2014年10月13日
2014年10月13日
ロシアの歴史に“民族の本源性”を探る~エピローグ『本源性を、闘い守ってきたロシア』
ロシアの本源性とその可能性について、歴史をたどりながら探ってきましたが、私たちが今まで知らなかった「ロシア」が見えてきたのではないでしょうか。簡単にシリーズを振り返ってみましょう。
○プロローグ
現代ロシアには、その本源性を感じさせる精神性や暮らし方が多く残っています。ミール=共同体・平和という言葉はロシア人が好んで使う言葉です。精霊信仰を色濃く残している宗教観や、自給自足・自立の気風をもったダーチャ(自給菜園)など、人々の暮らしには古くからの共同体気質が脈々と受け継がれています。
○森と共に生きてきた民族
古代に目を向けると、ロシア人は長く森と共に生きてきた「森の民」でした。ヨーロッパの略奪闘争を逃れ、森に住み、本源性を保ちながら共同体を守ってきた人々が、ロシア人の源流となっています。
○森のなかの「航海者」がシベリアの地を拓いてきた
広大な版図を持つ現代のロシアですが、そこにあるのは欧米の侵略と異なり、自ら船をつくり、曳き、農地を拓いた開拓者の姿でした。そして先住民の文化を破壊することなく共存し、南方の遊牧騎馬民族から共同体を守る自衛的部族連合が形成されてきました。
○自衛国家としてのロシア
ロシア帝国の時代に至るまで、各地の共同体は自治権を持ち、民会によって収められてきました。ロシア帝国以降は国家としての形態を鮮明にし、西欧諸国に伍していく道を進みますが、共同体を核に他国の圧力に対抗する自衛的国家統合がその特徴でした。
○コサックが象徴するロシア魂
その国土防衛の要を担ったのが、戦う本源集団コサックでした。彼らはソ連時代の圧制で徹底的に弾圧されますが、ソ連崩壊後のロシアで復権を果たし、国土防衛の士として注目されています。ロシア人にとってコサックは、古くからの共同体・国土を守る精神的な象徴にもなっています。
○近代思想と本源性の葛藤を描いたドストエフスキー
ロシア帝国時代、急速な近代化に舵を切ったロシアは、人々の暮らしや考え方に、さまざまな矛盾と葛藤をもたらしました。ドストエフスキーはその潜在思念の叫びを文学として表現してきたといえます。日本にロシア文学のファンが多いのも、その本源性、近代化の道を歩んだ歴史が日本のそれと重なるところが大きいからなのかもしれません。
シリーズ最終回は、ロシアと日本の共通性を探り、これからの可能性について考えてみたいと思います。
投稿者 tanog : 2014年10月13日 Tweet