2021年9月28日

2021年09月28日

縄文再考:縄文人のルーツ②~日本人のルーツをDNAの塩基配列から考える~

図:母系遺伝のハプログループ

図:母系遺伝のハプログループ(右側)

こんにちは!縄文人のルーツ続編です。

前回の記事では、スンダランド→港川人の南方モンゴロイドの可能性を探索しました。今回は、もう少し年代をさかのぼって、祖先集団(基層集団)の遺伝情報と現代人のDNAとの比較から、縄文人のルーツを辿っていきます。

 

各国の人びとの祖先のルーツを調べる上で、「ハプログループ」に注目する調査研究が近年の常套手段となっています。ハプログループとは、人間の細胞内の「ミトコンドリア」と呼ばれる器官のDNAの多型を用いて分類される遺伝的なグループのこと。 ミトコンドリアは母系で受け継がれます。そのため母系の祖先のルーツを辿ることができると考えられているのです。

図:ミトコンドリアDNA

図:ミトコンドリアDNA

 

前回の仮説で言えば、スンダランドの民を起源とする南方系モンゴロイドはハプログループM系に属します。一方で、これまで通説とされてきた東アジアの民を起源とする北方系はハプログループD系に属します。では、日本人はいくつの系統に分けられるのでしょうか?

 

日本人は祖先の系統ごとに大きく10種のに分類されています(現代日本人が該当する数が多い順に示します)。遺伝子には「祖先にどのような特徴があったのか」という情報が刻まれており、これを調べることが祖先を知る手掛かりになると考えられているのです。

 

■ハプログループD/遠い血縁=中国中部の人々

(日本人の35%以上が該当)

中国中部が起源とされるハプログループDは、日本人が該当する最大グループです。日本以外では中国や朝鮮半島にも多く、東アジア集団を特徴づけるグループといえます。この祖先集団は、中国中部で原始的な稲作を開始し、その技術とともに日本へやって来ることで弥生時代の到来に貢献したと考えられています。

 

■ハプログループB/遠い血縁=ハワイの原住民

(日本人の約13%が該当)

中国南部が起源とされるハプログループBは、ハワイを含む太平洋の島々から南米大陸まで、全世界に分布を拡げたグループです。日本には比較的古い時代に南方からやってきて、縄文人になったと考えられています。

 

■ハプログループM7/遠い血縁=スンダランドの民

(日本人の約13%が該当)

海底に沈んだ「スンダランド」と呼ばれる大陸が起源とされるハプログループM7は、日本人独特の集団で日本列島に最も古くから居住しているグループだと考えられています。数万年前に南方から日本へやってきたと考えられています。港川人もココに属します。

図:スンダランドの民

図:スンダランドの民の子孫??

 

■ハプログループG/遠い血縁=シベリアの人々

(日本人の約7%が該当)

中国北部が起源とされるハプログループGは、シベリアなど北部地域に多いのが特徴で、日本には中国経由でやってきて弥生人になったグループと、シベリア方面からやってきてアイヌ人になったグループがいると考えられています。

 

■ハプログループA/遠い血縁=アメリカ先住民

(日本人の約7%が該当)

シベリアが起源とされるハプログループAは、狩猟主体の生活をしていたと考えられており、現代では東アジアからアメリカ大陸まで広く分布しています。日本には比較的古い時代にやってきたと考えられています。

 

■ハプログループN9/遠い血縁=カムチャツカの人々

(日本人の約7%が該当)

ユーラシア北部が起源とされるハプログループN9は、北東アジアに分布しており、日本には比較的古い時代にやってきて縄文人になったグループと、 比較的新しい時代にやってきてオホーツク文化を形成したグループがいると考えられており、古代から魚を食していたと考えられています。

 

■ハプログループF/遠い血縁=東南アジアの人々

(日本人の約5%が該当)

東南アジアが起源とされるハプログループFは、東南アジアで最も多くの人が該当するグループで、それ以外にはあまり拡がっていないのが特徴です。大陸を北上して朝鮮半島経由で日本にやってきた可能性が高いと考えられています。

 

■ハプログループZ/遠い血縁=フィンランドの先住民

(日本人の約1%が該当)

中国北部が起源とされるハプログループZは、現代ではシベリアを中心に北欧の一部地域にも拡がっており、ヨーロッパとのつながりをもつアジアでは珍しいグループと言われています。

 

■ハプログループM8a/遠い血縁=中国の漢民族

(日本人の約1%が該当)

中国北部が起源とされるハプログループM8aは、大陸で歴史を築いた勇敢な民族である「中国漢民族」を特徴づけるグループといわれています。日本には弥生時代に稲作とともにやってきて弥生人になった可能性が高いと考えられています。

 

■ハプログループC/遠い血縁=中央アジアの人々

(日本人の約1%が該当)

中国北部が起源とされるハプログループCは、中央アジアからアメリカ大陸まで広く分布しており、日本には弥生時代に一部の人々がやってきたと考えられています。

 

以上のように、現代日本人は複数のハプログループのDNAを遺伝情報として持っており、どれか一つを起源として結論づけるのは難しいというのが実態と言えるでしょう。いくつかの民族が日本列島に入っており、その中で混血したり、民族として途絶えたり、旧石器時代~縄文時代に生存外圧によって淘汰されたと考えるのが全うであると思われます。さらには、弥生時代、古墳時代に日本に入った渡来人もいるため、このように多種多様なDNA系統が受け継がれてきたのだと考えられます。

 

次は、今回挙げたハプログループ系統の祖先がどのようなルートを辿ってきたのか?を更に深堀していきたいと思います。

投稿者 asahi : 2021年09月28日  



 
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