2022年4月14日
2022年04月14日
古代人のの交雑~移動、移住からどう我々につながるか~
前回の記事ではホモ・サピエンス、ネアンデルタール人、デニソワ人、ホモ・アンテセッサーの関係についてまとめ、ホモ・アンテセッサーはアジア起源説という可能性が高く、ネアンデルタール人やデニソワ人の絶滅は滅ぼされたという受動的なものではなく、交雑を繰り返すなかで純粋な種が減っていたという仮説に行きつきました。
今回は交雑による古代人のDNAデータの特徴から祖先たちの移動、移住を見ていき、現在のヒトとの関係がどうなっているのか追求していきます。
■古代人DNAが発見された地域に住む住民のDNAはまったく異なる
まずは古代人のDNAが見つかれば見つかるほど、データの蓄積から詳細な研究が出来ことは言うまでもないです。
移動はもちろん、どの年代に移住し、交流があったかも分かってきています。
蓄積されたデータから交雑に関するあらゆる研究が発表されています。
・古代人類ホモ・エレクトスは約11万年前までいた…他の人類と交配の可能性も
・人類とネアンデルタール人が想定よりも古くからセックスしていたことが判明
・「アフリカ最古の人類のDNA」が、わたしたちの祖先の謎を解き明かす
など。
が、『交雑する人類』デヴィッド・ライク著にはこう記述しています。
「人類集団の現代の遺伝子情報から、古代の出来事の詳細な実態を知ることはできない。問題は、人々が隣り合う集団と混じり合い、過去の出来事を示す遺伝的な痕跡が次第に不鮮明になっていくことだけではない。古代DNAの分析からあきらかになった遥かに厄介な問題は、今ある場所に住んでいる人々が、ずっと昔にその場所に住んでいた人々の子孫だということはほぼありえないという事実だ。」
先祖たちは同じ場所に滞在もしていなければ、一度きりの移動でもないということ。古代人の移住はかなり複雑ということが分かっています。
しかも、異なるDNAを持つグループがある地域を入れ替わり立ち替わり、または共存していたとか。
共存していたことは上記にある参考文献から分かりますが、入れ替わり立ち替わりはどうでしょう?
また、そこから我々人類の先祖が分かるのでしょうか?
重ねますが、これまでの発掘で古代人のDNAデータが蓄積されてきています。
そのDNAパターンの動き(発掘場所)から古代人の移動を探ります。
『交雑する人類』について非常に分かりやすくまとめている記事から抜粋します
純粋に雑種的であること−デイヴィッド・ライク著『交雑する人類』読書メモ
およそ5万年前から1万年前、およそ4万年間の古代人グループの入れ替わりを復元したものである。「基底部ユーラシア人」「古代北ユーラシア人」「最初のヨーロッパ狩猟採集民」などとあるのが、古代人のグループであり、それぞれ違ったDNAの特徴をもつ。
- 左上が3万9000年以上前の人々の動き
①の人びとは、5万年以上前にアフリカからユーラシアへと移動した人びとの子孫
※①の人のDNAと同じパターンを持つ子孫は、現在のアジアにもヨーロッパにも見られない
②はその後のヨーロッパの狩猟採集民の共通の祖先。
- 左下が3万3000年前〜2万2000年前の人びとの動き
③は、②の人びとすなわちヨーロッパの狩猟採集民の共通の祖先から分かれヨーロッパ東部に向かったグループであり、グラヴェット文化を発展させた。この人びとは3万年前に東からヨーロッパ西部へ移動し、先住のオーリニャック文化の担い手を南西へと追いやった。このグラヴェット文化のグループ自身も北方から迫る氷河によって、北ヨーロッパの地を追われた。
- 右上の図は1万9000年前から1万4000年前(氷河が北部ヨーロッパ全域を覆い尽くした頃)
④に示すマドレーヌ文化の担い手となる人びとが、現在のスペインからフランス方面へ向かった。この人びとは②の人びとの子孫であった。グラヴェット文化のグループがヨーロッパを覆い尽くした間にも、オーリニャック文化の系統がはどこかで存続し、そしてマドレーヌ文化の担い手として復活を遂げたという。
- 右下の図である。1万4000年前(温暖期に至り、スイス・アルプスからイタリア北部まで続いていた氷河が溶ける
⑤の人びと、バルカン半島やイタリアの狩猟採集民が、西へ、北へと拡散し、マドレーヌ文化の担い手に取って代わった。この⑤の人びとは、先行するマドレーヌ文化の担い手とは全く異なるDNAをもっていた。このあたりでようやく、現在のヨーロッパの人びととつながってくる。
※さらに古い年代(185万年前など)をまとめたものが『人類史マップ~サピエンス誕生・危機・拡散の全記録~』に掲載されていますが、この年代から古代人類の移動・拡散は盛んです。
以上の記載から、人類は行ったり来たりを繰り返し、拠点を移し、その拠点に別の集団が移り住む、または共存するなど、事実はかなり複雑で、進化系統は単線的なツリー構造ではないということが分かります。
移住と、集団の交代が繰り返され、それと同時に、人類の集団というもの自体が「交雑」の結果としてひとつのパターンをつくりつつ、生じたり消えたりする”変容に開かれたもの”であることを示すことになります。
現代人が思っているよりも昔から古代人は交雑し、仲間を増やしていた可能性があります。
このことは、縄文人が弥生人を受入れ、混血してきたことにも似ています。人類のDNAには、他人種を同じ種と認識し、さらには交配できる機能を備えたことになります。
現時点では進化系統が複雑であるが故に、人類の起源がどこなのか、どの種が人類の祖先なのかは明確には分かりません。これを暴くにはもっと他地域のもっと多くの化石の発掘が必要です。
また、交雑について面白い研究がある。
『古代の人類がどのような交配を行っていたかがシミュレーションから明らかになる』
古代の人類が約200万年前に他の人類から分離した未発見のヒト集団と交配した可能性が示唆されたとのこと。解析ツールが示唆した「未知の人類」は、ホモ・エレクトスなどと同世代の種である可能性が高いと推測されているそうです。
交雑についてはまだまだ未知が多いです。今後も注目し、追求していきます。
投稿者 matudai : 2022年04月14日 Tweet