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2008年03月22日

帝国の構造とは?・・・軍事力+経済力+商業力そして支配観念

歴史上さまざまな帝国が存在してます。ローマ帝国、モンゴル帝国、そして現代のアメリカ帝国・・・・・。その他にもいろんな帝国がありますが、帝国には基本的な構造があるようです。
モンゴル研究の第一人者の杉山明氏が、モンゴル帝国のコンセプトについて解説している。
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『クビライの挑戦』 杉山正明 より

 フビライハーンはモンゴル帝国の権力の根源に草原の軍事力をおいた。しかしそれだけでは帝国は維持できない。ユーラシアの隅から隅までを武力が制圧することは、現実にはありえない。必要なものは富であり、それを維持する商業の流通である。
 富を管理し、いっそうの富を作り出す仕組みが必要であった。統治から、さらには経営に進む必要があった。富の源泉は、巨大な属領であった。とくに、ユーラシア最大の富と人口を持つ中国である。要するに「中華の経済力」が国家構想の2番目の柱となる。
 そのためにはまず、中国全土を手中に収める必要がある。そして、草原の世界と中華の世界という二つの異なる世界をつないだ新しい国家の形と仕組みを作らなければならない。それは軍事と経済の共生といってもいい。草原と都市の複合といってもいい。
ただしただ単にふたつの世界、ふたつの要素をくっつけただけでは駄目である。草原世界を骨、中華世界を肉とすれば、そこに生気をあたえ循環する血液が必要であった。その血とはなにか。それは物流であり、通商である。
 では、その主な担い手は誰か?それは、すでにモンゴルとむすんでユーラシアの内陸通商を握っていたムスリム商業勢力をおいて他にない。それを従来よりももっと国家機構のなかにとりこんんで、政治権力と行政組織のもとに、よりいっそう密着させたかたちでシステム化することである。巨大・多様な社会を流通面から国家権力が誘導した形で、もっと有機化し、産業化をうながすことである。つまり、クビライの国家構想の第三の柱は「ムスリム」の商業力である。
 ここにクビライの新国家の基本構想は、草原の軍事力、中華の経済力、そしてムスリムの商業力というユーラシア史をつらぬく三つの歴史伝統の上に立ち、その三者を融合するものとなった。クビライ政権は、草原の軍事力の優位を支配の根源として保持しつつ、中華帝国の行政パターンを一部導入して中華世界を冨の根源として管理する。そしてムスリム商業網を利用しつつ、国家主導による超大型の通商・流通を作り出す。
 当然、草原と中華を組み合わせる軍事・政治体制が必要である。政治権力と物流システムの要となる巨大都市が必要である。その巨大都市を発着・終着の地とする交通・運輸・移動の網目状組織が必要である。
 そのうえ、大カアンはすべての構成要素をとりしきるかなめにいて、軍事・政治・行政・経済の要点をおさえ、物流・通商に課税して国家財政を充実させる。その収入から賜与というかたちのものをモンゴルたちにわけあたえ、モンゴル連合体を維持する柱とする。その賜与は、おそらくその多くが、ふたたびムスリム商業資本を通じて、物流・通商活動に投入され、モンゴル全域でいっそうの経済活動の活性化をもたらす。こういう図式であった。

この図式を用いて他の帝国を模式的に現わしてみると、以下のように言えるかもしれない。
ローマ帝国=ローマの軍事力+エジプトの経済力+ギリシャ・フェニキアの商業力
アメリカ帝国=アメリカの空軍力+日本の経済力・サウジの資源力+ユダヤの商業力
他の帝国も考えてみると面白い。帝国を作っている支配民族は、力(軍事力)だけでは広大な領域・多様な民族を支配できないことを熟知している。そこで支配領域の民族性を利用した。
さらに考えると、この帝国を作り出した構想力を生み出しているものはなんだろうか?世界史上でたびたび小~大帝国を形成している遊牧民による寄生力、そのためのだまし能力ともいうべきものではないだろうか?彼らは元々比較的少数であり、その前提で多数の民族を支配する方法を考えてきたはずだ。
たとえば、モンゴル遊牧民は、古くから軍事力とともに統合観念も作り出した。たとえば“”という神観念を作り出し、支配民族を観念的にも統治してきた。(中国の皇帝はそれを借用した。)
さらに時代は下がって、もともと遊牧→バイキングのアングロサクソンは、(遊牧→)ユダヤと半ば合体して、金融資本+株式システムを作り出し、金融資本による世界支配を行っている。それを許してバックアップしているのが個人主義思想という奴隷思想。この思想によって人々は賃金奴隷と化している。
このような支配観念を生み出し、当然のように思わせることこそ彼らが最も長けていることなのかもしれない。とりわけ、軍事力の時代から市場の時代に移るにつれその傾向がつよくなっていく。(現代では金融資本の先でマスコミが観念支配している。)
by Hiroshi

投稿者 ihiro : 2008年03月22日 List  

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