを、前章までに理解していただけたと思う。
ことばの音を構成する音素は、大きく子音と母音の2つに分類することができる。実は、この子音と母音とでは潜在的な印象を作り上げる際の役割が違うのである。
【子音が作り出す感性】
子音は、息を制動して出す音、すなわち息の流れを邪魔することによって出すのが特徴の音素群である。喉で息を溜めて「発射」させるのがKとG、舌に息を孕ませて弾き出すのがTとD、唇の破裂音がPとB、息を喉壁でこするとH、上あごにすべらせて歯茎でこするとSやZになる。、、、、、、、(中略)
このように息を制動する方法によって、発音の体感はかなり違う。物体を破裂させるのか、すべらせるかでは、見た目も感触も音も違う。(中略)ことばの発音体感の質、すなわち、口腔内で起こる力の質は、発音時の「息の邪魔のしかた」によって作られる。つまり、子音が、その主な担い手だ。

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posted by fwz2 at : 2012年07月14日 | コメント (1件) | トラックバック (0) List  

2012.07.11

「次代の可能性をイスラムに学ぶ」6 オスマン帝国の拡大の鍵は、モンゴル譲りの軍組織力とイスラームの統合力・包容力!

>イスラムの東アジア進出はイスラム帝国消滅と期が同一。中東を追われたムスリム商人のあたらな商圏獲得の拠点としてインド、インドネシアが選択された。
イスラム帝国の消滅→中東を追われるという上記外圧を受けて、イスラムはまた別の方向にも可能性収束していきます。
0.念願のコンスタンチノープル!

画像はこちらから♪
もともとビザンツ帝国が強力だったのもありますが、西ヨーロッパ諸国にとってもビザンツ帝国はイスラムをはじめとする東方勢力からの盾となる国であり、必死で守っていたと言えます。実際十字軍(11~13世紀)は、ビザンツ帝国(当初は東ローマ帝国)が「イスラム勢力から守って欲しい」と要請したことから実施されました。
それが1453年にオスマン帝国によって陥落することになるのですが、そこにはイスラームだからこそ成し得た、周到でしたたかな戦略があったのです !!
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posted by staff at : 2012年07月11日 | コメント (1件) | トラックバック (0) List  

2012.07.11

始原の言語・日本語の可能性~(4)  実体(対象)と発音体感の一致  ラ行(R)は哲学の響き/ナ行(N)は抱擁の感覚/ハ行(H)は熱さをあらわす

日本語は、実体(対象)と発音が一致した美しい言語。その音を発する時の口腔内感覚→発音体感が、それが指し示す対象(実態)の様子と密接に関わっている。
前々回、カ行、サ行、タ行の発音体感、リンク
そして前回は、ヤ行、ワの発音体感をお伝えしました。リンク
今回は、ラ行、ナ行、ハ行を扱います。もう飽きてしまいましたか?そんなことは言わせません。いずれも、やはり独特の音感を持っており、対象の様子(または、主体の状況)と見事に連関しています。今回もフムフムと言って頂けるのではないかと思います。
以下、囲み部分は、黒川伊保子氏「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」からの引用です。

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posted by fwz2 at : 2012年07月11日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List  

2012.07.08

シリーズ「日本人はなにを信じるのか」~4.儒教の影響

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株式会社ココシスさんよりお借りしました
 
日本人の信仰心の背景に迫る、シリーズ「日本人は何を信じるのか」
今回は、前回紹介した信心深い平安の頃までの日本人が、武家社会となった中世になってどのように変化していったのか、探ってみたいと思います。
 
信仰心の深かった日本人が、なぜ現代では無宗教などと言われるようになったのか?
本当に信仰心は無くなったのか?
そのきっかけが中世にありそうです。
 
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posted by vaio at : 2012年07月08日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List  

2012.07.06

シリーズ「日本人は、なにを信じるのか?」~第3回:神仏と共に生きた時代

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<宇佐神宮 リンクより引用>
今回「日本人は何を信じるのか?」シリーズの第3回目の記事ですが、若干の軌道修正を行います。
この間、日本人は宗教心のない特殊な民族であるということを軸にシリーズを進めてきたのですが、仲間と議論や調査を重ねていくうちに、「本当に日本人は宗教心が薄いのか?」という疑問が生じました。
というのも、日本全国どこに行っても神社や寺が数え切れないほど建立しているのは疑いない事実ですし、たとえそれらが支配階級主導で建てられたとしても、受け入れてきた日本人がいたからこそ、現在も存在できていると捉えることもできるからです。
現代人のアンケートだけをもとに、『日本人は宗教心がない』と断定してしまうのは、あまりにも浅い分析なのではないか あるいは、日本人の心の奥底には、日本の長い歴史の中で培われた私達が見落としているなんらかの構造が横たわっているのではないか
という期待感をもって、以下のようにシリーズの記事構成を見直します 🙄
1.プロローグ
2.現代日本人の宗教観
3.神仏と共に生きた時代 
今回の記事
4.儒教の影響
5.近世における宗教観
6.葬式仏教とは
7.神話から出発した日本の近代
8.日本人と自然(宗教)
9.精霊信仰とは
10.祖霊信仰とは
11.共同体と信仰
12.日本人は何を信じるのか?(日本人の可能性)
今回は、第3回目の記事からスタートしますが、まずは日本人の宗教感について学んでいこうという主旨で、題して「神仏と共に生きた時代」を扱います
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posted by marlboro at : 2012年07月06日 | コメント (1件) | トラックバック (0) List  

