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2014年01月22日

自考力の源流を歴史に学ぶ8~京都職人文化に集積した自考力の叡智

シリーズもいよいよ8回目になります。前回は「百姓」という呼称の本質から自考力の原点に課題発があり、なんでもできる万能能力や総合性とは与えられた課題を選ぶことなく真摯にこなしてきたその結果であることを学び取りました。
今回は古来から職人が結集し、長く職人文化を育んできた京都にその源流はないか探ってみたいと思います。現代を生き抜く経営者の生の言葉をできるだけ多く扱い、その言葉の背後にある、職人文化の歴史が育んだ考え方や価値観に学んでみたいと思います。
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いずれも京都の職人さん達の写真から借用させていただきました。
参考にさせていただいた著書は村山祐三様の「京都型ビジネス」です。
キーワードは著書の中から以下の3つを選ばせていただきました。
・切磋琢磨・おもしろおかしく・人に尽きる
それではこれらのキーワードの中身について京都で暮らし、働く人々の言葉から耳を傾けてみたいと思います。

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【切磋琢磨】
京都では、システム的な発想で人を管理することは嫌がられる傾向があり、経営者が直接、人の顔を見ながら経営する企業が多い。これは京都風の人間重視の経営であり、そのなかで働く従業員は、競争というよりも切磋琢磨により、自分の能力を高めることが求められる。この傾向は、伝統産業の場合は特に顕著で、職人は友禅染や西陣織の内なるネットワークのなかで、自分の技を磨く事が求められる。そして、職人の切磋琢磨による高度な技に支えられ、美しい着物が完成を見る。
「切磋琢磨」という言葉は辞書によると「学問や人格を磨き、向上する」という意味に加えて「仲間同士で励ましあって向上する」ということも同時に意味する。まさに後者の意味を実践しているのが京都の職人の世界といえる。
特に固定的なネットワーク内では、腕の悪い職人が一人でも含まれると、出来上がってきた製品の質は低下するため、それぞれの職人がある意味では「切磋琢磨」せざるを得ないのである。

島津製作所の田中社長の好きな言葉が「切磋琢磨」だという。切磋琢磨について、
「競争といいうより、励ましあってお互いに自分を磨くということでしょう。ほめ合いながら高めあうという気持ちです」と述べている。

料亭菊乃井の村田氏は以下のように言う
「僕らの商売というのは、利益を出す事が目的ではなくて、継続することが目的なんです。ですから「企業」ではなくて「家業」です。利益の追求をせずに、継続する事に執着するというのが僕らのやり方です。「百年後、どないするねん」ということです。右肩上がりの経済がずっと続くわけはありません。いずれどこかで成長が止まって当たり前です。このことを長い歴史のなかで先人たちは知っていたと思います。成長が止まったらどないするねん、と次の手を打つ。そしてそれが今になって生きてくるのです。」

何の為に切磋琢磨するか?
堀場製作所の堀場厚氏は京都文化の本質を「本物主義」という。
「京都の文化の一番のポイントは本物主義だと思います。規模ではなく中身で勝負しようというのがこの土地に流れている。量ではなく質で勝負というのが価値観のなかにあるわけです。京都で経営者が集まる会で誰が上座に座るか。京都の場合、伝統産業でも、近代産業でも、長々営々と続く一流企業であれば、たとえそれが20名の従業員の会社であっても上座に座る。たとえ上場企業で何千名の人を雇っていて、何千億円売り上げていても、その会社の業界における格がそれなりなら下手に座る。ごく自然に京都ではそういうことがなされているわけです。」堀場社長は以下のようにも言っています。
日本の場合は、人から人へ伝承している技術が重要であって、単なる欧米化したマネジメントは問題だと思います。それぞれに人を当て、技術、文化の地縁をつなげていく、その結果として、堀場というブランド力と、開発力のある企業をキープしていきたい、というふうに考えています」
【おもしろおかしく】
「サムコ」の代表取締役の辻理氏は京都の町をこう表現します。
京都は「ものづくりの町」と言われます。私はよく京都市や京都府のものづくり委員会や懇談会に呼ばれます。そこでよく出てくるのは、京都のものづくりの環境は平安、伏見桃山、江戸時代からずっとある、といった話です。この意味では京都は「職人の町」であり、さらには「職住工混在の町」です。隣には職人さんがいる、隣にはお商売をしている人がいる、というのが京都の環境です。最近の産業立地モデル地区などは、たいへんきれいに区分けされていますが、「混在」もまたいいわけです。京都は他にはないユニークな町です」
職人文化と京都の人々の考え方が切っても切れない関係になっているのです。

