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2008年08月30日

ミトコンドリアDNAとは【基礎知識】

人類や縄文人の起源を探究していると必ず出くわす『ミトコンドリアDNA』ですが、今回はこの基礎知識を押さえなおしておきたいと思います。
ミトコンドリアが明かす-ヒトの起源とアイスマンの子孫-を参照させて頂きました。

ヒトの体は、およそ60兆個の細胞で構成されているが、その細胞の一つ一つに核があり、核の中には両親から由来する二組の染色体が収められている。染色体は23対46本あり、DNA(デオキシリボ核酸)と各種タンパク質から出来ている。

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一つ一つの細胞内には核の他に、粗面小胞体や滑面小胞体、ゴルジ体、リソソームなどいろいろのものが詰まっているが、その一つがミトコンドリアと呼ばれる小器官である。
ミトコンドリアという小器官は、細胞が活動するためのエネルギーをつくりだすという、極めて重要な働きをしている。 しかも、核DNAとは異なる独自の、mtDNAを持っている。
mtDNAは核DNAと同じ二重らせん構造だが、核DNAが線状(糸のように細長い形状)であるのに対し、次図のように環(リング)状である。

saiboubai_no_mt.jpg

環(リング)状のmtDNAは、右図のような遺伝子を持っている。全部で37個の遺伝子があり、それらはmtDNAの93%の領域を使って指定されている。無駄な塩基配列はわずか7%しかなく、90~95%が無駄だと言われる核DNAとは、際立った違いを見せている。下図のオレンジ色で示された部分が、何の働き
もしていないmtDNAの領域で「Dループ」と呼ばれている。この領域は、塩基置換の起こる速度が特に速いので、mtDNAの分析によく使われる。

D-ru-pu2.jpg
mtDNAは、進化の研究をするのに有効な、いくつかの特徴を持っている。

一つは、何といってもmtDNAの数の多さである。
一つの細胞にミトコンドリアは数百から数千個含まれており、ミトコンドリア一個にmtDNAが5~6個存在する。そのため一細胞当りでは少なくとも、1000個以上のmtDNAが存在することになり、一細胞当り1個の核DNAとは、比較できないくらいの大量収集が可能であり、化石化した骨などからの困難な抽出も、確率的に可能性が高いことになる。

二つ目は、塩基置換(突然変異)の起こる速度が、核DNAに比べて5倍から10倍も早いことである。
これは、たとえばヒトとチンパンジーとゴリラのような近縁種の間で、どういう進化をしたのか、5倍~10倍の細かい刻みの時間帯で調べることが出来るということに他ならない。

三つ目は、母性遺伝をする、ということである。
核DNAの場合、父親のDNAと母親のDNAとが半分づつ遺伝するが、mtDNAは不思議なことに、母親のものだけが子供に伝わり、父親のものは次世代に全く関与しない。
これは米川博通らによれば、受精の際に一旦、ミトコンドリアを持った精子が卵子の中に入るが、細胞分裂の始まる初期の段階で、父親由来のミトコンドリアが除去されてしまうという、奇妙な機構が存在するかららしいのである。
何故そういう機構があるのかはともかく、これは系統関係を復元するのに、mtDNAが極めて適しているということが出来る。
このように母性遺伝というmtDNAの特性は、ヒトとチンパンジーの分岐年代を明らかにしたり、はるかな世代を超えて祖先を特定出来るなど、種の起源や民族の系統の把握などに威力を発揮する。

しかし、母性遺伝と言う特性は好いことばかりではない、注意しなければならない面も持っている。たとえば、戦闘軍団の襲来が新たな集団発生の契機となったような場合、mtDNAには何の痕跡も残さない。軍団が一般的には男性だけの集団であるからだ。
戦闘軍団ではなく、渡来人の場合も男性主体の移動集団というケースが多かったのではないか、と想定できる。
したがって、mtDNA上は差異が認められない集団同士であっても、形態上や他の遺伝特性などが違う場合、十分な検討が必要である。
(したがって、最近では、男性の持つY染色体が必ず父親から伝えられるという特性を利用して、mtDNA分析を補完するようになって来ている。)

大量の部族が襲来したと思われる日本の起源を探る上では、Y染色体によるmtDNA分析の補完は不可欠かもしれませんね。

投稿者 naoto : 2008年08月30日 List  

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