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西欧の対外侵略の原型 「北の十字軍」                       ~掠奪殺人正当化の論理がキリスト教によって与えられた~

近代における西欧の膨張と世界の植民地化。その先触れとなったのが、十字軍だ。十字軍は、キリスト教の聖地奪還のというお題目の背後で、殺戮・略奪が横行した。
十字軍はある意味、キリスト教徒による失地回復という論理(大儀名文)があった。東方エルサレムの奪還や西方のスペインの領土回復。
しかし、「北の十字軍」ではさらに都合よく論理を飛躍させて、侵略を開始していった。
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「国民の歴史」 西尾幹二
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第二回十字軍の際に出現した「北の十字軍」と、そのイデオローグ聖ベルナールを境に、十字軍の論理はにわかに一変する。そしてそれこそがヨーロッパの拡大を南北アメリカ大陸に至るまで、ついには東南アジアに至るまで波及せしめたキリスト教徒による異教徒征服の倫理的、かつ法的な根拠をなすものであると山内氏は論述している。聖ベルナールは、戦いを防衛的なものから、伝道の思想と結合した攻撃的なものへと始めて変えていく。聖ベルナールの言葉を再引用してみよう。
キリストのために殺すか死ぬかすることはことは罪ではなく、最も名誉あることだからである。殺すのはキリストのためであり、死ぬのはキリストをうることである。キリストは当然のこととしてかつ喜んで、敵を罰するために彼らの死を受け入れた。彼はさらに快く死した騎士の慰めに専心する。私はいいたい。キリストの騎士は恐れることなしに殺し、さらに安んじて死ぬ、と。キリストのために殺し、キリストのために死ぬのであれば、ますます良い。キリストの騎士は理由もなく刀を帯びているのではない。」(山内進 「北の十字軍」)
このようにしてベルナールは北の異教徒たちに、改宗するか、それとも絶滅されるか、二つに一つの選択をつきつけた。現在ポーランドからバルト三国に及ぶ一帯の地域にいた異教徒たちは、キリスト教徒が討伐の対象とする正当な根拠を持っていた相手では決してない。
『リヴォニア年代記』という本がある。1208年、北の十字軍によってエストニアが呑み込まれようとしたときの出来事が綴られている。
「彼らはこの地方のあらゆる村や場所で、家の中に潜む男たち、女たち、子供たちを発見し、朝から夜になるまで発見された人々を殺し続けた。殺された無名の男たちの数は計り知れない。あまりにも多くの人々を殺し続けたために、彼らの手と腕が疲れて動かなくなるまで、殺戮は続いた。全村落が異教徒たちの血にそまった翌日、彼らは帰還した。ありとあらゆる村から戦利品をかき集め、彼らは多くの荷駄獣や家畜、できるだけ多くの少女たちを連れ去った。」
われわれは西洋キリスト教文明の根底に、まぎれもなく他者を神の名において裁き、一方的に死罪に処する論理、正当化された暴力の論理が横たわっていることを認識しておかなくてはならない。
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(引用以上)
十字軍というのは、全くあやしげでおかしな運動だ。宗教的な大儀名文をかかげながら、やっていることは、殺戮と掠奪。本心は物欲と金儲けであることが透けて見える。
この「北の十字軍」でも、結局殺戮して、物を奪うことが目的になっていて、正気の沙汰とは思えない様相を呈している。
それにしても、聖ベルナールのような殺戮を正当化する聖職者が、受け入れられ幅を利かしていくヨーロッパという人間世界は、なんなんだろうか?聖ベルナールは、12世紀の巨大な思想家とされており、禁欲の塊りのようなシトー会修道院の聖人だった。
★彼らの精神構造は?
・本心(下半身)の最大欠乏は=物欲・金儲け。
・そこにつけ込まれる形で、聖職者(ex聖ベルナール)からキリスト教という正当化の観念を与えられて、集団で殺戮と掠奪に走った。
この「北の十字軍」で正当化の根拠を与えられた彼らは、後の大航海時代に、宣教師を先兵に南北アメリカを征服(住民の殆どを殺戮し)し、世界を植民地化していく。
そして“大航海時代”という言葉を捏造し、彼らの殺戮と収奪をおおい隠し、彼らがなにか壮大なことをやり遂げたような錯覚を与えすりかえる。これが教育を通じて、人々に刷り込まれている。
そしてそのような正当化の論理は、原爆使用やイラク攻撃etc現在の国際社会にも巧妙に用いられていることを見逃してはならない。
(by Hiroshi)

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