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現生人類につながる類人猿はユーラシアで生まれた

「かつてアフリカにはゴリラやチンパンジーに極めて近い類人猿が生息し,その後絶滅したのは間違いない。これら2 種は人類に最も近い類縁だから,私たちの祖先は他のどの地よりもアフリカ大陸に住んでいた可能性が高い」。

ダーウィン(Charles Darwin)は1871年に出版した『人間の由来(The Descent of Man)』でこう予測しています。

当時はアフリカから類人猿や人類の化石はまだ見つかっていませんでしたが、その後発見された化石群によって、人類の起源に関するダーウィンの予測が裏づけられた・・・はずだった。しかし、近年の化石証拠が増えるにつれて、アフリカ起源説が崩れてきています。

図 多様な類人猿の祖先(左からドリオピテクス、シバピテクス、オウラノピテクス)

 

この間、人類の起源を探る中で、現生人類につながる原人=ホモ・エレクトスが、ユーラシア発の可能性 [1]を紹介してきました。

では、類人猿はどうでしょうか。

人類につながる類人猿は、どこから生まれ、どのように進化したのでしょうか。その謎に迫っていきます。

■アフリカでは大型類人猿の化石が見つかっていない

現生の類人猿は数も種も非常に少ない。ところが、中新世(2200 万年前~ 550 万年前)の霊長類界を支配していたのは類人猿だった。100 種に上る類人猿が旧世界、特にフランスから中国にわたるユーラシアと、ケニアからナミビアに至るアフリカに分布していた。これらの多種の類人猿の中から一部が生き残り,人類が誕生したと考えられます。

図 中新世類人猿化石の分布

 

しかし,アフリカの類人猿は、小型の化石しかみつかっていないのです。

大型類人猿の化石はユーラシアのみ見つかっており、インド、東南アジア、西および中央ヨーロッパ,ギリシャ,トルコ、中国からしか発見されていません。

 

■類人猿の大移動 ⇒ユーラシアで大型類人猿化

類人猿調査の第一人者であるトロント大学のD. R.ビガンの研究によって、類人猿の誕生と大移動は、以下のような仮説が考えられています。

図 類人猿の大移動

(1)アフリカは類人猿のゆりかごであり、2000 万年以上も前にアフリカで最初の類人猿が生まれた。海水面が上昇と下降 を繰り返すたびにアフリカはユーラシアと分離と接続が繰り返された。

1700 万年前~ 1650 万年前に東アフリカとユーラシアが陸橋で結ばれたとき, 中新世初期の類人猿はユーラシアへ進出した。

(2)その後,約300 万年間に彼らは西ヨーロッパから極東まで拡散し,大型類人猿が進化した。原始的な類人猿集団の中にはアフリカへ戻ったものもいた。

(3)海水面の上昇によってユーラシアがアフリカから切り離されると,初期のユーラシアの大型類人猿から多様な形態をもつ集団が生まれた。

(4)中新世末に気候大変動が起こり、ユーラシアの大型類人猿の多くは絶滅した。シバピテクスとドリオピテクスに代表される2つの系統が生き残り,東南アジアとアフリカ熱帯地域へ移住した。

 

■アジア類人猿とヨーロッパ類人猿

ユーラシア大陸で生き残った、シバピテクスとドリオピテクスは、気候変動とともに、アジアとアフリカに移動しました。

この2種類の類人猿の祖先は、は現生大型類人猿と似た特徴を備えている。長くて頑丈な顎を持ち,切歯が大きく,犬歯は牙状というよりはナイフのようで,大臼歯と小臼歯は大きく, 咀嚼面が比較的単純な形をしている。軟らかな完熟果実を食べるのに向いた構造だ。鼻は小さくなり,嗅覚に代わ って視覚の重要性が増したことをうかがわせる。

最も重要なことに、シバピテクスもドリオピテクスも移動機能が高いということ。 肘関節は十分に伸展でき,ぶら下がりや腕渡りによる枝から枝への移動が安定してできたようだ。

頭蓋構造からすると、ヨーロッパで化石が見つかっているドリオピテクスは、チンパンジーやゴリラの頭蓋骨に近く、両者の祖先と考えられている。シバピテクスは頭蓋骨の全体像の化石はみつかっていないが、化石の発見場所(インド北西部)からオランウータンの祖先と考えられている。

 

■類人猿進化の中間まとめ

■現在,生息している類人猿は5属だけで、生息域もアフリカと東南アジアのごく一部に限られている。だが2200 万年前から550 万年前にかけての中新世には,数十もの属の類人猿が旧世界で隆盛を誇っていた。

 

■現代型のアフリカ類人猿と人類はアフリカで進化したと考えられてきた。しかし近年,化石の発見が続き,最初の類人猿はアフリカで生まれたが、大型類人猿と人類につながる系統はユーラシアで生まれたことがわかってきた。

 

■化石記録によれば,現生の類人猿と人類はユーラシアにいた2系統の古類人猿の子孫だ。アジアから出土したシバピテクス、ヨーロッパで見つかったドリオピテクスの2つで,前者はアジア類人猿(オランウータン)の祖先、後者はアフリカ類人猿(チンパンジー、ゴリラ)の祖先だと考えられる。

 

参考・引用(図含む):日経サイエンス 地球が「猿の惑星」だったころ

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