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次代は、ミルクを利用しない文明が中心になる

あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いします。m034.gif

この年末に環境考古学の博士、安田喜憲氏の著書「ミルクを飲まない文明」という著書に巡り合った。安田先生は私の最も尊敬している縄文学の第一人者であるが、同時にこの著書で現在の西欧型市場・金融主義の文明原理を明確に否定し、それに代わる文明を提起されておられる。非常に共感を呼ぶ内容も多く、年始の縄文ブログの最初の記事として先生の著書よりいくつか引用させていただきたい。
膨大な情報量があるので、いくつかは先に類ネットで紹介させていただいた。
長江文明の誕生、文明史、消滅までの3部作である。長江文明を知る事がこの新しい文明原理のヒントでもあるのでまずはそちらを参照されたい。

江文明の始まり~西アジアより600年早く始まった東アジアの都市文明 [1]

 長江文明~稲作文明が持つ「勤勉」という文化。文字を持たない「言霊」文化 [2]

 長江文明~長江文明の衰亡は気候変動ではなく黄河牧畜民の侵略にあった。

 m117.gifミルクを利用しない文明、利用する文明

今まで古代文明と見なされてきた文明は、メソポタミア文明やエジプト文明、そしてインダス文明、黄河文明である。この4大文明が文明であるための要素は、文字があり、金属器を使用し、都市を建設し、そこには王や神官たちの支配者が暮らし、ピラミッドや神殿、そして王宮などの巨大建築物を構築することだった。これらが文明の文明たる要素であった。しかし、こうした文明の要素は、畑作牧畜民の文明要素にすぎなかったことを本書では何度も触れてきた。これまで「4大文明」と呼んできた文明は、すべてヒツジやヤギを飼う畑作牧畜文明である。それは、ミルクを利用する文明だということでもある。この畑作牧畜文明が作り出した文明のみを、私たちはこれまで文明と呼んできたにすぎないのである。したがって「畑作牧畜文明の文明要素の一つでも欠ければ、それは文明ではない」と言われてきた。文字と金属器を持たない長江文明は、それゆえ、巨大な都市を持ち、王や神官がいても文明とみなされてこなかった。

マヤ文明は、石器だけであの巨大な文明を構築した。インカ文明は、文字の代わりにキープ(縄の結び目)によって情報の伝達網を構築していたのである。前述したように今まではヒツジやヤギの自然生態系に対するインパクトを考えるうえでも、たいへん重要な意味を持っていた。なぜなら、ミルクを採る為の家畜が、森を食いつぶし、土地を砂漠化させ、海をも死の海に変えていたからである。ところが、環太平洋の諸文明―日本列島の縄文や長江文明、さらにインカ文明やマヤ文明はヒツジやヤギを飼わなかった。日常の主たる動物タンパク源は、魚介類と森に棲む野生動物であった。ここが畑作牧畜民と大きく違うところである。

m117.gifクリックしてみてください世界地図 [3]

m117.gif環太平洋の共通した世界観
マヤ、インカ、長江文明はきわめてよく似た世界観を持っていた。
なによりもまず、それらの文明の最高神は太陽であった。日本列島で誕生した神道の最高神も天照大神という太陽神である。そしてマヤ文明のピラミッドは山のシンボルであり、マヤの人々もインカの人々も、稲作漁労民と同じく、山を崇拝するとともに、玉を至高至上の宝物とした。日本列島の稲作漁労民も山を崇拝し、天皇の「三種の神器」(鏡・玉・剣)の一つは玉である。マヤ文明の人々は「セイバの木」と呼ばれる聖樹を崇拝した。柱を崇拝し、盧しょう柱を立てた中国の少数民族のミャオ族や、柱を崇拝する日本の神道と同じである。そしてマヤの人々は美しいケツァルを崇拝し、長江の人々と同じく、鳥の羽根飾りの帽子をかぶっていた。長江の人々が崇拝したのは鶏であるが、それは鳳凰となって日本人も鳥を崇拝した。
太陽・山・玉・生命樹・柱・鳥・そして蛇・トラかジャガーーーーこのようにきわめて共通した世界観が長江文明、日本列島を含む周辺の稲作漁労民の諸文明、そしてマヤやインカの文明には存在したのである。それは「環太平洋造山帯」という自然災害の多い風土に暮らしたモンゴロイド特有の世界観であろうか?

■「命の水の循環」を重視する環太平洋の人々
■稲作漁労民の本領~ものつくり
■新たな「生命維持装置」=音環境の発見
■新しい科学の時代を創造する
この著書には環太平洋(ミルクを飲まない文化)の特徴、可能性として上記のように、いくつか挙げている。今回は紙面の都合でタイトルの紹介に留めますが、この4つのタイトルの中から私が最も感銘を受けた音環境という処を紹介しておきたい。年始に相応しい記事である。(他の3つは後日、るいネットで紹介していきます)

m117.gif新たな「生命維持装置」=音環境の発見

畑作牧畜民の文明にのみあこがれを抱いてきた日本人の文明観に決定的な方向転換を突きつける科学的分析結果が提出された。それが大橋力氏の高周波の研究である。
大橋氏らは20kHz以上の高周波が健康によいことを突き止めた。そしてその20kHz以上の高周波を、人間は耳ではなく皮膚を通して聞いており、それが脳幹に大きな影響を与え、脳内の神経伝達物質の活性化を引き起こす事を解明した。大橋氏によれば日本列島の稲作漁労民の作り出した農村の環境は20kHz以上の音環境で満たされているのに、畑作牧畜民の作り出した都市の音環境は大半が20kHz以下だという。最も高周波が多く出ているのは熱帯雨林だった。南米のコロンビアの熱帯雨林には、100~140kHzもの高周波を出すキリギリスの仲間が棲息していた。その高周波は人間の脳内の生命維持環境にきわめて大きな影響を与えていたのだ。

音環境の面からみると、人間の生命維持装置としては、日本の田舎すなわち農村の環境が都市よりはるかに優れていることが明らかになった。都市より農村の方が優れているのだ。畑作牧畜民が作り出したのは「都市文明」である。だからこれまで都市は、文明のシンボルたりえた。しかし、稲作漁労民が作り出したのは「農村文明」である。そしてこの農村の音環境こそが人類の暮らしに最適であり、生命維持装置としては最も優れたものである事が、現代の情報科学によって解明されつつあるのだ。

地球環境が、畑作牧畜民によって収奪され、21世紀の人類の生存の基盤が脅かされている時、新しい原理を創造することが待望されている。新しい文明の原理を創造し、それに基づいた新しいライフスタイルを構築しない事には、人類は自らの生命を維持することさえできない段階になってきたのである。そのとき、稲作漁労文明の造り出した農村文明が、輝き始めたのではないか。

~さいごに~

昨年は大企業が大きく後退する一年でした。また世界秩序も米中中心からロシア中心に転換し始めています。今年は良くも悪くも、いろんな事がはじまる年だと思っています。旧態依然としたものが払拭され、新しい時代の息吹が登場するでしょう。縄文ブログではその新しい息吹を追いかけると共に、その可能性の根拠として私たちの中に眠っている縄文遺伝子、縄文の記憶を呼び覚ましていければと思っています。

皆さんにとって、よい一年でありますように。

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