「おもしろおかしく」の社是を作った堀場雅夫顧問はその真髄を以下のように語る。
「一人ひとりが自分の人生において、自分のやっている仕事が本当に楽しい、生きがいのあるのだ、この世に正を享けてよかった、この仕事をしてよかった、というふうになってもらいたいのです。企業はその人の人生を意義ある状態で送る一つの場だと思います。
つまり企業が人がおもしろおかしく生きていける場を提供することが大切であると同時に、企業そのものもおもしろおかしい体質を持っていなければならないのです。個人の側からみれば、会社がおもしろおかしくなかったら、そんなところにいる意味はないといえます。そうかといって、初めからそこかしこにおもしろおかしいところがあるかというと、そうはいきません。だからみんな寄ってたかっておもしろおかしい職場にしていこうではないか、と考えなければならないのです
【人に尽きる】
カリスマ的経営者である日本電産の永守社長は企業買収であるM&Aを手がけるが、企業を買収した
後の企業の建て直しに手腕を振るう。
人間の顔を見ながら、人のやる気と潜在的な能力を引き出す職人的世界が広がる
能力の差は5倍でも意識の差は100倍まで広がる

アメーバー経営を考案した京セラ稲盛氏は次のように述べる。
「ときには競争するということがあっても、アメーバーはお互いに尊重し、助け合わなければ、会社全体としての力を発揮する事はできない。そのためには、会社のトップからアメーバーまで、信頼という絆で結ばれていることが前提となる。」
アメーバー経営~会社を20人から30人の小集団に分け、これらの小集団をそれぞれのリーダーに任せて経営する、という方式

「京都型ビジネス」の著者 村山祐三氏は以下のように語る。
本書を書き進めながら、この京都型ビジネスの根底にあるのは何だろうか、を自問自答してきた。そして行き着いたのが、華道の次期家元、池坊由紀の「人に尽きる」という言葉であった。本書で見てきた、京都の独創性、ビジネスの継続性、文化を続ける力、これらすべては、人が起点になったいる。まさに、京都は「人に尽きる」のである。
【番外編~歴史の層の積み重ね】
京都は歴史の街というのはあまりにも当たり前でわかりきった事である。ただ、京都の人は歴史をどう昇華しているのかについてはあまり知られていない。納得する記事がありましたので最後に紹介しておきます。
京都の老舗旅館柊家の西村社長の言葉です。
「柊家では古くなった部屋や建物を修理、維持しながら現代につなげる一方で、建物をただ保存するだけではなく、新しいものをそれを付け加える努力を積み重ねてきた。西村によると、柊家では当主がそれぞれの時代に「何か一つ大きなこと」をやってきたという。
西村もこれに従い、2006年に柊家新館を完成させた。これは西村の代の「一つ大きなこと」であり、これでもう私の仕事は終わったかな、と西村は冗談めかして言う。
しかし、ここにも重要な京都のシステムが存在していることに注目しなければならない。柊家は、歴史を積み重ねながらも、それに現代に通じる芸術性、文化性をその都度付け加えることにより、誰もが追随できない世界を構築してきたのである。
この「積み重ね」による歴史性は、ただ保存するだけの歴史では生み出すことのできない強みを京都にもたらしている。
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現代の建築技術を柊家の伝統に加えた別館~こちらよりお借りしました。
【まとめ~京都職人文化がなぜ自考力なのか】
さて、さまざまな京都の経営者の職人由来の言葉を紹介してきましたが、最後に自考力との関連性を考えてみたいと思います。自考力とはプロローグでも紹介しましたが自ら生きていく力です。食べていくというだけではない、継続して生きていく力です。
京都は古くは渡来民が切り開いた要所ではありますが、その後商人や工人を通じて様々な地域の庶民文化が交じり合った地域です。冒頭にあった切磋琢磨という言葉が表しているように常に競争圧力が働き、その中で生き残っていく事が求められました。
職人とは先の記事で書きましたが、何の職種であれ、一つに止まるまで追求を続ける、そういう思考形態の表れです。結果、京都の経営者達が口を揃えて言うのが「人に尽きる」という事です。これは人と人が生み出す同類圧力、そこを源泉にしてさまざまな活力や創意工夫、突き抜けた成果、万人の評価を得るバランス感覚は生まれるのです。
京都は目に見える相手だけでなく過去の人々の期待も含めて同類としています。そしてその同類圧力を切磋琢磨する仲間や自らに期待する人々として肯定視する文化が息づいているのが京都なのでしょう。堀場製作所の社是である「おもしろおかしく」とは自ら一人一人考えてよりよい社会を作っていこうという肯定感であり、必然的に自考力を促すメッセージなのです。
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堀場製作所HPよりお借りしました。

投稿者 tano : 2014年01月22日 List  

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