2015年6月16日
2015年06月16日
独特の災害史観を持つ日本人は何度も立ち向かい乗り越えてきた2
独特の災害史観を持つ日本人は何度も立ち向かい乗り越えてきた(リンク)』からの転載2回目です。
==========================
そして、このような「脆弱な国土」と繰り返し起こる災害によってはぐくまれたのが、「自然災害史観」「震災史観」ともいうべき、日本人の独特の精神性であるというのです。
歴史をひもとけばわかりますが、日本の先人の多くは紛争ではなく災害で亡くなっています。中国やヨーロッパでは災害よりも圧倒的に紛争で亡くなった人が多いのだそうです。
紛争、つまり「人為」で命を落とした場合は、相手を恨んだり、なぜ負けたのかを考えます。次に備えて論理で考える思考が得意になり、それは都市設計にも影響してきます。
例えば中国の長安は高い城壁で町を囲んでいましたが、平城京は城壁を採用しなかった。その違いは、「外から敵が攻めてくる地かどうか」でした。
日本の場合は外壁がなくても誰も攻めてきませんでしたが、災害などの「天為」に見舞われてきました。
多数の死者が出ても、原因が災害では恨む相手がいません。
現代ならともかく、科学技術も発展していなかった時代ですから、災害への予測も備えもままならなかった。抗議する相手もいなければ、防ぐ方法もなかった。……
と、述べた上で、大石氏は論文をこうまとめています。
****************************************引用
……このように、日本人は中国や欧米のように理屈で説明できる「人為」でなく、「天為」で命を落としてきた民なのです。そして「天為」で命を落とした死者への思いは、「安らかに成仏してください」というものにしかなりえない。
人が大勢亡くなった時、あるいは愛する者の死に接したとき、人間は最も深くものを考えるものだと思うのですが、圧倒的な自然の力による災害で多くの人が亡くなる経験をしてきた日本人は、「ただひたすらにその死を受け入れる」民になったのです。
人間同士のいさかいではなく、自然のみが驚異であった日本人の精神性が、他国と違っていても全く不思議ではありません。
日本人はグローバル化が進むなかで「人為史観」「紛争史観」の国々とわたり合っていかなければならなくなり、契約の仕方、主張の仕方一つとっても「世界標準と違う」と指摘され、「遅れている」かのように批判されてきました。日本人自身も立ち位置を見失いかけていました。しかし、これは歴史によって培われたものですから、不安に思ったり、自信を失う必要はないのです。
今回、人知を超えた規模での大きな災害が日本人を襲いました。しかし冒頭でも触れたように、日本人はこれほどまでの甚大な被害を前にしても、泣き崩れることなく、略奪なども起こさず、秩序だった避難生活を送っています。このような態度は阪神大震災のときにも世界の賞賛を受けましたが、これは歴史的に培われた、けなげさ、勤勉さなのです。
今後は、たしかに非常に厳しいところからの復興が待っているでしょう。計画停電は今後もしばらく続きますし、GDPも下がるでしょう。国民は耐乏生活を強いられることになるかもしれません。
しかし、こういうときだからこそ、われわれ日本人はせめてこの災害を、日本人が日本人としてもう一度歴史を振り返り、凛とした生きざまを取り戻す機会にしていかなければなりません。はたして、贅沢三昧の何不自由ない暮らしに慣れていくことが国民としての目標だったのかどうか、もう一度見直す機会を神様から与えられたと考えるべきではないでしょうか。いや、そういう機会にしていかなければならないのです。
日本は本当に美しい国土です。自然は豊かで、農業にも適している。放っておいても木が生えてくるという豊潤な国土を持つ国などそう多くはありません。北から南まで、気候も亜寒帯から亜熱帯まで多様にあり、美しい四季の移り変わりもある素晴らしい国土です。
しかし、これまで指摘してきたように、他国にはない厳しい条件も同時に持っている。「素晴らしい」と眺めているだけで手を抜いてしまえば、一気に荒れ果てていく宿命も持っているのです。
少しでも住みやすくしようと自然へ手を入れてきた環境は先祖からもらったものであり、私たちもよりよい形に改善して子孫にわたさなければならないものです。しかし今日、それを「公共事業」という言葉に置き換え、非難し、否定する風潮が強くなりました。これは未来、つまり将来世代に対する怠慢と言ってもいいのではないでしょうか。
今回の地震と津波で、三陸沖は最大で70センチも地盤が沈下してしまいました。被災して住む家をも失った方々が、今後どこでどういう暮らしを展開していくのか、復興過程できちんと考え、計画的に整備していかなければ、また百年のうちに同じ惨事に見舞われてしまうかもしれません。あらためてあの地域での暮らし方を考え直し、環境を整えていく必要があるでしょう。
われわれ日本人は何度も何度も大きな災害に見舞われながら、それでも何度も立ち向かって乗り越えてきたのです。悲惨な目にあったのは今の自分たちだけではない。私たちの先祖もみんな乗り越えてきたことです。
日本は、必ず立ち上がる。その生きざまを世界に示そうではありませんか。……
投稿者 tanog : 2015年06月16日 Tweet