2012.06.30

「次代の可能性をイスラムに学ぶ」5 イスラム世界の拡大(イスラムは変質したのか)~その2

さて今回は第2段階の拡大を扱っていきます。
第1段階は軍事力を起点にして周辺大国の外圧に対峙していく中で結果として広大な交易網を形成した、その多様な国家、人民の統合の起点にイスラム原理は実に有効に機能したという内容を述べました。
第2段階の拡大もまた外圧から始まります。中東世界でのイスラム帝国消滅という外圧です。
★第2段階の拡大~アジアに広がったイスラムはまさに商圏拡大(13世紀以降)
第2段階のイスラム世界は南アジアから東南アジアに基盤を移していく過程である。中東世界での拡大が閉ざされた13世紀頃からインド、インドネシアにイスラムが拡大していき、その勢いは第1段階と同様にわずか2、3世紀の間に拡大していった。
しかし、第2段階での注目すべき点はその拠点が乾燥地帯ではなく、湿潤地帯であるという事である。それらは明らかに別の勢力、別の思想が介在している事を想起させる。
その中心がこれから説明するスーフィーである。
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posted by tano at : 2012年06月30日 | コメント (1件) | トラックバック (0) List  

2012.06.30

「次代の可能性をイスラムに学ぶ」5 イスラム世界の拡大(イスラムは変質したのか)~その1

これまで5つの記事でイスラムについて“学ぶ”という視点から紐解いていきました。
「次代の可能性をイスラムに学ぶ」1 イスラムの女性は充足しているの?!~ 
「次代の可能性をイスラムに学ぶ」2 多種多様な政治経済
「次代の可能性をイスラムに学ぶ」2 自我経済の終焉とともにはじまったイスラム金融
「次代の可能性をイスラムに学ぶ?」3 イスラム世界の源流とは_イスラム教前夜の状況~
「次代の可能性をイスラムに学ぶ?」4 イスラム教の本質とは?
前々回のサイユキさん、前回のちわわさんの記事ではタイトルの学ぶに(?)がついております。一神教であるイスラムの社会、これはキリスト教やユダヤの焼き直しで同じじゃないか?果たして学ぶところはあるのだろうか?疑問符が立ち込めています。
しかし、答えを急いではいけません。
今回はそんな疑問符は一旦おいといて、イスラムのその後の世界拡大の状況をまずは押さえていきたいと思います。イスラムの最大のポイントはその拡大にあるのです。イスラムに次代の可能性を学ぶのではなく、イスラムの歴史を学ぶに切り替えて展開していきます。
イスラムは知らない事だらけ、それだけでも有意義ではないかと思っています。
ちわわさんの記事よりまず始めて行きます。

>そうであるがゆえに、イスラームの拡大は武力支配という側面よりも、経済圏の拡大という側面が強く、イスラーム教徒の拡大も、貧困層の救い欠乏の側面は否定はしませんが、むしろ税金のがれの実利にあった事も見逃せませんし、規範群が「だまし」を倒錯するために、より現実世界に密着しているという点も着目するに値する大きな視点だと思います。

この現実世界に密着という部分がかなり大きいように思います。
イスラムの拡大の歴史をこれから見て行きますが大きくは、商業と宗教という相反するものを「現実」という実体に合わせて、すり合わせていっています。この現実とはその時々の課題であり、社会の秩序や人々の安全、期待などです。
イスラムの拡大とは、征服しながらも人民支配ではなくイスラム社会に支配民を取り込んだ感があるのはその秩序を最大に重んじたからではないでしょうか。

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posted by tano at : 2012年06月30日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List  

2012.06.28

始原の言語・日本語の可能性~(3)2重母音が作り出すやわらぎの意識

日本語は母音言語が特徴的ですが、母音といえばアイウエオ、さらにそれを特化した2重母音といいう子音があります。
ヤ行とワ行です。
この2重母音の行は他の子音群にはない特徴を示しています。単純なひとつの感情だけでなく重層した微妙なニュアンスの表現を求める日本人を現す特徴的な言語のひとつかもしれません。今回はその2重母音の子音であるYとWを紹介したいと思います。
同じく黒川伊保子氏の著書「日本語はなぜ美しいのか」から紹介していきます。

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posted by tano at : 2012年06月28日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List  

2012.06.14

始原の言語・日本語の可能性~②実体と発音が一致している美しい日本語

日本語シリーズ第3弾です。前回の記事で朝(Asa)というキーワードから発音体感と情景、言語が密接に連関している事を感じていただきました。今回はそれを受けてさらに日本語全体の構成にまで拡げてみていきたいと思います。
著者は日本語を美しい言語だと言う。
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「サクラサク。」この5文字だけで多くの人はなんとも言えない歓喜と美しい情景を脳に描く事でしょう。チェリーブラッサムでも英語圏の人は同様に感じるはずだと思うかもしれませんが、桜の花びらの散りゆく儚さや、地面が桜色に染まっていく情景、満天の青空を背景に淡いピンク色に拡がる満開の景色、さらにそれを見上げている人々のなんとも言えない表情。それらは英語圏のこの単語では思い浮かべる事はできないでしょう。きっとサクラという樹木を思い浮かべるに過ぎません。
サクラという文字、サクという動詞の重なりが相乗して一気に情景の美しさを際立たせています。咲くという動詞は桜という名刺から誕生した事が容易に伺えます。さらに言えばサとクとラ、それぞれに桜の情景を浮かべる要素が組み込まれているからに違いありません。サクラだけでも十分に美しいのです。
日本語の美しさの理由は、このように言語と情景が一致している事にあります。
今回も同様に黒川伊保子氏の著書「日本語はなぜ美しいのか」から紹介していきたいと思います。

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posted by tano at : 2012年06月14日 | コメント (1件) | トラックバック (0) List  

 
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